著者
福山 勝彦 小山内 正博 関口 由佳 上野 詠子 根岸 康至 矢作 毅 二瓶 隆一
出版者
公益社団法人日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.32, no.2, 2005-04-20
被引用文献数
1

【目的】腰痛を主訴に整形外科外来を受診する患者に、浮き趾を呈している症例が多くみられる。浮き趾は立位時に足趾が地面に接していない状態、つまり歩行時に足尖まで体重移動が行なわれず、地面に対する踏み返しが適正に行なわれない状態である。このような場合、後方荷重となり骨盤、腰椎の正常なアライメントが崩れることで傍脊柱筋の緊張が高まり、腰痛の原因になるものと推察する。我々は浮き趾治療の一つとして、浮き趾治療用の草履を着用させている。本研究は、この草履が歩行時、筋活動にどのように影響しているか検討することを目的とした。<BR>【対象】浮き趾を呈する成人女性20名(20~25歳、平均21.3歳)を対象とした。浮き趾に関しては、改良型PedoscopeならびにFoot printにて検出した。<BR>【方法】裸足歩行、我々の作製した草履を1趾と2趾の根元まで鼻緒を挿入して着用した歩行、1趾と2趾の間で浅く挟みつまむようにして着用した歩行、また市販のサンダルを着用した歩行をメトロノームを用い、同じ速度で歩行させた。測定前に草履に慣れさせるよう、十分練習を行なった。脊柱起立筋、大殿筋、腹直筋、大腿直筋、下腿三頭筋、足趾屈筋を導出筋として、電極を運動点中心に30mm幅で貼付し、足底にフットスイッチを装着した。各筋活動を表面筋電計(Mega Electronics社製 ME―3000)にて導出、AD変換しパーソナルコンピューターに保存、波形解析ソフト(Mega-win)にて解析した。1歩行周期における各筋の積分値を正常歩行100%として正規化し、各歩行における筋活動量について比較検討した。<BR>【結果】サンダル歩行に比べ草履を浅く着用した歩行では、脊柱起立筋で有意に筋活動量が低下し、大腿直筋、下腿三頭筋、足趾屈筋では有意に増加した(p<0.01)。大殿筋では、減少傾向がみられた(p<0.05)。草履を深く着用した歩行に比べ浅く着用した歩行でも、脊柱起立筋で有意に筋活動量が低下し、大腿直筋、下腿三頭筋、足趾屈筋では有意に増加した(p<0.01)。大殿筋では、減少傾向がみられた(p<0.05)。<BR>【考察】我々が作製した草履は、底の部分に「アメ底」と呼ばれる塩化ビニール製の硬めな材料を使用することで、柔らかい素材を使ったビーチサンダルのように勝手に折れ曲がり、不適切なToe breakがおこるのを防止している。また、適度にヒールアップさせることで趾尖に体重が乗りやすくしている。履き方として、足趾の根元まで挿入せず浅めに履いて、1趾と2趾で鼻緒を挟み、つまむようにして歩くようにしている。これにより、Toe break時に足趾で床を踏み込むようになり、下腿三頭筋や足趾屈筋の筋活動量が増加したものと考える。また、後方にあった重心が前方に移動したことで、骨盤、腰椎のアライメントが矯正され、歩行時、傍脊柱筋の緊張が軽減され、筋活動量も減少したものと考える。以上の点から、草履を使用した浮き趾の改善は、腰痛治療にも効果的なことが示唆された。
著者
福山 勝彦 小山内 正博 関口 由佳 二瓶 隆一 矢作 毅
出版者
日本理学療法士協会(現 一般社団法人日本理学療法学会連合)
雑誌
理学療法学Supplement Vol.31 Suppl. No.2 (第39回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.C0282, 2004 (Released:2004-04-23)

【はじめに】骨折や変形性関節症術後などの骨関節疾患において、部分荷重が増加すると両松葉杖から片松葉杖に移行させる。通常、片松葉杖は健側上肢に持たせるが、時として健側上肢機能が低下していることで患側上肢に松葉杖を持たせることを余儀なくされる場合がある。今回の研究は、健側に片松葉杖を持ったときと、患側に片松葉杖を持ったときの歩行時筋活動量を比較しその特徴を調べ、早期にどの筋を優先的にトレーニングしなければならないかを検討することを目的とした。【対象・方法】健常成人女性15名(20~27歳、平均21.5歳)を対象とした。右側を患側と設定し、全荷重歩行(自由歩行)、左手に松葉杖を持った片松葉杖歩行(Lt松葉杖)、右手に松葉杖を持った片松葉杖歩行(Rt松葉杖)をメトロノームを用い、同じ歩行スピードで歩行させた。片松葉杖歩行の前に部分荷重2/3の練習を行わせ、十分歩行練習をさせた後に測定を行った。 筋電計(Mega electronics社製ME-3000P)を用い、右側大殿筋(G-max)、中殿筋(G-med)、大腿四頭筋(Quad)、外側ハムストリングス(L-ham)、内側ハムストリングス(M-ham)、下腿三頭筋(Gastro)、前脛骨筋(TA)、股関節内転筋群(Add)を導出筋とし、電極を運動点中心に20mm幅で貼付した。立脚相における各筋活動量の積分値を求め、全荷重歩行を100%として正規化し、Lt松葉杖、Rt松葉杖における筋活動量について比較検討した。【結果】全荷重歩行とLt松葉杖歩行の比較において、Quad、L-ham、M-ham以外の筋で有意に筋活動量の低下がみられた。(p<0.01) Lt松葉杖歩行とRt松葉杖歩行の比較においては、G-max、G-med、Gastroの筋活動量が有意に増加し、全荷重歩行時以上の筋活動がみられた。(p<0.01) その他の筋において有意差はみられなかった。【考察】Pauwelsの式を応用すれば、患側に松葉杖を持ったときの中殿筋は、健側に持ったときよりも3倍以上の筋力が必要であると考えられる。しかし実際には、骨盤を患側に傾斜し体幹を側屈した、いわゆるDuchenne-Trendelenburg徴候様の歩行となり、重心の患側移動が起こることでいくらかは軽減される。今回の実験では、約1.5倍程度の増加であった。股関節伸展モーメントは、床反力による上体の崩れ防止と支持機能のために作用する。患側に松葉杖を持つことは、支持基底面を減少させ、バランスが崩れやすい状態となっている。これをコントロールするために、大殿筋の筋活動が増加したものと推察する。 これらのことから患側に松葉杖を持った場合、立脚相後期において、より強い推進力と足関節制御機構が必要となり、下腿三頭筋の筋活動が増加したものと思われる。 以上の結果から、患側上肢に片松葉杖を持つことを余儀なくされる場合には、早期より中殿筋、大殿筋、下腿三頭筋を中心とした筋力トレーニングを行う必要性が示唆された。
著者
小山内 正博 舘川 康任 田村 麻美子 清水 弥生 新井 美紗 渡辺 裕介 福山 勝彦 秋山 純和
出版者
理学療法科学学会
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.25, no.1, pp.91-94, 2010 (Released:2010-03-26)
参考文献数
19
被引用文献数
1

〔目的〕姿勢変化に伴う側腹筋の活動を超音波画像診断装置と表面筋電図法で検証することである。〔対象〕健常成人9名であった。〔方法〕背臥位で安静呼吸と最大呼出の筋厚と筋活動を測定後,体幹を前傾位,中間位,後傾位で,各円背位と伸張位の6種類の坐位姿勢をとらせて再度測定した。〔結果〕最大呼出時に筋電図は,内腹斜筋だけが中間位伸張に対し前傾位円背,中間位円背,後傾位円背で有意差を認めた。安静吸気時は,筋厚で内腹斜筋に中間位伸張に対し前傾位円背,前傾位伸張,後傾位円背で有意差を認めた。〔結語〕中間位伸張は内腹斜筋の姿勢保持筋としての活動に関与しない姿勢と考えられる。最大呼出時の筋電図から内腹斜筋は呼気筋としての機能を発揮しやすい姿勢と考えられる。
著者
福山 勝彦 小山内 正博 関口 由佳 二瓶 隆一 矢作 毅
出版者
JAPANESE PHYSICAL THERAPY ASSOCIATION
雑誌
日本理学療法学術大会
巻号頁・発行日
vol.2003, pp.C0282-C0282, 2004

【はじめに】骨折や変形性関節症術後などの骨関節疾患において、部分荷重が増加すると両松葉杖から片松葉杖に移行させる。通常、片松葉杖は健側上肢に持たせるが、時として健側上肢機能が低下していることで患側上肢に松葉杖を持たせることを余儀なくされる場合がある。今回の研究は、健側に片松葉杖を持ったときと、患側に片松葉杖を持ったときの歩行時筋活動量を比較しその特徴を調べ、早期にどの筋を優先的にトレーニングしなければならないかを検討することを目的とした。<BR>【対象・方法】健常成人女性15名(20~27歳、平均21.5歳)を対象とした。右側を患側と設定し、全荷重歩行(自由歩行)、左手に松葉杖を持った片松葉杖歩行(Lt松葉杖)、右手に松葉杖を持った片松葉杖歩行(Rt松葉杖)をメトロノームを用い、同じ歩行スピードで歩行させた。片松葉杖歩行の前に部分荷重2/3の練習を行わせ、十分歩行練習をさせた後に測定を行った。 筋電計(Mega electronics社製ME-3000P)を用い、右側大殿筋(G-max)、中殿筋(G-med)、大腿四頭筋(Quad)、外側ハムストリングス(L-ham)、内側ハムストリングス(M-ham)、下腿三頭筋(Gastro)、前脛骨筋(TA)、股関節内転筋群(Add)を導出筋とし、電極を運動点中心に20mm幅で貼付した。立脚相における各筋活動量の積分値を求め、全荷重歩行を100%として正規化し、Lt松葉杖、Rt松葉杖における筋活動量について比較検討した。<BR>【結果】全荷重歩行とLt松葉杖歩行の比較において、Quad、L-ham、M-ham以外の筋で有意に筋活動量の低下がみられた。(p<0.01) Lt松葉杖歩行とRt松葉杖歩行の比較においては、G-max、G-med、Gastroの筋活動量が有意に増加し、全荷重歩行時以上の筋活動がみられた。(p<0.01) その他の筋において有意差はみられなかった。<BR>【考察】Pauwelsの式を応用すれば、患側に松葉杖を持ったときの中殿筋は、健側に持ったときよりも3倍以上の筋力が必要であると考えられる。しかし実際には、骨盤を患側に傾斜し体幹を側屈した、いわゆるDuchenne-Trendelenburg徴候様の歩行となり、重心の患側移動が起こることでいくらかは軽減される。今回の実験では、約1.5倍程度の増加であった。<BR>股関節伸展モーメントは、床反力による上体の崩れ防止と支持機能のために作用する。患側に松葉杖を持つことは、支持基底面を減少させ、バランスが崩れやすい状態となっている。これをコントロールするために、大殿筋の筋活動が増加したものと推察する。<BR> これらのことから患側に松葉杖を持った場合、立脚相後期において、より強い推進力と足関節制御機構が必要となり、下腿三頭筋の筋活動が増加したものと思われる。<BR> 以上の結果から、患側上肢に片松葉杖を持つことを余儀なくされる場合には、早期より中殿筋、大殿筋、下腿三頭筋を中心とした筋力トレーニングを行う必要性が示唆された。