著者
矢部 隆
出版者
愛知学泉大学
雑誌
コミュニティ政策研究 (ISSN:13447947)
巻号頁・発行日
vol.9, pp.21-39, 2007-03

都市部にある愛知県名古屋市川原神社の境内の池でカメの捕獲調査をし、カメの種類相や生息状況を調べた。1985年には池の岸から2mの柄のたも網によりカメを捕獲し、2003年には排水された池の底に残されたほぼ全数のカメを集めた。1985年に捕獲された110個体のカメの内訳はニホンイシガメ76個体(69.1%)、クサガメ12個体(10.9%)、ミシシッピアカミミガメ21個体(19.1%)、ニホンイシガメとクサガメの交雑個体1個体(0.9%)であった。一方2003年に集められた574個体のカメには202個体(35.2%)のニホンイシガメ、109個体(19.0%)のクサガメ、254個体(44.3%)のミシシッピアカミミガメ、4個体(0.7%)のニホンイシガメとクサガメの交雑、そして2個体(0.3%)のスッポンが含まれていたほか、変わったカメとしてハナガメ2個体、セマルハコガメ1個体が見つかった。外来のカメであるミシシッピアカミミガメの増加は著しく、食物や日光浴、越冬、産卵などの場所などの生活にかかわる資源を巡る競合を通じて、在来のカメの生存を脅かすことが懸念される。ニホンイシガメは減少が著しく、しかもオスの個体数が著しく少なく、個体群が崩壊の危機にあるかも知れない。クサガメとスッポンはそれぞれペット、食用に利用される種で、本調査地の個体群にも在来の個体のほか、流通の結果放逐された外来の個体がいる可能性があり、在来の個体と交雑して個体群の遺伝子を汚染する危険がある。2003年の調査には次のような点で社会的意義が認められる。つまり地域コミュニティの地元市民がカメの収集作業に多数参加した。そして古くからの神聖な場所として在来の生物の生息場所として重要である一方、外来生物の放逐場所にもなりやすい神社という環境において、在来のカメの保護をどうするのか、外来のカメの扱いをどうするのかを研究者である著者とともに議論し、考察した。
著者
矢部 隆 林 文男
出版者
The Acarological Society of Japan
雑誌
日本ダニ学会誌 (ISSN:09181067)
巻号頁・発行日
vol.7, no.1, pp.47-50, 1998-05-25 (Released:2011-02-23)
参考文献数
5
被引用文献数
2 3

A total of 655 larvae, 329 nymphs and 26 adults(5 males and 21 females)of the ticks, Amblyomma geoemydae, were collected from the Japanese pond turtles, Mauremys japonica, captured in the small impoundment of the Ayu River, Doda, the Atsumi Peninsula, Aichi Prefecture, central Japan. This is the first distributional record of A. geoemydae from Japan excluding the Nansei Islands. In this study site, all stages of ticks were generally found on the hosts during the period from late April to early November. In winter, however, the hosts could not be examined because they overwinter under water of the impoundment.
著者
矢部 隆
出版者
日本爬虫両棲類学会
雑誌
爬虫両棲類学雑誌 (ISSN:02853191)
巻号頁・発行日
vol.14, no.4, pp.191-197, 1992-12-31 (Released:2009-03-27)
参考文献数
16
被引用文献数
10

1985年から1990年にかけて,三重県桑名郡多度町の一画において,ニホンイシガメMauremys japonicaの行動を調べた.捕獲率は,夏には雌の方が高いが,秋から翌年の春にかけては雄の方が高く,水中において歩行行動が観察される割合も秋から翌年の春にかけては雄の方が高かった.また低水温下における活動性も雄の方が高かった.調査地のイシガメは,秋から春までを谷川,あるいは池で過ごしていた.谷川の平均利用長は,標識再捕調査で2回以上捕獲できた成熟個体については雄71m,雌47mであり,電波発信器装着個体では雄99m,雌40mであった.求愛・交尾行動が1月と2月を除いた秋から翌年の春に高い頻度で観察されたので,雄の方が秋から翌年の春にかけて活動的な理由は,交尾相手を探策することであると考えられる.
著者
矢部 隆 Takashi YABE
雑誌
コミュニティ政策研究 = Studies in community policy
巻号頁・発行日
vol.9, pp.21-39, 2007-03

都市部にある愛知県名古屋市川原神社の境内の池でカメの捕獲調査をし、カメの種類相や生息状況を調べた。1985年には池の岸から2mの柄のたも網によりカメを捕獲し、2003年には排水された池の底に残されたほぼ全数のカメを集めた。1985年に捕獲された110個体のカメの内訳はニホンイシガメ76個体(69.1%)、クサガメ12個体(10.9%)、ミシシッピアカミミガメ21個体(19.1%)、ニホンイシガメとクサガメの交雑個体1個体(0.9%)であった。一方2003年に集められた574個体のカメには202個体(35.2%)のニホンイシガメ、109個体(19.0%)のクサガメ、254個体(44.3%)のミシシッピアカミミガメ、4個体(0.7%)のニホンイシガメとクサガメの交雑、そして2個体(0.3%)のスッポンが含まれていたほか、変わったカメとしてハナガメ2個体、セマルハコガメ1個体が見つかった。外来のカメであるミシシッピアカミミガメの増加は著しく、食物や日光浴、越冬、産卵などの場所などの生活にかかわる資源を巡る競合を通じて、在来のカメの生存を脅かすことが懸念される。ニホンイシガメは減少が著しく、しかもオスの個体数が著しく少なく、個体群が崩壊の危機にあるかも知れない。クサガメとスッポンはそれぞれペット、食用に利用される種で、本調査地の個体群にも在来の個体のほか、流通の結果放逐された外来の個体がいる可能性があり、在来の個体と交雑して個体群の遺伝子を汚染する危険がある。2003年の調査には次のような点で社会的意義が認められる。つまり地域コミュニティの地元市民がカメの収集作業に多数参加した。そして古くからの神聖な場所として在来の生物の生息場所として重要である一方、外来生物の放逐場所にもなりやすい神社という環境において、在来のカメの保護をどうするのか、外来のカメの扱いをどうするのかを研究者である著者とともに議論し、考察した。