- 著者
-
石井 三記
- 出版者
- 名古屋大学
- 雑誌
- 基盤研究(C)
- 巻号頁・発行日
- 2005
従来の法制史研究ではエピソード的にしか言及されてこなかった1792年から1793年にかけての、フランス革命期の議会(国民公会)でのルイ16世の国王裁判について、その法的側面に注目し、そもそも国王を裁判にかけることが可能かどうかの問題、被告人とされた国王の弁護人の言説の分析、国王裁判のクライマックスといえる1月15日から20日未明までの、4回の指名点呼による投票、すなわち、「罪責」「人民への上訴」「刑の内容」そして量刑が死刑となったことから「刑の延期」の4つの争点をめぐる定足数749名の国民公会議員全員の投票行動を一覧表にして、連続した4回の表決の推移がもつ意味を、県別の特徴があるのかないのか、年齢の世代ごとの違いがあるのか否か、さらに法律家の議員(たとえば、革命前のパルルマン法院裁判官や弁護士、革命期の治安判事など)はどのような法的論理を用いて自分の主張の論拠としているのかを議会議事録の『アルシーヴ・パルルマンテール(Archives parlementaires)』を用いて分析した。このような研究は、すくなくともわが国において初めての画期的なものであり、一覧表にしてみて判明する点が、たとえば刑法典に論及したうえでの死刑の求刑になっているなど、ルイ16世の国王裁判が単純な「政治裁判」であるといってすませることができないものであることを明らかにしえた。こうして、国王裁判は短期的には革命裁判所につながるものではあるが、長期的には政治裁判制度を考える原点になっているといえる。