著者
橋本 泰一 村上 浩司 乾 孝司 内海 和夫 石川 正道
出版者
社会技術研究会
雑誌
社会技術研究論文集 (ISSN:13490184)
巻号頁・発行日
vol.5, pp.216-226, 2008 (Released:2009-07-15)
参考文献数
18
被引用文献数
2 3

自然言語処理技術を応用し,分析対象となる新聞記事を取得して,記事を自動的に分類し,トピックとなる社会事象を抽出,さらにはトピックを構造化して課題の発見に至る手続きを可能とする手法を開発した.この手法によれば,多数のトピックを含む文書集合に対して階層的クラスタリングを施し,クラスタ間の語彙使用の類似性に基づく構造化を行い,個々のクラスタについてこれを要約するキーワードおよび関係する主体(組織名)を自動抽出することによって内容を効率的かつ経済的に俯瞰できることを示した.本論文では,産業活動に伴う事故・災害に関する社会の課題発見を事例として,これらのテキストマイニング技術を統合した社会変化の定量的分析手法の有効性について検証した.
著者
浜口 寛 石川 正道 小西 恭子 永井 敏和 大鹿 裕幸 川上 和人
出版者
日本鳥学会
雑誌
日本鳥学会誌 (ISSN:0913400X)
巻号頁・発行日
vol.63, no.1, pp.33-41, 2014 (Released:2014-05-09)
参考文献数
25
被引用文献数
2 2

本研究では,絶滅危惧種ミゾゴイの生息に適する環境条件を明らかにすることを目的として,愛知県西三河地域におけるミゾゴイの生息環境モデルを作成した.我々は,調査地の範囲から3次メッシュ100個を選定し,鳴き声調査から得られた在・不在データを目的変数,生息に影響を及ぼすと考えられる環境条件を説明変数とする一般化線形モデルを用いて行い,各モデルのAICの比較によりモデル選択を行った.最良モデルに用いられた環境条件から,ミゾゴイの生息には降水量が多く,谷津田跡長が長く,植林面積が少ない環境が適すると考えられた.また,モデル予測値(生息確率)が大きい階級区分に該当するメッシュほど,鳴き声調査で実際に観察された生息率(該当メッシュ数に対する在メッシュ数の割合)も高くなっており,モデルの妥当性が高いと考えられた.ミゾゴイの主要食物である土壌動物は,湿潤環境において豊富であることや,営巣木として広葉樹を好むことが,このような環境が選択された要因と考えられる.本モデルを応用することで,ミゾゴイの潜在的な生息地を明らかにすることができると考えられる.
著者
石川 正道
出版者
日本結晶成長学会
雑誌
日本結晶成長学会誌 (ISSN:03856275)
巻号頁・発行日
vol.39, no.2, pp.83-87, 2012 (Released:2017-05-31)
参考文献数
9

コロイド結晶の研究は,コロイド科学でよく知られているDLVO理論の発展と深く関わっている.コロイド粒子は,水中にて負に帯電しており荷電コロイドともよばれるが,DLVO理論によれば荷電コロイド間には斥力が働く必要がある.近年,コロイド粒子間に引力が作用すると考えざるを得ない実験結果が見出されるようになり,論文誌上にて相転移のメカニズムに関する議論が様々な観点から行われている.最近では著者らを中心に,日本の宇宙実験施設「きぼう」を用いた実証実験が進められている.
著者
三浦 裕一 石川 正道 竹之内 武義 小林 礼人 大西 充 吉原 正一 桜井 誠人 本多 克也 松本 昌昭 河合 潤
出版者
宇宙航空研究開発機構
雑誌
宇宙航空研究開発機構研究開発報告 (ISSN:13491113)
巻号頁・発行日
vol.4, pp.1-100, 2005-03

1990 年代に行われた宇宙実験によって,ピストン効果は,臨界点近傍において普遍的に成立する臨界減速(critical slowing down)に桁違いの速さで熱を伝える効果をもち,結果的に熱輸送は臨界加速(critical speedingup)するメカニズムとして作用することが明確となった.その速さは音速によって規定され,対流,拡散,輻射とは異なる,第4 の熱輸送メカニズムとして認知されるに至った.宇宙実験と平行して発展したピストン効果の理論的検討は,ピストン波が加熱ヒーターの境界層で断熱膨張によって励起され,バルク流体中を高速に伝播することを明らかにした.このような研究の進展において,次の点がいまだ不十分であることが明らかとなった.(1)これまで行われたピストン波の観測は,高々ビデオ収録の時間分解能(1/30 秒)の範囲であり,音速(〜 100 m/s)から見積もられる進行速度と比較すると,実際に観測された現象は試料セル内を数100 往復した後の現象しか捉えていない.すなわち,ピストン波の素過程を直接見たとは言えず,平均化された間接的な効果しか見ていない.(2)実験的に実現された臨界温度への接近は,高々T - T_C 〜 30 mK であり十分臨界点に近いとは言えない.(3)小貫による精密な動的臨界現象理論によると,ピストン波に強い影響をもつ体積粘性係数(bulk viscosity)は,臨界温度T_C に十分近づいた場合に強く発散する.しかしながら,これまでのピストン効果の実験研究では,このような効果に関する観測事実は全く報告されていない.すなわち,理論と実験的事実とが食い違っている,あるいは実験が理論に追いついていない.そこで,我々の研究の目的は,上記の研究の不足を克服することを目的として,(1)音速で伝播するピストン波の素過程を直接観測する.(2)臨界温度への接近は,T - T_C 〜 1 mK を実現する.(3)ピストン波の直接観測により,ピストン波の熱輸送量をT - T_Cを関数として定量的に計測する.これによって,動的臨界現象理論が成り立つかどうかを検証する.このような高精度の実験を前提とした研究目的を実現するためには,微小重力環境を利用することは不可欠である.特に,理論と実験との食い違いを克服し,新規な動的臨界現象理論を実証するためには,重力効果による未知の効果を取り除き,不必要な可能性を排除することは極めて重要である.本研究では臨界流体を用いた欧州のフライト実験で観測されているピストン効果について,その素過程からの解明を目指した地上実験を実施してきた.我々が技術開発を進めた結果,多段の熱シールドからなる温度制御・測定系を構築し,常温において± 1 mK の精度で温度制御することが可能となり,マイクロ秒レベルのパルス加熱によって,臨界点近傍で相関距離に近い厚みの熱拡散層を励起できるようになった.さらに,マイケルソン干渉計とフォトマルを組み合わせた光学測定系を構築し,相対密度感度7 桁の精密測定によりマイクロ秒のオーダーでの高速現象の観測を可能にした.このような技術開発は,従来の実験技術を格段に上回るものであり,従来全く得ることができなかったピストン波の特性を定量的に測定することを可能とし,ピストン波の発信に伴うエネルギー輸送の効率計測,流体全体が音速で瞬時に均一に温度上昇する断熱昇温現象の観測,また,理論的にのみしか予想されていなかった臨界点に極めて近い領域における動的な輸送係数の発散を初めて観測するなど,極めて多くの知見を得ることに成功した.また,臨界点近傍のピストン効果ダイナミクスは重力に強く影響することも明らかにし,微小重力実験の有望性を実証した.このような技術開発の蓄積を踏まえ,ロケット実験を想定した実験装置の小型化およびリソースの軽減,臨界流体を扱う場合避けることのできない臨界タンパク光散乱によるSN 比の低下を回避するための宇宙用赤外干渉計の新規開発,試料充填時における臨界密度の設定誤差低減に関する試料取り扱い技術の向上,実験計画の作成など,宇宙実験実施に関わる中核技術の開発と運用構想を作成し,その有望性を評価した.
著者
乾 孝司 村上 浩司 橋本 泰一 内海 和夫 石川 正道
出版者
一般社団法人 人工知能学会
雑誌
人工知能学会論文誌 (ISSN:13460714)
巻号頁・発行日
vol.24, no.6, pp.469-479, 2009 (Released:2009-08-07)
参考文献数
28
被引用文献数
1

This paper presents a method for boosting the performance of the organization name recognition, which is a part of named entity recognition (NER). Although gazetteers (lists of the NEs) have been known as one of the effective features for supervised machine learning approaches on the NER task, the previous methods which have applied the gazetteers to the NER were very simple. The gazetteers have been used just for searching the exact matches between input text and NEs included in them. The proposed method generates regular expression rules from gazetteers, and, with these rules, it can realize a high-coverage searches based on looser matches between input text and NEs. To generate these rules, we focus on the two well-known characteristics of NE expressions; 1) most of NE expressions can be divided into two parts, class-reference part and instance-reference part, 2) for most of NE expressions the class-reference parts are located at the suffix position of them. A pattern mining algorithm runs on the set of NEs in the gazetteers, and some frequent word sequences from which NEs are constructed are found. Then, we employ only word sequences which have the class-reference part at the suffix position as suffix rules. Experimental results showed that our proposed method improved the performance of the organization name recognition, and achieved the 84.58 F-value for evaluation data.