著者
中田 英之 八重樫 稔 秋葉 哲生 西村 甲 石毛 敦 渡邉 賢治
出版者
一般社団法人 日本東洋医学会
雑誌
日本東洋医学雑誌 (ISSN:02874857)
巻号頁・発行日
vol.58, no.1, pp.49-55, 2007-01-20 (Released:2008-09-12)
参考文献数
5

競技スポーツは健康を目的とした運動に比べ, 身体に強い負荷を与える。特に女子選手においては, 身体の消耗が激しいため月経不順, 慢性疲労を始めとした体調不良に陥りやすい。そのため, 選手は練習プログラムの未消化, 成績の悪化, 競技の継続困難をきたすこともある。我々は, スポーツトレーニング負荷で生じる身体症状と血液検査所見および漢方医学的所見の関係, さらに身体症状に対する漢方薬投与の有効性について検討した。対象は陸上自衛隊東北方面隊女子駅伝チーム9名 (19歳から27歳, 中央値19歳) である。トレーニング負荷前後でHb, BUN, AST, ALT, CPKの測定, 漢方医学的診察, 身体症状の聴取を行った。身体症状出現予防に桂枝茯苓丸, 六君子湯, 四物湯をトレーニング期間中に投与し, 症状の変化について調査した。トレーニング負荷によりCPKが500IU/l以上になる症例では, 全身倦怠感, 膝痛, 腰痛などの身体症状が出現し, 漢方医学的所見として小腹にお血の圧痛が認められた。漢方薬投与により, トレーニングに伴う各種自覚症状は完全に消失し, 計画的にトレーニングを行うことができた。選手の記録は全例で向上した。以上の成績は, スポーツ選手の管理に漢方薬を利用することが有用であることを強く示唆する。
著者
伊藤 隆 渡辺 賢治 池内 隆夫 石毛 敦 小曽戸 洋 崎山 武志 田原 英一 三浦 於菟 関矢 信康 及川 哲郎 木村 容子
出版者
一般社団法人 日本東洋医学会
雑誌
日本東洋医学雑誌 (ISSN:02874857)
巻号頁・発行日
vol.60, no.2, pp.195-201, 2009 (Released:2009-08-05)
参考文献数
1

東洋医学論文には東洋医学を西洋医学のルールで論じることに起因した特異性がある。西洋医学に比較すると,人文科学的要素の多い東洋医学では記述が主観的になる傾向がある。目的,方法,結果,考察は,論文内容を客観化させ,査読者と読者の理解を容易ならしめるために必要な形式と考えられる。より客観的な記述のためには,指定された用語を用いることが理想であるが,現実的には多義性のある用語もあり,論文中での定義を明確にする必要がある。伝統医学では症状と所見と診断の区別が不明瞭な傾向があるが,科学論文では明確に区別して記述しなくてはいけない。新知見を主張するためには,問題の解決がどこまでなされているかをできるだけ明らかにする必要がある。投稿規定の改訂点である,漢方製剤名の記述方法,要旨の文字数,メール投稿について解説した。編集作業の手順について紹介し,再査読と却下の内容に関する最近の議論を述べた。