- 著者
-
三浦 於菟
- 出版者
- 一般社団法人 日本東洋医学会
- 雑誌
- 日本東洋医学雑誌 (ISSN:02874857)
- 巻号頁・発行日
- vol.61, no.6, pp.821-827, 2010 (Released:2010-12-24)
- 参考文献数
- 22
東洋医学の独特な理論である気の概念を,主に近世中国の医書より再検討した。気とは,万物を成立させ,生命現象をおこさせるものである。東洋医学の特色である全体観・統一観は,この気の概念によってその根拠が与えられた。生体の機能を気,肉体を形成するものを血と呼ぶ。血とは滋養分であり,気より形成されたものとされ,いわば異名同類のものである。気と血の概念により,体全体を考慮した疾病把握,各臓器相互の関連性の重視,機能と物質(肉体)は分離できないという認識を生み出させた。気は消化管と肺(後天の気),生まれ持った気(先天の気)から形成される。「こころ」は気によって出現し,気の概念によって「こころ」と身体の関連性,一体化が理論化された。気の病態は,(1)気の能力の低下(気虚と陽虚)と(2)気の循環失調(気滞・気逆)の二つに分類される。これらを合わせた病態に中気下陥がある。気とは,現実的かつ有用性がある東洋医学独自の生理病態観といえる。