著者
安藤 雄一 石田 智洋 深井 穫博 大山 篤
出版者
有限責任中間法人日本口腔衛生学会
雑誌
口腔衛生学会雑誌 (ISSN:00232831)
巻号頁・発行日
vol.62, no.1, pp.41-52, 2012-01-30
被引用文献数
3

歯科医院への定期受診の全国的実態は必ずしも明らかとはいえないため,われわれは20〜60歳代の男女から成る調査会社のモニタ計3万人に対してWeb調査を行い全国の概況把握を試みた.質問項目は定期歯科受診の有無と最後の歯科受診時期とその診療内容で,対象者の属性として性・年齢・居住地区・職業の情報を用いた.定期受診者の割合は35.7%(男性31.5%,女性39.9%)であった.過去1年間における歯科受診ありの割合は50.3%(男性45.9%,女性54.7%)であった.定期受診の有無についてクロス集計とロジスティック回帰分析を男女別に行ったところ,年齢階級,職業,居住地区,診療内容が有意性を示した.定期受診者の割合は高齢層が高く(男女共通),東北地方(男女共通)と北海道・四国・九州地方(女性のみ)で低かった.最後に受けた診療内容が「歯周疾患」・「歯ならびやかみ合わせ」・「その他」だった人は定期受診者の割合が高く,「むし歯」,「抜けた歯の治療」だった人では低かった(男女共通).職業では,男性において自営業,パート・アルバイト,学生などが低率を示した.さらに性・年齢階級で層別したロジスティック回帰分析を行ったところ,若い年齢層ほど,また女性より男性において職業による差が顕著であった.本調査結果は全国を代表するものとは言えないものの,歯科定期受診の全国的な実態を示す記述疫学情報として有用と考えた.