著者
石田 章純
出版者
東北大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2009

初期原生代(19億年前)のガンフリント層およびローブ層における地質調査を行い、採取試料の岩石学、鉱物学、地球化学的分析を行った。特に有機物の窒素安定同位体比の測定においては段階燃焼法の導入によってコンタミネーションの可能性を除去した信頼できる値を提示し、かつ有機物中に、含有される窒素の同位体比の異なる炭素構造をもつ有機物の不均質が存在することを示すことができた。その結果、初期原生代の海洋環境と微生物活動について、一般に信じられている"浅部が酸化的で深部が強還元的(硫化水素に富む=euxinic)な海洋"における"化学合成細菌(例えば鉄酸化菌)主体"の環境モデルではなく、"浅部が酸化的で深部が非酸化的だがeuxinicではない海洋"における、"シアノバクテリアが生態系の第一次生産者である"モデルを提唱した。この成果はGeochimica et Cosmochimica Actaに投稿準備中である。段階燃焼法を用いた有機物窒素同位体比の測定法の確立、および初期原生代有機物窒素同位体比の不均質性の発見は革新的な成果であり、その成果は別途Geochemical journal投稿され、受理された(Ishida et al.,2012,in press)。目標の1つであった電子顕微鏡による微小領域観察については有機物の透過型電子顕微鏡(TEM)観察の初等技術を習得し、初期原生代の有機物中に結晶度の異なるグラファイトが存在する可能性を見出すことができた。さらに、より古い時代の岩石については、30億年前、27億年前、22億年前の堆積層が産出するカナダ・スペリオル湖周辺地域、25億年前、23億年前の堆積層が産出する南アフリカ・タイムボールヒル地域、クルマン地域での地質調査および岩石試料の採取を完了している。これらの地域について岩相記載や薄片観察など基礎的な分析を進めた。