- 著者
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砂田 洋志
- 出版者
- 慶應義塾大学
- 雑誌
- 三田商学研究 (ISSN:0544571X)
- 巻号頁・発行日
- vol.42, no.5, pp.167-191, 1999-12-25
本稿では1日を4つの時間帯に分けて日本の米国産大豆先物市場における価格変化額と出来高の平均と分散を時間帯毎に計算して,1日のパターンについて1996年から1998年データを用いて分析した。夜間も時間帯として加えたところ,価格変化額の平均には時間帯による差はないが,分散が1日の中で夜間だけで大きくなること,出来高の平均が1日の中で寄り付きと大引けの節で大きくなること,出来高の分散が寄り付きの節で大きく次の前場3節で小さくなることが分かった。日本の米国産大豆先物市場を情報に関する理論に基いて分析すると,情報に基かない取引が存在すると考えられる節があったので,情報に基かない取引をノイズ取引と名づけ,板寄せ法による節取引を行っている商品先物市場に対して情報とノイズ取引という2つの観点から異質的期待に基いて試論的なモデルを構築した。情報とノイズ取引の要素として,節間に流入する情報の個数とノイズトレーダーによる取引の活発さを用いてモデルを構築した。さらに流入する情報の個数をその平均にするという条件付で価格変化額と出来高に関する条件付の平均と分散の式を導出した。その結果,価格変化額の条件付平均は0で,その条件付分散は節間に流入する情報の個数の平均の正の定数倍になることが導出された。次に出来高の条件付平均は節間に流入する情報の個数の平均の平方根の正の定数倍とその節のノイズトレーダーの取引の活発さを示す値の正の定数倍の和になることが導出された。一方,出来高の条件付分散は節間に流入する情報の個数の平均の正の定数倍とその節のノイズトレーダーによる取引の活発さを示す値の2乗の正の定数倍の和になることが導出された。構築したモデルから寄り付きの出来高の平均と分散,そして夜間の価格変化額の分散が大きくなるのは,夜間に流入する情報の個数の平均が大きいことが原因であり,大引けの出来高の平均と分散が大きいのはノイズ取引が大引けで活発化することが原因であると考えられる。