- 著者
-
磯田 則生
- 出版者
- 奈良女子大学
- 雑誌
- 一般研究(C)
- 巻号頁・発行日
- 1991
本研究では,実際の住宅における居住者の日常生活(家事,団欒,睡眠など)時の温熱境条件の生理的・心理的反応への影響を測定すると共に,人工気候室を用いて温熱環境の人体影響に関する基礎的実験を行い,主に冷暖房時の至適温度条件に関するデ-タを収集し,住居の高齢者や幼児を考慮した冷暖房設備および室別の設定室温を検討した。住宅の実態調査では,冬期および梅雨期に,戸建住宅における室内温熱環境条件の実態を測定し,温熱環境条件温熱的快適性に及ぼす影響を検討した。また,住居に関する特性(構造・断熱性態・平面図),居住者の生活行動,冷暖房器具に関する使用方法,住居や生活環境に関する評価などをアンケ-ト調査した。その結果,冬期の使用暖房具はエアコンが最も多く,居間ではエアコンやファンヒ-タと共に電気カ-ペット・こたつの併用が75%を占め,平均室温は約20℃となる。梅雨期では室温が30℃近くになるとエアコンのドライ運転での使用がみられ,室内温湿度は25〜28℃,60〜70℃になることを明らかにした。人工気候室での基礎実験では,高齢者や青年を対象に冷暖房時の室温や床暖房温度の人体影響について測定し,至適温熱条件を検討した。冬期床暖房実験では,床座の場合は床温の影響が大きく,室温20〜24℃で床温26〜32℃が快適な温度であり,椅子座では気温の影響大きい。また,高齢者では末梢部皮膚温の変動が青年に較べ遅く,温度適応能力が低下している。夏期の床暖・床冷却実験では,室温30℃床温23℃より室温26℃床温31℃の方が満足度が高く,快適温度条件は黒球温度25〜29℃で床温25〜32℃であり,頭寒足熱の考えは夏期でも有効と言える。さらに,睡眠実験では、夏期の睡眠快適室温は26〜28℃であり,30℃では部分冷却設備が必要となり,前額・末梢部皮膚温が睡眠と関係することなどを明らかにした。