著者
久保 博子 磯田 憲生 梁瀬 度子
出版者
人間-生活環境系学会
雑誌
人間と生活環境 (ISSN:13407694)
巻号頁・発行日
vol.1, no.1, pp.51-57, 1994-06
被引用文献数
5

着衣量,温冷感,快適感の季節的変化を一年を通して,実験的に検討した。実験は人工気候室で行った。実験条件は,気温は,16℃,20℃,24℃,28℃,32℃の5段階,相対湿度は50%一定,気流は静穏気流,平均放射温度は気温と等しくした。被験者は,健康な青年女子71名を採用し,通常の着衣で椅座安静状態で60分間実験条件に暴露し,着衣量は実験後算出した。温冷感申告を9段階で,快適感申告を7段階で受けた。実験は1986年10月から翌年の8月にかけて7期行った。その結果,以下のことが明らかになった。1)被験者の着用していた平均着衣は冬期は0.84clo,夏期は0.4cloであった。2)温熱的中性申告の得られた温度は冬期には22℃で夏期には28℃であった。3)快適側の申告した時の温度は冬期は20℃〜28℃,夏期は22℃〜30℃で,その時冬期は「暖かい」と申告し,夏期は「涼しい」と申告した。
著者
城戸 千晶 久保 博子 東 実千代 佐々 尚美
出版者
日本建築学会
雑誌
日本建築学会環境系論文集 (ISSN:13480685)
巻号頁・発行日
vol.87, no.800, pp.657-667, 2022-10-01 (Released:2022-10-01)
参考文献数
43

This study aimed to evaluate the bedroom thermal environment of older adults and to clarify the effects of the thermal environment on sleep using a longitudinal field survey. More than 90% of bedroom temperatures were higher than the recommended standard bedroom temperature for older people (23-27℃). However, most participants rated their bedroom environment as cool and comfortable. A high bedroom temperature, above29℃, decreased sleep quality, subjective sleep evaluation, and extended time in bed. Adjusting to an appropriate bedroom thermal environment is important for maintaining sleep quality and preventing excessive sleep duration.
著者
久保 博子 木佐貫 美穂 金澤 麻梨子 川西 美和
出版者
奈良女子大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2011

硬さと弾性の異なるマットレス4種類を用い、短時間臥位実験、終夜睡眠実験、日常連続睡眠実験により、寝姿勢、体圧分布、睡眠解析、生理・心理反応をおこない 「寝転び心地」「眠り心地」 を検討した。その結果、短時間睡眠では、柔らかく反発弾性が小さい方が評価は良く、終夜睡眠実験では、寝姿勢や変換回数に差がみとめられたが、睡眠の質には有意な差は無かった。
著者
久保 博子
出版者
奈良女子大学
雑誌
奨励研究(A)
巻号頁・発行日
1996

夏期に温熱的快適となる冷房温度範囲,特にスカートを着用した女性にとって好ましい冷房温度を求め、冷房温度の基準化のための基礎データを得ることを目的とし,約30名の青年女子を被験者として夏期の温熱的快適性を測定する実験を人工気候室で行った。まず,好みの温度を選択する実験を行い,その平均値とばらつきを測定した。また,あらかじめ調節された温度を評価する実験と、好みの温度を選択する実験とでは快適性に違いがあるかどうか、同じ被験者で同時期に実験を行い検討した。さらに個人差が体格、生理的機能の違い、生活習慣等と関係あるか要因分析を行った。その結果以下の点が明らかになった。(1)30名の青年女子被験者に選択された気温は,23.5℃から30.5℃の範囲で約7℃の気温差が認められ,平均値は約27℃であった。その時の皮膚温は選択した気温と相関が認められるが,どの被験者も温冷感は「-1:やや涼しい」から「-2:涼しい」,快適感は「+2:快適」の申告で,選択した気温による差はなかった。(2)設定気温の評価実験では,気温選択実験における高温選択グループと低温選択グループで皮膚温には大差が認められなかったが,高温選択グループでは同じ温度でもより寒く感じ,28℃で最も快適と感じているが,低温選択グループでは同じ温度でもより暑く感じ,24℃付近でもっとも快適と感じている。(3)自己申告である「暑がり」「寒がり」には選択気温にも設定気温評価にもあまり差は認められなかったが,普段の生活で冷暖房機器の使用には差が認められた。(4)一定の環境評価での快適温度より快適な自由選択気温の方が個人差は大きかった。
著者
久保 博子
出版者
奈良女子大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2000

高齢者の睡眠環境に関するアンケート.調査を行い、高齢者が日常的におかれている睡眠環境・寝室の空調等と睡眠の実態を把握し、比較対照として、青年・中年群との年代的な比較考察を行った。調査内容は、(1)日常生活行動(2)睡眠状況、(3)寝室実態、(4)寝具状況とし、回収率は84%、有効回収率は83%で、20歳代から80歳代までの男女の冬期627票、夏期1447票の有効回答を得た。その結果、年齢により全体に朝型の者が増加するが、中途覚醒の増加などの睡眠様態も変化していることがわかった。また高齢であるほど、女性の方が寝床内暖房を使用し、寝室を暖房しなくても寝床内が暖かいと評価しており、満足感も高かった。しかし、中途覚醒等への影響は明らかでなく、必ずしも暖めていることが、睡眠に好影響を与えているとは言えなかった。中年群の方が、仕事や家事育児により睡眠の充足感が得られておらず、余裕のない生活が睡眠にまで影響を及ぼしていることが伺われた。実際の住宅での温熱環境および睡眠時の寝床気候の実測調査を行い、アンケート調査や人工気候室実験や実測調査の結果と比較検討し、睡眠度を推定した。その結果、寝床内温度は、足部皮膚温の上昇にともない上昇し、睡眠中は33℃〜36℃程度である。電気毛布を使用している者は、体動や心拍数より寝付きは速いと判断されるが、睡眠中に寝床内温度が36℃を越え、体動が増えて腕等を布団から出して寝床内温度を調節しているのが観察された。また、靴下を着用している被験者も、足部の皮膚温が他の部位より高い状況が観察された。
著者
古川 雅子 久保 博子 岡田 愛理 安岡 絢子 杉崎 智子 竹谷 伸行
出版者
人間-生活環境系学会
雑誌
人間-生活環境系シンポジウム報告集
巻号頁・発行日
vol.36, pp.71-74, 2012-11-21

本研究の目的は、オフィス空間において省エネルギーかつ快適な温熱環境を作り出すために、実際のオフィスにて実測調査及び執務者にアンケートを実施し、執務者の温熱的快適性を検討することである。オフィス6ヶ所にて、2011年12月~2O12年3月に温湿度・風速・グローブ温度の実測調査及び、執務者に温熱環境評価アンケートを実施した。その結果、執務時間の温湿度はおよそ20~23℃、40%に制御されていた。上下温度分布は、0.1mと1.1mではおよそ2~4℃の温度差があった。快適とされている範囲においても、執務者は、寒い・不快側の申告をしていた。
著者
榎本 ヒカル 久保 博子 磯田 憲生 梁瀬 度子
出版者
社団法人日本家政学会
雑誌
日本家政学会誌 (ISSN:09135227)
巻号頁・発行日
vol.46, no.11, pp.1091-1100, 1995-11-15
被引用文献数
4 2

This paper aims to analyze the effects of the aging from residential dwellings which are specifically concerned with heating and cooling systems. Also this paper attempts to clarify the characteristics and problems associated with it. For the purpose, we conducted surveys among 900 residents of western Japan during both winter and summer, the residents arranged with three age groups. The main results are as follows : 1) In the summer, the most popular cooling systems are air conditioners among young and middle-aged people, and electric fans among old people over 60. 2) In the winter, the heating mechanism most commonly used are unvented burning heaters among the middle and old people, and "kotatsu"-style heating among those under 40. 3) In the summer, the choice of a cooling system by older people are determined by individual constitution and the body mass index. In the winter, choice of a heating system is affected more by the age of the dwelling or family composition than by constitutional needs.
著者
久保 博子
出版者
奈良女子大学
雑誌
奨励研究(A)
巻号頁・発行日
1995

夏期のオフィス環境等の室内空間における、温熱的快適性と人体への気流の影響検討することを目的とする研究一環として、空調設備の気流の吹き出し方式の違いによる人体の温熱的快適性への影響を明らかにすることを目的として実験を行った。人工気候室にて夏期のオフィス環境を想定して、気温25℃、27.5℃、30℃の3段階を設定し、相対湿度50%一定とした。気流は3室の人工気候室を用い、「天井吹きだし」「床吹きだし」「壁面吹きだし」の3条件とし、気流速度は被験者の位置で0.2〜0.3m/sの微弱気流とした。夏服着用の健康な平均的体格の青年女子を被験者とし、実験中はパソコンのによる数値入力作業を科し、各温熱条件に60分暴露した。測定項目は生理的反応として皮膚温14点、心理的反応として温冷感、快適感、気流感等とした。(1)平均皮膚温は、吹き出し方式別に検討すると、壁面吹き出しが最も低く、天井吹き出し、床吹き出しの順に低くなる。これは、皮膚温が気流による人体の暴露面積の影響で暴露面積が大きい方がより低下することが考えられる。(2)全身温冷感は、顕著な差は認められないが、気温25℃では床面が、27.5℃及び30℃では天井吹き出しが最も涼しい側の申告である。(3)快適感は、気温25℃では壁面吹き出しが、27.5℃及び30℃では天井吹き出しが最も快適と申告され、天井吹き出しでは「やや涼しい」方が、床吹き出しでは「どちらでもない」で最も快適と快適された。(4)どの気温でも天井吹き出しが「好きな」「満足した」と評価された。
著者
榎本 ヒカル 久保 博子 磯田 憲生
出版者
社団法人空気調和・衛生工学会
雑誌
空気調和・衛生工学会論文集 (ISSN:0385275X)
巻号頁・発行日
no.56, pp.69-76, 1994-10-25
被引用文献数
1

高齢者の好ましい温熱環境条件を導き出す研究の一環として,夏服着用,椅座安静状態の高齢者男性および青年男性に,高齢者は28,30,32℃,青年は26,28,30℃のそれぞれ3段階の気温において,最も快適な温熱環境になるように気流速度を調節させた.その結果,各気温での選択気流速度の平均値は高齢者男性群は気温28℃で0.41m/s,30℃で0.80m/s,32℃で1.08m/sで,青年男性群の気温26℃で0.46m/s,28℃で0.84m/s,30℃で1.37m/sに比べ同じ気温で約0.4m/s遅く,高齢者男性は青年男性と比べて気流暴露後の皮膚温や熱流量,温冷感に違いがみられた.
著者
磯田 則生 久保 博子 都築 和代 東 実千代 光田 恵 佐々 尚美 萬羽 郁子
出版者
奈良女子大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2009

省エネルギーと個人の適応能力に着目し、住居の最適空調環境を明らかにするため、一連の温熱環境実測調査と空気環境調査、人工気候室での環境適応実験と空気質実験を行った。その結果、冬期のトイレや浴室環境の劣悪さ、環境共生住宅や半地室の快適性や断熱改修の高齢者の健康生活への効果を示した。又、空気環境の悪化の懸念と臭気環境の制御の重要性が明らかになった。さらに、省エネルギーを意識すると、夏期の快適温度が1℃上昇することや、寒さに弱い被験者や高齢者の温熱的特性について示した。
著者
磯田 則生 久保 博子
出版者
奈良女子大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1993

高齢者に対する温熱環境基準や好ましい冷暖房設備のあり方について提案するために、高齢者住宅を対象に温熱環境に関するアンケート調査、実態測定を実施すると共に高齢者を被験者に人工気候室実験により温熱環境要素の人体影響を測定し、総合的に検討した。1.住宅温熱環境における青年・中年・高齢者の住まい方対応に関するアンケート調査では、住宅の熱特性や高齢者の体質・体格により冷暖房器具の使用や住まい方に違いがみられた。夏季には高齢者の方が他の年代に比べ着衣量が多く、冷房器具としてはクーラーより扇風機の使用率が増加し、睡眠時の使用は減少する。冬季には高齢者の着衣量が増え、高齢者・中年ではストーブが使用され、睡眠時には中年・高齢者で寝床内暖房器具の使用が増加し、特に高齢者で多く、トレイ回数も増加する。2.高齢者住宅の温熱環境の実態測定では、冬季の温熱環境が悪く、暖房設備を改善する必要がある。夏季の居間の平均室温は29℃程度で、寝室では27℃であり、通風や扇風機の利用が多い。冬季の居間室温は15℃〜18℃と推奨室温より3〜5℃低く、寝室では8℃程度とさらに低く、着衣や炬燵で寒さに対応し、夜間のトレイ時には皮膚温が低下する。3.高齢者・青年を被験者とした人工気候室実験では、高齢者の温熱環境に対する生理・心理反応の特徴を明らかにした。夏季実験では高齢者は青年に比べ躯幹部皮膚温が低下するが、末梢部の変化が少なく安定するのに時間を要し、気温や気流の影響を受ける。冬季実験では寒冷暴露時の高齢者の前額皮膚温が気温の影響により低下するが、下腿部では青年に比べ低下が少ないことから血管収縮機能の低下が示唆される。推奨室温としては夏季には26℃〜29℃で、室温30℃では気流が必要であり、冬季には21℃〜25℃の室温が推奨され、放射暖房方式が望ましい。