- 著者
-
磯田 沙織
- 出版者
- 独立行政法人 日本貿易振興機構アジア経済研究所
- 雑誌
- ラテンアメリカ・レポート (ISSN:09103317)
- 巻号頁・発行日
- vol.40, no.1, pp.41-54, 2023 (Released:2023-07-31)
- 参考文献数
- 19
1980年の民政移管後のペルーでは、政党内部や政党間の合意形成が困難な状態であり、とくに2000年以降は、有力候補がその場しのぎの選挙運動を組織したり、あるいはいくつかの政党が選挙戦を有利に戦うため場当たり的に有力候補を招待し、選挙後の党内では、招待した政治家と古参の党員とのあいだであつれきが生まれるといった傾向にあった。このため、政党間はおろか政党内部の合意形成も難しいという状態のまま、定期的に選挙が実施されてきた。そのあいだに蓄積された課題は2018年以降の大統領弾劾発議の頻発へとつながり、2022年12月の大統領弾劾裁判中に、大統領が憲法の規定を無視して国会解散を宣言し、国会が大統領の職務停止を可決した。その後の政権は、この職務停止を「国会によるクーデター」であったと批判する反政府デモに直面し、前倒し選挙の実施を模索するも、前倒し選挙に消極的な政治家とのあいだで合意形成ができないままである。本稿では、過去のペルーでの大統領弾劾を類型化しつつ、2022年12月の弾劾裁判中の出来事や、現在の政権に対するペルー国民の不満について、世論調査結果から明らかにする。