著者
神保 秀一
出版者
一般社団法人日本応用数理学会
雑誌
応用数理 (ISSN:09172270)
巻号頁・発行日
vol.11, no.2, pp.152-162, 2001-06-15

本稿ではギンツブルグ・ランダウ方程式(以下GL方程式と呼ぶ)およびボルテクス(vortex)についての偏微分方程式の立場からの近年の研究について述べる.GL方程式は物理において超伝導や超流動の現象で電流や流体の状態を記述する方程式として現れる.ボルテクスはこれらの流れの停留する点であり,また,その近傍にエネルギーが偏在する点でもあり,状態を特徴付ける重要な性質である.一方,ボルテクスは数学的には解の関数(Φ=Φ(x))のゼロ点に対応するが,解としての幾何的な性質を特徴付ける興味ある対象である.また,解の安定性や大域的な性質を調べるうえでも手がかりとなるので重要である.その解析のために非線型解析の方法が華々しく応用される.特にGL方程式のなかの小さいパラメータの極限(特異摂動)において,ボルテクスの挙動を求める研究が注目を集めている.このような事情でGL方程式は近年(90年以降)ホットな研究テーマであり続けている.
著者
神保 秀一 林 実樹広 中路 貴彦 儀我 美一 森田 喜久 三上 敏夫 本多 尚文
出版者
北海道大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
1997

平成9-11年度の期間,非線型偏微分方程式に現れる解の力学系の観点からの研究を行った.本研究組織の得た主たる研究成果は次の通りである.(i)ギンツブルグランダウ方程式の安定解の存在と領域依存性を様々な場合について研究した.また,ボルテックスをもつ安定解の存在についてトポロジカルに多様なものを得る方法を考案した.非一様状況の状況におけるパターンフォーメーションも研究した.(ii)非定常複素ギンツブルグランダウ方程式の周期解の安定性や領域依存性について研究した.(iii)非定常ギンツブルグランダウ方程式の特異極限問題において力学系が有限次元に還元され常微分方程式の有限システムによって表され,さらにその表現公式を得た.(iv)反応拡散方程式に現れるホモクリニック軌道のパラメータによる構造変化(力学系の分岐現象)を研究した.(v)平均曲率流,表面拡散方程式などの曲面発展方程式に現れる力学系を研究し,漸近挙動や幾何学的な特徴を解析した.(vi)システムの非線型波動方程式について成分ごとに伝播速度が異なる場合について大域解の存在を研究した.(vii)急拡散方程式の解の消滅現象を研究した.(viii)ランダム結晶のなす曲率流方程式の定性的な研究.(ix)領域が部分的に退化する特異摂動において,半線型楕円型方程式の解の挙動の特徴付けをおよびラプラシアンの固有値の摂動公式を研究し(ノイマン境界条件),従来から知られている結果を退化次元が一般の場合へと拡張した.
著者
野田 隆三郎 洞 彰人 神保 秀一 池畑 秀一 石川 洋文
出版者
岡山大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1992

1 タイトt-デザインの分類については ウイルソン多項式の根の整数条件が有力な手がかりであるが これの処理方法においてかなりの進展が得られた。今後はこれ以外に入の整数性をうまく結びつけて 最終的な解決をはかりたいと考えている。2 擬対称4-デザインはタイト4-デザインに他ならず すでに分類が完成している。条件を擬対称3-デザインに弱めても 同じ手法がかなりの程度まで使えることが分かった。デザインの諸パラメーターの整数性および付隨する強正則グラフの結合行列の固有値の整数性が 強い制約を与えており これらをうまく処理して分類を完成させる 見通しができた。3 スタイナーシステムS(t,k,v)において よく知られているキャメロンの不等式 V≧(b+1)(k-t+1) および私の証明した不等式 V≧(b+1)(k-t+1)+(k-t)の改良として次の結果を得た。 定理 tが奇数で V>(t+1)(k-t+1)とすると V≧(t+2)(k-t+1) が成りたつ.さらに等号が成りたつのは(t,k,v)=(t,b+1,2t+4)のときに限る.この結果は近く論文にまとめる予定である.4 等周問題については3次元におけるミンコフスキーの不等式 M^2≧4πA,およびA^2≧3VMの改良がいま一歩のところまで進展した。これは有名なブルン・ミンコフスキーの不等式の改良とも結びついているので完成すれば大変面白い結果であると考ている。近いうちに是非完成したい。また逆向きの等周不等式については 2次元におけるゲージの証明はそのまま3次元以上に適用することはできないがボンネゼンの定理をうまく使う事によって解決への重要な手がかりが得られた。