著者
大原 利眞 若松 伸司 鵜野 伊津志 安藤 保 泉川 碩雄 神成 陽容 外岡 豊
出版者
公益社団法人大気環境学会
雑誌
大気環境学会誌 (ISSN:13414178)
巻号頁・発行日
vol.32, no.1, pp.6-28, 1997-01-10
被引用文献数
14

局地気象数値モデル(メソスケール気象モデル)と光化学反応を含む大気汚染物質の輸送モデル(光化学グリッドモデル)を組み合わせて, 夏季における光化学オキシダント高濃度現象の3次元数値シミュレーションモデルを構築し, 関東地域に適用して検証した。構築したシミュレーションモデルの特徴は, 4次元データ同化手法を用いた局地気象数値モデルと詳細な光化学反応を含む汚染質の輸送モデルを組み合わせた3次元モデルであること, 最新の光化学反応モデルと乾性沈着モデルを使用していること, 生物起源炭化水素の影響を考慮していること, 推計精度が比較的高い発生源データを使用していること等である。夏季の光化学オキシダント高濃度期間として, 立体的な特別観測が実施された1981年7月16日4時から42時間を対象に, 本モデルを用いてシミュレーション計算した。その結果, 光化学オキシダント及びNO_X, NO_2濃度の地域分布や時間変動パターン等について良好な現況再現性が得られた。また, 米国EPAによって示されているモデルの目標水準と比較した結果, その水準を上回っていた。更に, 航空機観測によって得られた上空濃度分布も定性的には再現することができた。
著者
大原 利眞 若松 伸司 鵜野 伊津志 神成 陽容
出版者
公益社団法人大気環境学会
雑誌
大気環境学会誌 (ISSN:13414178)
巻号頁・発行日
vol.36, no.4, pp.208-230, 2001-07-10
被引用文献数
5

大阪を中心とする関西地域において, 春季に発生する二酸化窒素NO_2などの高濃度汚染メカニズムを解明するために, 1993年4月に航空機観測を含む特別観測が国立環境研究所と関西地域の地方自治体によって実施された。観測期間中には二酸化窒素とオゾンの両方が高濃度となる汚染状態が発生し, これらの物質を含む多種類の汚染物質の動態を航空機, 生駒山および地上における立体観測によって観測することに成功した。本研究は, この高濃度状態の再現を目標とした数値シミュレーションモデルを構築し, 立体観測データによって総合的に検証したものである。構築した数値モデルを検証した結果, 地上の常時大気測定局で測定されたNO_x, NO_2,O_x(O_3), SO_2,NMHC濃度の時間変動がモデルによって良好に再現されること, 航空機観測結果などによって得られた多種類の物質(NO_2,O_3,VOC成分等)の鉛直濃度分布がモデルによってほぼ再現されること, 生駒山で測定された濃度時間変動もモデルによって説明できること, サルフェイトに関してもバックグラウンドが高いもののモデルによってほぼ再現できることなどが明らかとなった。これらの結果から, 本研究で構築した数値シミュレーションモデルによって, 観測された高濃度エピソードにおけるNO_2をはじめとする多種類の汚染物質の動態をモデル化できたと考えられる。
著者
神成 陽容
出版者
公益社団法人大気環境学会
雑誌
大気環境学会誌 (ISSN:13414178)
巻号頁・発行日
vol.41, no.4, pp.209-219, 2006-07-10
参考文献数
15
被引用文献数
6

関東・関西地域における1990〜2002年度にかけての光化学オキシダント(Ox)濃度の週日から週末にかけての変化(週末効果)を調べた。その結果,Ox昼間平均濃度,日最高1時間濃度とも,長期間平均濃度における日曜日の週末上昇効果がほぼ全ての測定局で認められた。また,日曜日のOx濃度上昇量は,NOxの低減量と強い相関関係があり,HC-limitedの環境におけるNOxのO_3生成抑制効果が週末のNOx排出減少によって解除されることが原因であることが推定された。しかし,Ox濃度パーセンタイル点に沿って週末効果を調べたところ,低パーセンタイル点(オゾン生成ポテンシャルの低い日)ではほとんど全ての地点でOxの"週末上昇効果"がみられるものの,高パーセンタイル点に移るにつれて(オゾン生成ポテンシャルが高くなるに従って),多くの地点で"週末低減効果"に反転する現象が見いだされた(時間的な週末効果反転現象)。類似した週末効果の反転現象が空間的にも体系的に生じており,比較的高い特定のパーセンタイル点で観察した場合,発生源地域では"週末上昇効果"がみられるが,発生源地域から離れるに従って"週末低減効果" に反転する現象がみられた(空間的な週末効果反転現象)。これらの2種類のOx濃度週末効果反転現象がきわめて組織だって生じていることから,その原因としてオゾン生成レジームの時間・空間的変化があるものと推測された。
著者
大原 利眞 神成 陽容 若松 伸司 鵜野 伊津志
出版者
公益社団法人大気環境学会
雑誌
大気環境学会誌 (ISSN:13414178)
巻号頁・発行日
vol.35, no.2, pp.103-112, 2000-03-10
被引用文献数
1

1997年7月2日10時頃,東京湾中央部において大型タンカーが底触し,大量の原油が流出した。流出油は揮発性の高い原油であったため,その3割程度はすぐに蒸発し大量の石油蒸気として大気中に放出された。本研究は,この原油流出事故による大気環境影響を実測データ解析とモデル数値解析によって検討した。実測データを解析した結果,東京湾央部の流出油から揮散した高濃度NMHCは風速10m/s程度の南西風によって東京湾北東部から茨城県南部にパフ状に輸送され東京湾北部陸上で最高6ppmCに達したこと,高濃度NMHCパフの通過時にはNMHCとともに光化学オキシダントも上昇することが認められた。次に数値解析によって事故による大気環境影響を検出した。基本ケースの数値計算によって原油流出に伴う大気環境影響の基本的特徴が再現されるのを確認した後,事故ケースと事故なしケースの差を影響量とみなして分析した。この結果,高濃度NMHCパフ内においては光化学反応によってO_3等の光化学オキシダントやNO_2が生成し,その最大上昇濃度はO_318ppb,NO_22ppbであることが明らかとなった。