著者
福井 健介 桑田 五郎 今井 正武
出版者
公益社団法人 日本栄養・食糧学会
雑誌
日本栄養・食糧学会誌 (ISSN:02873516)
巻号頁・発行日
vol.50, no.4, pp.273-278, 1997-08-10 (Released:2010-02-22)
参考文献数
20
被引用文献数
5 3

10%食塩水処理により脱脂大豆から脱フィチン酸大豆タンパク質 (PFS) を作成した。成長期の雄ラットに20%のPFS, 分離大豆タンパク質 (SPI) またはCaseinを含む食餌を与え, ミネラル吸収性に及ぼす大豆タンパク質のフィチン酸除去の影響を検討した。食餌中の総リン (P) 量は無機P (P1) を添加して0.59%になるよう調節した。また, PFS食中のPがほとんど外因性のP1であったため, P1添加量を0.59%にした群をさらに設定した (各SPI-IおよびCasein-I群とした)。結果概要を以下に示した。1) カルシウム (Ca) 吸収率に及ぼす大豆タンパク質のフィチン酸除去の効果は, 1%程度の上昇傾向にとどまった。2) 一方, マグネシウム (Mg) および亜鉛 (Zn) の吸収率においては, 大豆タンパク質のフィチン酸除去により5~10%程度の有意な改善または改善傾向がみられた。3) ミネラル吸収に関するCasein, SPIおよびPFSの関係は, 食餌中のPの合わせ方の違いによって影響を受けなかった。またP1量の多い群でミネラル吸収率が低くなる場合が多くみられた。4) SPIのCa, MgおよびZnの吸収率は, Caseinと同等あるいは上回る数値であった。これらの結果より, 大豆タンパク質のミネラル吸収率はCaseinと同等であるが, フィチン酸を除去することでMgおよびZnの吸収性がさらに改善される可能性が示唆された。
著者
伊吹 昌久 福井 健介 Mine Yoshinori
出版者
日本応用糖質科学会
雑誌
応用糖質科学:日本応用糖質科学会誌 (ISSN:21856427)
巻号頁・発行日
vol.5, no.2, pp.105-112, 2015
被引用文献数
1

本研究では,ヤシ油搾油残渣であるコプラミールから得られる,酵素処理コプラミール(MCM)とこれに含まれる主要なマンノース化合物であるβ-1,4-マンノビオース(MNB)の免疫機能への影響と成長促進作用,抗炎症作用を調べることにより,飼料用抗生物質の代替としての可能性について調べた。その結果,MNBを含有するMCMを鶏に給与すると,IgA分泌促進がみられ,抗原提示およびインターフェロン関連因子を含む免疫防御関連遺伝子の発現量の増加が認められ腸管免疫賦活化することが示唆された。また,鶏のマクロファージ細胞(MQ-NCSU)におけるサルモネラ菌殺傷能力も高めた。さらにMCMが鶏腸管の形態学的変化を引き起こすことによって栄養素の吸収能を高め,成長を促進することが示された。以上の結果からMCM/MNBは抗生物質代替の可能性が示された。また腸管炎症を起こさせた子豚に対してMCMを投与すると,腸管炎症の治癒が観察され,炎症性サイトカインの抑制がみられた。これらのことからは,MCM/MNBは抗炎症作用もあることが示唆され畜産業界に広く利用される可能性が考えられた。