著者
中石 一英 福井 康弘 荒川 良
出版者
日本応用動物昆虫学会
雑誌
日本応用動物昆虫学会誌 (ISSN:00214914)
巻号頁・発行日
vol.55, no.4, pp.199-205, 2011-11-25 (Released:2011-12-10)
参考文献数
17
被引用文献数
35 30

野外の餌動物がほとんど発生していないゴマにタバコカスミカメが大発生し世代交代することが観察されたことから,本種はゴマで増殖が可能と推測された.そこで,ゴマでタバコカスミカメは増殖が可能であるか否かを知るとともに,キュウリ,ナス,トマトおよびピーマンでの増殖についても検討した.餌にゴマ,キュウリ,ナス,トマトまたはピーマンの葉を与えた区,それとゴマの葉とともにスジコナマダラメイガ解凍卵を与えた区を設け,タバコカスミカメを飼育し,繁殖能力を比較した.タバコカスミカメの卵から成虫までの生存率はゴマでは59.3%あり,ゴマとともにスジコナマダラメイガ解凍卵を与えても生存率は有意に高まらなかった.このゴマでの生存率はキュウリを与えた場合と有意差はなかったが,ナスより有意に高かった.また,トマトおよびピーマンでは成虫まで発育した個体は見られなかった.卵から成虫までの発育日数はゴマでは29.0日と,キュウリおよびナスに比較して有意に短かったが,ゴマとともにスジコナマダラメイガ解凍卵を与えると有意に短縮した.成虫の生存日数はゴマで雌が38.4日,雄が27.7日であり,ゴマとともにスジコナマダラメイガ解凍卵を与えても有意差は認められず,ゴマでの生存日数は他の植物と比較して有意に長かった.1雌当たり総産卵数はゴマでは63.6卵であったが,ゴマとともにスジコナマダラメイガ解凍卵を与えると166.4卵と有意に増加した.ゴマ以外の植物での1雌当たり総産卵数は4卵以下で,ゴマと比較して有意に少なかった.ゴマだけを与えた飼育から求めた日当たり内的自然増加率および30日当たり増殖倍率は,それぞれ0.0465および4.0であり,ゴマとスジコナマダラメイガ解凍卵を与えて得た0.0865および13.4に比較して小さかった.しかし,ゴマでは動物質の餌がなくてもタバコカスミカメは増殖できることが明らかになったことから,ゴマはタバコカスミカメのインセクタリープランツとして利用できる可能性が示された.
著者
福井 康弘 伊東 嗣功 工藤 卓
出版者
日本知能情報ファジィ学会
雑誌
日本知能情報ファジィ学会 ファジィ システム シンポジウム 講演論文集 第29回ファジィシステムシンポジウム
巻号頁・発行日
pp.45, 2013 (Released:2015-01-24)

機能しない神経システムを補完することを目的とした生体の神経回路網と電子回路のインターフェイスを実現するためには,神経回路網のネットワークダイナミクスの解明と,最適な入力手法,出力である神経回路網の発火パターンをデコーディングする手法の開発が必須である.この目的のため,脳における神経情報処理の生体モデルとしてニューロ・ロボットの開発を行っている.生体の神経回路網に,外界からの入力として電流刺激が印加され,刺激による神経回路網の応答パターンによってニューロ・ロボットの行動が生成される.我々が開発しているニューロ・ロボットは,生体神経回路網が上位情報処理装置であり,ソフトウェアによって入出力を調整することによって合目的的行動を生成するように設計されている.本研究では常時教師無し学習を行いながら行動生成を行う自己組織化マップ(SOM)を用いたニューロ・ロボットを開発した.ロボットのIRセンサが識別した左右の障害物の位置に対応した2電極から電流刺激を行い,刺激によって得られる64次元の特徴ベクトルをSOMに入力し,10×10の2次元のマップ空間に写像して次元縮約を行った.学習の初期にのみ,左右の障害物に割り当てた電流刺激に対してあらかじめ選定したノードを強制的に勝者ノードとして教師あり学習を行い,勝者ノードに対して適切な想定動作を関連づけた.これをシーディングと呼ぶ.シーディングにより,左右入力によって誘発された神経電気活動の時空間パターンが互いに重なっていなかった場合,勝者ユニットの分布は左入力に対する勝者ユニットがマップ上の左側に,右入力に対する勝者ユニットが右側にほぼ分離して写像された.また,複数回の入力で選出された勝者ユニットの重心の位置は入力ごとに繰り返しほとんど同じ位置が選択される傾向が確認された.
著者
福井 康弘 伊東 嗣功 箕嶋 渉 周田 ありす 工藤 卓
出版者
日本知能情報ファジィ学会
雑誌
日本知能情報ファジィ学会 ファジィ システム シンポジウム 講演論文集 第30回ファジィシステムシンポジウム
巻号頁・発行日
pp.290-295, 2014 (Released:2015-04-01)

脳における高次機能の解明のためには,外界との入出力を備えた神経回路網において,発現する電気活動のパターン変化を定量的に解析する必要がある.この目的のため,生体の神経回路網に電流刺激を与え,刺激によって得られる応答パターンをもとに行動生成を行うニューロ・ロボットの開発を行っている.本研究ではロボットを制御する手法として,常時教師なし学習を行いながら行動生成する自己組織化マップ(SOM)を用いたニューロ・ロボットを開発した.ロボットのIRセンサが識別した障害物の位置に対応して刺激電極に電流刺激を行い,刺激に応答して発現した神経活動パターンを64次元の特徴ベクトルで表現し,これを20×20の2次元マップ空間に次元縮約した.学習の初期課程のみ教師あり学習を行い,刺激による応答を特定のノードに写像させることで異なる刺激点からの刺激誘発応答を2次元空間に分離して写像した.それにより,ニューロ・ロボットの衝突回避行動を生成することに成功した.
著者
中石 一英 福井 康弘 荒川 良
出版者
JAPANESE SOCIETY OF APPLIED ENTOMOLOGY AND ZOOLOGY
雑誌
日本応用動物昆虫学会誌 (ISSN:00214914)
巻号頁・発行日
vol.55, no.4, pp.199-205, 2011
被引用文献数
30 1

野外の餌動物がほとんど発生していないゴマにタバコカスミカメが大発生し世代交代することが観察されたことから,本種はゴマで増殖が可能と推測された.そこで,ゴマでタバコカスミカメは増殖が可能であるか否かを知るとともに,キュウリ,ナス,トマトおよびピーマンでの増殖についても検討した.餌にゴマ,キュウリ,ナス,トマトまたはピーマンの葉を与えた区,それとゴマの葉とともにスジコナマダラメイガ解凍卵を与えた区を設け,タバコカスミカメを飼育し,繁殖能力を比較した.タバコカスミカメの卵から成虫までの生存率はゴマでは59.3%あり,ゴマとともにスジコナマダラメイガ解凍卵を与えても生存率は有意に高まらなかった.このゴマでの生存率はキュウリを与えた場合と有意差はなかったが,ナスより有意に高かった.また,トマトおよびピーマンでは成虫まで発育した個体は見られなかった.卵から成虫までの発育日数はゴマでは29.0日と,キュウリおよびナスに比較して有意に短かったが,ゴマとともにスジコナマダラメイガ解凍卵を与えると有意に短縮した.成虫の生存日数はゴマで雌が38.4日,雄が27.7日であり,ゴマとともにスジコナマダラメイガ解凍卵を与えても有意差は認められず,ゴマでの生存日数は他の植物と比較して有意に長かった.1雌当たり総産卵数はゴマでは63.6卵であったが,ゴマとともにスジコナマダラメイガ解凍卵を与えると166.4卵と有意に増加した.ゴマ以外の植物での1雌当たり総産卵数は4卵以下で,ゴマと比較して有意に少なかった.ゴマだけを与えた飼育から求めた日当たり内的自然増加率および30日当たり増殖倍率は,それぞれ0.0465および4.0であり,ゴマとスジコナマダラメイガ解凍卵を与えて得た0.0865および13.4に比較して小さかった.しかし,ゴマでは動物質の餌がなくてもタバコカスミカメは増殖できることが明らかになったことから,ゴマはタバコカスミカメのインセクタリープランツとして利用できる可能性が示された.