- 著者
-
小林 郁雄
福山 喜一
- 出版者
- 日本草地学会
- 雑誌
- 日本草地学会誌 (ISSN:04475933)
- 巻号頁・発行日
- vol.58, no.4, pp.262-265, 2013
- 参考文献数
- 5
常時において,非常時に備えることは難しい。予測をはるかに超える出来事が同時多発的に進行していく非常事態においては,局面での適切な対応を迅速に行うことが困難になり,過去の前例やマニュアルを参考にしたところで,結果として大きな損害を被ってしまうことがある。2010年4月20日,宮崎県都農町の繁殖牛農家で突如発見された口蹄疫は,発生当初における甘い期待を裏切りながら爆発的に被害を拡大させた。宮崎県では,2000年に発生した口蹄疫を最小限の被害で食い止めた実績があり,今回も何とかなるのでは?といった推測があったのは否めない。しかしながら,5月に入ってから感染確認は急速に拡大した。後の調査で明らかになったように,最初に口蹄疫が発見された時点で,すでに近隣家畜密集地帯の農家でも口蹄疫に感染した牛が相当数いたのである。当時は報道も限られ,現場の情報も伝わらずに混乱を招いた。その後の家畜の殺処分も,様々な理由により遅々として進まなかった。5月18日に宮崎県知事による非常事態宣言がなされ,5月21日には発生農家の半径10km以内の全頭に口蹄疫ワクチンを接種して殺処分することが決まった。発生当初から8月27日の口蹄疫終息宣言に至るまでの経緯については,農林水産省のホームページや各種報道,国および県の口蹄疫対策検証委員会報告書等に記載されており,ネット上で簡単に入手できるのでそちらをご覧頂きたい。