- 著者
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福島 博
- 出版者
- 一般社団法人 日本感染症学会
- 雑誌
- 感染症学雑誌 (ISSN:03875911)
- 巻号頁・発行日
- vol.80, no.3, pp.220-230, 2006
- 被引用文献数
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5
2001年から2004年に島根県沿岸の水環境と魚介類さらに市販魚介類を対象として<I>Vibrio vulnificus</I>の検索を行った. 本菌は海水113件中77件 (6.81%) から≦10<SUP>5</SUP>MPN/Lと海泥125件中88件 (70.4%) から≦10<SUP>7</SUP>MPN/100g, 魚類46件中8件 (17.2%) から≦10<SUP>6</SUP>MPN/10g, 貝類156件中68件 (43.8%) から≦10<SUP>6</SUP>MPN/10gで分離され, 本菌は日本海沿岸の河口付近の汽水域に高率に分布し, そこに生息する魚介類も高率に汚染されていることが明らかにされた. また, アサリ, ハマグリ, アカガイ, カキ, ホタテなどの市販貝類91件中64件 (70.3%) から≦10<SUP>6</SUP>MPN/10gと冷凍エビ16件中7件 (43.7%) から<10<SUP>2</SUP>MPN/10g分離され, 市販魚介類と共に他の地域へ容易に運搬されることが明らかにされた. 分離菌株174株中139株 (79.9%) が11血清型に型別され, O4が最も多かった. 2004年に島根県の内陸部で血清型O12による感染症が発生し, 同一血清型が海水と海泥1件ずつと熊本県産アサリ3件から分離され, 日本海沿岸に分布する菌も本菌感染症の原因となる可能性が示唆されるが, 本菌は生鮮海産物の冷蔵輸送により容易に伝播されることから, 本菌感染症は本菌が分布する沿岸地域に関係なく発生することを示唆している.