著者
福嶋 忠昭 北村 利夫 村山 秀樹 吉田 敏幸
出版者
THE JAPANESE SOCIETY FOR HORTICULTURAL SCIENCE
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.60, no.3, pp.685-694, 1991 (Released:2008-05-15)
参考文献数
19
被引用文献数
10 12

渋ガキ'平核無'を用い, エタノールによる脱渋機作を種々の観点から検討した. 結果は以下のとおりである.1. デシケータ内に果実を入れ, ふたをずらして開口部を設けて35%エタノールまたは5%アセトアルデヒド処理を施したところ, 両処理区とも果実内のアセトアルデヒド含量は4日目まで同じような値を示したにもかかわらず, エタノール処理の方がアセトアルデヒド処理より早く脱渋した。2. 乾熱果または煮沸果を種々の濃度のアセトアルデヒド溶液に2日間さらし, 果肉内のアセトアルデヒド含量と脱渋量の関係式を求めた. これをエタノール処理中の果実に適用すると, アセトアルデヒドの非酵素的作用だけで脱渋するには, 果実内に存在するアセトアルデヒドの量が著しく少なかった.3. エタノール処理の果肉組織の浸透圧と水不溶性物質の保水能は増加する傾向があった. その程度は脱渋速度が大きい処理2~4日で著しかった.4. 煮沸果を90°C下で乾燥すると, 目減りが増加するとともに浸透圧が増加し, 可溶性タンニン含量が減少し, 12時間後にはアセトアルデヒドの発生が認められなくても完全に脱渋した.5. エセホンやIAAを組織切片に与えても脱渋が認められ, IAAをへたに浸潰し放置して置くと果実は完全に脱渋した.以上の実験を踏まえて考察した結果, エタノールによる脱渋は, 処理によって生ずるアセトアルデヒドの非酵素的作用による水溶性タンニンの不溶化によるのみならず, エタノールによって誘導される細胞壁多糖類の分解がタンニン細胞周辺組織の浸透圧の上昇を招き, その結果タンニン細胞中の水が脱水され, 接近したタンニン分子が水素結合や疎水結合により巨大分子となって脱渋するものも相当あると推察された.
著者
北村 利夫 板村 裕之 福嶋 忠昭
出版者
山形大学
雑誌
山形大學紀要. 農學 (ISSN:05134676)
巻号頁・発行日
vol.11, no.1, pp.201-204, 1990-01-20
被引用文献数
1

【緒言】メロン(Cucumis melo L.)は非常に多形態な種で,多くの変種(variety)に分化しているが,主なものとして次の4種類がある. ①var.reticulatus ②var. cantalupensis ③var. inodorus ④var. makuwa また,① var.reticulatusはいわゆる温室メロンと称するイギリス系ガラス室栽培アミメロンとアメリカ及び中近東系露地栽培のcantaloupeに分けられる.近年メロンの消費の増加,高級品種志向に伴い,これらの変種, 系統間の交雑によるF1品種が続々と誕生しており,現在メロン果実の外観,風味,成熟の進展の様相が品種間で著しく異なるゆえんとなっている.既報において4品種のメロン果実の採取後の成熟・追熟生理を検討し,おのおの特徴のある3つのタイプを示すことを明らかにした.すなわち,'ライフ'では呼吸量及びエチレン発生量の急激な増大(クライマクテリック・ライズ)がみられた.一方,'アールス・フェボリット'系の'ハニーキング'ではクライマクテリック・ライズが起こることなく追熟を完了した.'プリンス'および'エリザベス'では'ライフ'のような明確なクライマクテリック・ライズは起こらないが,呼吸量及びエチレン発生量の多少の増大がみられた.本報では,'クリネット','マドンナ'及び'サンジュエル'の3品種のメロン果実について,収穫後の呼吸量及びエチレン発生量の変化を調査した結果を述べる.
著者
板村 裕之 福嶋 忠昭 北村 利夫 原田 久 平 智 高橋 芳浩
出版者
園藝學會
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.62, no.4, pp.867-875, 1994
被引用文献数
3 2

カキ平核無の果実の脱渋後の軟化と樹体条件, とくに葉との関連について調べた.<BR>1.樹勢が弱く落葉時期が早い樹と, 9月以降にビニール被覆を行って, 落葉時期を遅らせた樹と生育中庸な対照区の樹からそれぞれ果実を採取し, アルコール処理を行った後の20°C条件下における果実の軟化を比較した. その結果, 早期落葉樹からの果実は対照区の果実に比べて, 軟化が早く, 逆に落葉が遅れた区の果実は軟化するのが遅かった.<BR>2.7月21日に摘葉処理を行い, 9月11日, 9月30日, ならびに10月15日にそれぞれ果実を採取して, アルコール脱渋後の軟化を調べた. いずれの採取時期の果実でも, 摘葉処理は脱渋後の果実のエチレン生成を促進した. さらに, 9月30日および10月15日採取の果実では摘葉処理区の果実の軟化は無処理区(対照区) に比べて7~10日促進された.<BR>3.9月7日に50ppm GA散布処理を行い, 9月15日, 9月25日, ならびに10月12日に果実を採取して, 脱渋処理を行った. いずれの採取時期の果実でも, 脱渋後の果実のエチレン生成量はGA処理の影響をまったく受けなかった. しかし, 10月12日採取果ではGA処理は, 明らかに果実の軟化を抑制した.<BR>4.10月20日に摘葉処理を行った区と, 摘葉処理の4日前に50ppm GAを前処理した区の果実を, 11月2日に採取して脱渋処理した. 脱渋後の果実のエチレン生成量は, 摘葉処理やGA前処理の影響をほとんど受けなかったものの, 摘葉処理区は果実の軟化を促進した. また, この軟化促進効果はGA前処理によってほぼ完全に打ち消された.<BR>5.7月21日に摘葉した区と対照区の果実を11月15日に採取し, 内生のGA様活性を比較した. 対照区では, 比較的高いGA様活性が認められたのに対して, 摘葉区では抑制分画は認められたが, GA様活性はほとんど認められなかった.<BR>以上の結果から, 葉が樹体に着生していることが,採取脱渋後の果実のエチレン生成を抑制する効果があるものと考えられた. また, 葉のエチレン生成抑制効果はGA以外のものによっていると思われた. さらに,成熟果においてはエチレン生成から軟化にいたる一連の反応のどこかを葉由来のGAが阻害している可能性が示唆された.