著者
西澤 隆 元村 佳恵 村山 秀樹 平 智
出版者
山形大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
1995

メロンの「うるみ果(水浸状果)」発生要因とその防止技術について,以下の諸点について明らかにした.1.メロンの「水浸状果」は,果実肥大期の後期に株が一時的に遮光条件下に置かれることによって誘発される生理障害であることを明らかにした.2.「水浸状果」の発生には品種固有性が存在し,供試した品種中では‘アンデス'には「水浸状果」が認められたものの,‘ラスター'では認められなかった.3.遮光処理は果実内におけるスクロースの蓄積を阻害したものの,ヘキソースの蓄積はほとんど阻害されなかったことから,遮光処理は果実内における糖代謝関連酵素の活性を変化させる可能性が示唆された.4.遮光処理は果実内におけるアセトアルデヒド,エタノール生成量を増加させたことから,「水浸状果」は‘プリンスメロン'等で発生が報告されている「発酵果」の一種であり,遮光処理によって果実はより嫌気的な状態に置かれるものと推察された.5.遮光処理はエチレン生成量を増加させ,同時に果肉硬度を低下させたことから,遮光区における急激な果肉硬度の低下には,エチレン生成が関与しているものと推察された.6.摘葉処理および着果過多処理により株のソース・シンクバランスを変えても,果実に水浸症状は認められなかったことから,「水浸状果」は遮光処理によって果実内への光合成産物の供給が制限されることが主要因で起こる生理障害ではないと推察された.7.ABA処理は葉の光合成速度を低下させると同時に果実からのエチレン生成量を増加させ,果実の軟化を促進させた.8.メロンの「水浸状果」の防止には,フィルムの張り替え等による受光態勢の改善,品種の選択,窒素肥料の適正化等が重要であると考えられた.
著者
福嶋 忠昭 北村 利夫 村山 秀樹 吉田 敏幸
出版者
THE JAPANESE SOCIETY FOR HORTICULTURAL SCIENCE
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.60, no.3, pp.685-694, 1991 (Released:2008-05-15)
参考文献数
19
被引用文献数
10 12

渋ガキ'平核無'を用い, エタノールによる脱渋機作を種々の観点から検討した. 結果は以下のとおりである.1. デシケータ内に果実を入れ, ふたをずらして開口部を設けて35%エタノールまたは5%アセトアルデヒド処理を施したところ, 両処理区とも果実内のアセトアルデヒド含量は4日目まで同じような値を示したにもかかわらず, エタノール処理の方がアセトアルデヒド処理より早く脱渋した。2. 乾熱果または煮沸果を種々の濃度のアセトアルデヒド溶液に2日間さらし, 果肉内のアセトアルデヒド含量と脱渋量の関係式を求めた. これをエタノール処理中の果実に適用すると, アセトアルデヒドの非酵素的作用だけで脱渋するには, 果実内に存在するアセトアルデヒドの量が著しく少なかった.3. エタノール処理の果肉組織の浸透圧と水不溶性物質の保水能は増加する傾向があった. その程度は脱渋速度が大きい処理2~4日で著しかった.4. 煮沸果を90°C下で乾燥すると, 目減りが増加するとともに浸透圧が増加し, 可溶性タンニン含量が減少し, 12時間後にはアセトアルデヒドの発生が認められなくても完全に脱渋した.5. エセホンやIAAを組織切片に与えても脱渋が認められ, IAAをへたに浸潰し放置して置くと果実は完全に脱渋した.以上の実験を踏まえて考察した結果, エタノールによる脱渋は, 処理によって生ずるアセトアルデヒドの非酵素的作用による水溶性タンニンの不溶化によるのみならず, エタノールによって誘導される細胞壁多糖類の分解がタンニン細胞周辺組織の浸透圧の上昇を招き, その結果タンニン細胞中の水が脱水され, 接近したタンニン分子が水素結合や疎水結合により巨大分子となって脱渋するものも相当あると推察された.
著者
村山 徹 長谷川 浩 宮沢 佳恵 武田 容枝 村山 秀樹
出版者
公益社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.57, no.7, pp.314-318, 2010-07-15 (Released:2010-09-01)
参考文献数
28
被引用文献数
3 2

夏秋作における有機および慣行栽培ミニトマトの品質成分の実態を明らかにするため,有機および慣行栽培ミニトマトを各16圃場から試料を得,果実特性とアスコルビン酸,リコペン,β-カロテン,糖類,遊離アミノ酸,クエン酸含量およびエチレン生成量を調査した.有機栽培ミニトマトでは,慣行栽培のものと比較して,果実硬度が小さく,アスコルビン酸とリコペン含量が有意に高かった.また,エチレン生成量が有意に低かった.これらの差違の原因として,実際に流通している有機と慣行栽培ミニトマトには熟度に差がある可能性が推察された.
著者
桜井 直樹 元村 佳恵 寺崎 章二 村山 秀樹
出版者
広島大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2000

振動法の基本である第2共鳴周波数の振動モードが分かり、弾性値と粘性値を計算する理論的背景が証明された。つぎに、レーザードップラー(LDV)の手法で、果実の軟化を弾性値と粘性値から評価するプログラムを作成し、計測の自動化が実現できた。この結果、0.1秒で1個の個体を計測する高速化に取り組むことが可能となった。細胞壁多糖類の分析結果から、果実が軟化するとき果実細胞壁のペクチンの分解が粘性の低下を、キシログルカンの分解が弾性の低下を引き起こしていることが推察された。リンゴ6品種を用い、従来の破壊法とLDV法を比較し、4品種については極めて高い相関があることが分かった。また、臭化メチル処理で内部褐変が起こると、LDVでその欠陥を検出できることが分かった。セイヨウナシは収穫直後から追熟させると、キウイと同じように2段階の軟化を示すことが分かった。セイヨウナシは低温保存すると、最終的には1段階の弾性低下を示すようになる、2週間低温保存した場合最も評価の高い肉質(メルティング)になるが、LDVではその変化を捉えることができなかった。そのため、新しい物理的測定法(AMC法、Acoustic Measurement of Crispness)を考案した(特許出願)。プローブを果肉に貫入させそのときに生じる振動を検出し、フーリエ変換した。AMC法でいわゆるシャキシャキ感を数値化できることが分かった(特許出願)。この手法で、セイヨウナシ、メロンなどの肉質のトロミ感を数値にできることが分かった。次に数値化したAMCのパラメータとLDVの振動スペクトルの対応を、主成分分析及び重回帰で行った。その結果、LDVで得たスペクトルデータから、AMCで得られるシャキシャキ感が推測できることが分かり、LDV法が単に果実の弾性・粘性だけでなく、果実の肉質の精妙な変化も検出できることが分かった。