著者
高橋 永治
出版者
山形大学
雑誌
山形大學紀要. 農學 (ISSN:05134676)
巻号頁・発行日
vol.3, no.3, pp.401-419, 1961-03-28

【摘要】 1959年7月29日,大鳥池の北岸で午前7時と午後6時の2回5メートルの綱のついたプランクトンネットを用いて,50センチメートルと3メートルの深さの層から採集したプランクトンと7月30日午前7時間じ北岸の地点で広口瓶で採水した1.5リットルの水の中のプランクトンを観察した結果及び,マロモナス2種とその他3種を電子顕微鏡で観察した結果を報告する.大鳥池沿岸部のプランクトン種数は,35種と珪藻類で,動物性プランクトン15種,植物性プランクトン20種と珪藻類,その他に昆虫幼虫,ミズダニ1種,線虫類1種が採集された.沿岸部のプランクトン群集の構成は,動物性プランクトンでは,Conochilus unicoruisが優占的に多数であり,Polyarthra trigla, Bosmina longirostris, Holopidium yibberumがそれに次いで多数であった.植物性プランクトンではDinobryon cylindricumが優占種で,次いで珪藻類が多数であった.動物性プランクトンについては,湖心部の表層部のプランクトン組成と類似している.しかし,植物性プランクトンは,総個体数の99%以上もあり,Dinobryon cylindricumは60%以上を占めている.沿岸部プランクトンを10リットルの水に生息する個体数に計算すると,約247,000となる.湖心部の結果より可成り多く,沿岸部の方が湖心部より栄養に富んで生産力が高いと思われる.叉その数は当地方の荒沢ダムの夏期のそれの1/4,鶴岡公園堀の1/10であって,大鳥池は貧栄養的であると云えよう.
著者
羽根田 栄四郎
出版者
山形大学
雑誌
山形大學紀要. 農學 (ISSN:05134676)
巻号頁・発行日
vol.1, no.1, pp.117-127, 1950-12-25

【緒言】 筆者は砂丘地の作物栽培に対する農業気象学的研究を進めつつあるが、本研究は砂丘地の作畦法に就いて研究した結果である。砂丘地は日中地表温が著しく高温となり、夜間は亦甚だしく冷却するので極端な気候を呈し、昼夜の温度差は40度にも達すると言はれて居る。原田氏は4月以後の気温の上昇に伴って地面温度は相当高温となり、7月に於て最高温を示し、60度以上に達することを認め、叉高須氏も8月末に56度を観測して居る程で砂丘地表面近くに沿いては作物の致死温度に達することが多い。一方砂丘地に治ける土壌水湿も作物の生存にとって重要な意義を有することは論をまたない所で、一般に砂は他の土壌に比べて吸湿水、毛管水等は共に少なく、かつ砂粒の大小によって、保水力、毛管作用等が異なり、粒径の小さい程大となることがwollnyや原、吉良氏等によって認められて居る。従って砂丘地の畑地管理に当っては充分地温や土壌水分等の物理的条件を究明して栽培が行われねばならないことは当然である。しかるに地温及土壌水分は作畦法によって影響されるととは前調査によって明かであり、古宇田氏は乾燥地の低畦栽培の合理性を指摘し、叉秋田試験場では大根の低畦栽培は深耕することによって高畦栽培に匹敵する収量を得ることを明かにして居るが、乾燥の激しい当地方の砂丘地に沿いては甘藷、大根等の高畦栽培が行はれて居り、之は耕耘に相当の労力をはらいかつ干害に遇うことがしばしばである。此処に於て筆者は砂丘地微細気象調査の一部として、畑地管理上の見地から畦の高低による地温に就いて、播種、甘藷挿苗期に当る6月初めと干害を被り易い夏期8月の二期に調査し、取り纏め得たものを報告し諸賢の御教示を仰ぐ次第である。
著者
北村 利夫 板村 裕之 福嶋 忠昭
出版者
山形大学
雑誌
山形大學紀要. 農學 (ISSN:05134676)
巻号頁・発行日
vol.11, no.1, pp.201-204, 1990-01-20
被引用文献数
1

【緒言】メロン(Cucumis melo L.)は非常に多形態な種で,多くの変種(variety)に分化しているが,主なものとして次の4種類がある. ①var.reticulatus ②var. cantalupensis ③var. inodorus ④var. makuwa また,① var.reticulatusはいわゆる温室メロンと称するイギリス系ガラス室栽培アミメロンとアメリカ及び中近東系露地栽培のcantaloupeに分けられる.近年メロンの消費の増加,高級品種志向に伴い,これらの変種, 系統間の交雑によるF1品種が続々と誕生しており,現在メロン果実の外観,風味,成熟の進展の様相が品種間で著しく異なるゆえんとなっている.既報において4品種のメロン果実の採取後の成熟・追熟生理を検討し,おのおの特徴のある3つのタイプを示すことを明らかにした.すなわち,'ライフ'では呼吸量及びエチレン発生量の急激な増大(クライマクテリック・ライズ)がみられた.一方,'アールス・フェボリット'系の'ハニーキング'ではクライマクテリック・ライズが起こることなく追熟を完了した.'プリンス'および'エリザベス'では'ライフ'のような明確なクライマクテリック・ライズは起こらないが,呼吸量及びエチレン発生量の多少の増大がみられた.本報では,'クリネット','マドンナ'及び'サンジュエル'の3品種のメロン果実について,収穫後の呼吸量及びエチレン発生量の変化を調査した結果を述べる.
著者
田川 伸一 森田 昌孝 堀口 健一 吉田 宣夫 高橋 敏能
出版者
山形大学
雑誌
山形大學紀要. 農學 (ISSN:05134676)
巻号頁・発行日
vol.17, no.1, pp.1-7, 2014-02

2番草リードカナリーグラス(Phalaris arundinacea L., RCG)を材料とした発酵TMR(Total mixed ration)の発酵品質に及ぼす豆腐粕と製造元の異なる2種類のトウモロコシジスチラーズグレインソリュブルの利用,並びに酵素(商品名:プロセラーゼ10)0.2%添加効果をRCGの混合割合(原物)を45%と65%でパウチ法により検討した。先の報告の1番草RCGを供試したときより2番草RCG発酵TMRの発酵品質のうち,pHは高く乳酸含量は低かった。しかし,酪酸が殆ど検出されなかったためV-スコアとフリーク評点は高かった。また,何れのRCGの混合割合の場合も,酵素添加による発酵品質の改善効果は弱かった。2番草RCGを利用した時の発酵品質の評価が高かった原因に1番草より水分含量が低かったことが考えられた。
著者
飯塚 一郎
出版者
山形大学
雑誌
山形大學紀要. 農學 (ISSN:05134676)
巻号頁・発行日
vol.5, no.4, pp.795-801, 1969-03-20

冬季の温州みかんの落葉防止として葉面散水を行なうため,先ず葉の吸水について水温および界面活性剤添加との関係を調査した.実験結果の要約されたものは次のようである.1.温州みかんの切葉は乾湿いずれも浸水後10分間では急激に吸水を行ない,乾いた葉は湿った葉より急速に吸水を行なった.2.葉の上下面にワゼリンが塗布されたとき,葉の全面よりの吸水が最も高く,下面よりの吸水量は全面よりの吸水量と上面よりのそれの中間に位した.3.O℃~5℃の水温に浸された葉の吸水は殆んど行なわれなかったが,10℃~20℃の水温の吸水はかなり行なわれ,25℃で最高に達し,30℃ではかえって低下した.界面活性剤を添加された水は添加しない水より著しく吸収され,また温度上昇に伴って増加の傾向を示した.4.界面活性剤を添加された水は0.1%の濃度で最も早く吸収され,その吸水量は20℃で浸水後1時間で添加されない水の吸水量の約5倍であった.
著者
尾河 和夫 阿部 幸吉
出版者
山形大学
雑誌
山形大學紀要. 農學 (ISSN:05134676)
巻号頁・発行日
vol.1, no.2, pp.169-180, 1952-01-30

本報告は昭和25年8月、山形県東田川郡常万村に於て、昭和24年度に於ける酪農経営及び豚飼育及び鶏飼育経営の実態を調査しそれをまとめたものである。この調査は昭和25年度科学研究費による。かつ石川農学部長及び山形県知事室調査課の御厚意によることも多く謝意を表する。
著者
後藤 岩三郎
出版者
山形大学
雑誌
山形大學紀要. 農學 (ISSN:05134676)
巻号頁・発行日
vol.1, no.1, pp.55-74, 1950-12-25

前報では主として気泡についての諸観察,研究,被害の発生地域に関する気象上の考察が報告されている。此では浮き上りと苗代の管理方法との関係,気象の影響,及び山形県庄内地方について行はれた調査等を述べるものである。此の研究の大半は,石川農学部長及び山形県知事室調査課の御厚意によって実施出来たものである。研究中懇切な御指導を戴いた佐藤正己教授に深く感謝する。気象学上の諸点については本校羽根田教官に負う所が多い。猶実験は加藤清子,桜田豊両氏の助力によって為された。
著者
上林 美保子 綱島 不二雄
出版者
山形大学
雑誌
山形大學紀要. 農學 (ISSN:05134676)
巻号頁・発行日
vol.12, no.4, pp.465-470, 1997-01-31

【緒言】各種の半矮性遺伝子を有する短稈水稲品種を用いた多肥・密植栽培によって水稲の収量は,飛躍的に増加した.しかし,多肥・密植栽培は各種病害の多発を随伴し,また農薬多用による環境汚染が指摘されてきた.このような趨勢に対して,低投入・環境保全型農業(Low Input Sustainable Agriclulture=LISA)の生産体系の構築の必要性が指摘されている.しかし,このような観点からの農業生産体系の構築に関する実証的研究は極めて少ない.本研究では,LISAの観点からの農業生産体系の構築のための基礎資料を得るため,現在の良質品種の一つササニシキを用い,栽植密度と肥量水準を慣行よりも減少させることによって,水稲個体群の病気,倒伏に対する耐性を高め,しかも収量を慣行より減少させない栽培法の確立ができるかを検討した.
著者
黒田 昭
出版者
山形大学
雑誌
山形大學紀要. 農學 (ISSN:05134676)
巻号頁・発行日
vol.10, no.2, pp.311-343, 1987-01-20

【あとがき】以上の研究によって,土地分級および地域計画の方法についていろいろな点を明らかにすることができた.そしてこの計画が採決され実施に移されることになると次のような問題の解決に当たらねばならないことになる.まず,今までに述べた分析に直接引きつづく課題として畜産物の集荷と資材供給のネット・ワ一ク,加工工場それらを計画管理する畜産基地,林業基地の建設の計画,道路網の計画,用水確保・排水処理などの関連投資計画の諸問題があり,また開発地への入植者の生活・文化・教育環境,集落形成の問題などがある.もう一つの論議を呼びそうな点は,このような開発計画の実現に際しての問題である.それは土地所有,地価上昇,先回り買占め,土地利用と交通輸送網の選定における観光との競合関係などの問題が潜在していることは当地域としても例外ではないからである.これらの問題の解決策としての地域計画方法については今後の課題として行なわなければならない.本研究は昭和54年,55年度文部省科学研究費助成(試験研究,研究代表 東京農工大学 穴瀬 真教授)によって行なわれた「土地分級体系における評価基準の実証的研究」の分担研究として,その一部を発表している.最後に本研究を遂行するに当って,東北農政局北上地域総合開発調査事務所,岩手県企画部,農林部からは各種報告書およびデータの提供を受けた.また,当研究室の鈴木隆技官および卒論専攻生菊池郁聡,下河辺浩弥,渡部靖雄の諸君の協力を得た.ここに記して謝意いたします.
著者
高樹 英明 青葉 高
出版者
山形大学
雑誌
山形大學紀要. 農學 (ISSN:05134676)
巻号頁・発行日
vol.9, no.4, pp.565-572, 1985-01-21

【緒言】チューリップ'GoldenHarvest'は,Multiflowered系統のものを除く他の大多数の品種と同様に,通常1茎に1花しかつけないが,年によって大球では花茎が上部で2~5本に分枝して,それぞれの分校の頂端に花をつける個体がかなり生ずる.この分枝現象は枝咲きといわれ,オランダではみられないが,わが国では問題になっている.枝咲きの発生が夏の涼しいオランダでみられないこと,また,わが国でも発生率が年によりかなり変動することなどから,環境要因とくに夏の高温・多湿が枝咲き発生に大きな影響を及ぼしているのではないかと従来からいわれてきた.著者の1人青葉は,枝咲きの誘起には掘り上げ期までの地温・気温や掘り上げ直後の条件の影響が大きく,貯蔵初期の高温条件がこれらに相加されて枝咲きを誘起するらしいことを前報で示した.本報では,校咲き発生を助長する要因とされている球根の大きいことや球根の高温貯蔵に関して,それらの要因の影響がどのような場合にあらわれやすいのかについて検討した.また,植物生長調節物質と枝咲き発生との関係や球根生産栽培での施肥条件と生産球の枝咲き発生との関係などについても検討した.本報はこれらの検討により'GoldenHarvest'の枝咲き発生に影響を及ぼす要因の種類とそれらの作用様式とを明らかにしようとしたものである.
著者
堀口 健一 松田 朗海 高橋 敏能 萱場 猛夫 角田 憲一 安藤 豊 後藤 正和
出版者
山形大学
雑誌
山形大學紀要. 農學 (ISSN:05134676)
巻号頁・発行日
vol.15, no.3, pp.111-117, 2008-02-15

Summary : The objectives of this study were to investigate the fermentation quality characteristics of Chineria-Mama whole crop rice silage and to examine the effect of addition of fermented juice of silage extract (FJSE) and fermented juice of epiphytic lactic acid bacteria (FJLB) on the fermentation quality. Rice plant (Oryza sativa L. line, Chineria-Mama) was cultivated by using conventional methods and was harvested on September 8 (Sept-cutting) and October 6 (Oct-cutting), 2006. The rice plants were cut with a cutter blower into 1-3 cm pieces and were crammed into plastic pouches without (control) or with 1 % of FJSE (FJSE treatment) or FJLB (FJLB treatment) in the fresh matter. All silages were maintained indoors and opened after 1 month. FJSE and FJLB were prepared according to the following method. 100 g of the cut fresh Chineria-Mama silage and Chineria-Mama rice plant were macerated with 500 mL of water and 10 g granulated sugar was added. The mixture was incubated anaerobically at room temperature for 2 days, and then filtered through quadruple layers of cheesecloth. The filtrate was collected in a plastic bucket and blended with 10 g granulated sugar. There was no remarkable difference in crude protein, ether extracts and neutral detergent fiber content between the Sept-cutting rice plant and the Oct-cutting rice plant. The non fibrous carbohydrates content of Chineria-Mama rice plant was 33.1% Sept-cutting and 33.6% Oct-cutting in the dry matter. The pH values for silage of control, FJSE treatment and FJLB treatment were the range of 3.6-3.8. Moisture contents for all silages of Sept-cutting were higher than those of Oct-cutting (P<0.01). The lactic acid contents in the fresh matter of all silages were more than 1 %, and that of FJSE treatment silage was lowest (P<0.05) at Sept-cutting and Oct-cutting. Propionic acid was observed only in FLSE treatment silage (P<0.01). Butyric acid contents were low in the silage of control, FJSE treatment and FJLB treatment. There was no large difference in volatile basic nitrogen content among three treatment silages. The present results suggest that the fermentation quality of Chineria-Mama whole crop rice silage is good, and the addition of FJSE and FJLB prepared in this experiment can not improve on the lactic fermentation of silage. Key Words : Chineria-Mama, fermented juice of epiphytic lactic acid bacteria, fermented juice of silage extract, fermentation quality, whole crop rice silage キーワード:イネ「チネリア・ママ」,サイレージ抽出培養液,原材料由来乳酸菌培養液,発酵品質,イネホールクロップサイレージ