著者
板村 裕之
出版者
園藝學會
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.55, no.1, pp.89-98, 1986
被引用文献数
19 20

1. 発育段階の異なるカキ'平核無'果実を用いて,果実の生理活性の指標となる呼吸量, エチレン生成量を,採取後無処理のものと, 30%アルコール脱渋処理をしたものの2区について測定し, あわせて果実のヘタ脱落や軟化についても観察した.<br>2. 果実はその最大横径の推移からみて, 6月上旬から8月末ごろまでがステージI, 8月末ごろから9月20日ごろまでがステージII, 9月20日ごろから11月初めまでがステージIII, それ以降がステージIVの各発育段階に分けられた. 樹上における果実の果肉硬度は, ステージIIまで漸減した後, ステージIII以降やや低下速度が速くなった. ステージIV以降の果実では樹上で急速に軟化が進行し, 12月初めには熟柿の状態となった. 9月20日ごろより果実の着色が始まり, その後急速に着色が進行した.<br>3. 採取後, 20°C定温室にて果実を貯蔵したとき, 未熟果は完熟果に比べて呼吸量が高く推移し, エチレン生成のピークが早く現れると同時に, そのピーク値もかなり高い値を示した. それと平行して, ヘタの脱落が認められ, 果実の軟化も急速に進行した.<br>4. 採取後, 果実に30%アルコール蒸気による脱渋処理を行うと, 無処理の果実に比べて呼吸量が高く推移するとともに, 処理後2~3日でエチレン生成のピークが形成された. それと平行して軟化速度も早くなり, 未熟果においてはエチレン生成のピーク付近において, 果実の急速な軟化とヘタの脱落が認められた. このことより, アルコール処理は, 採取後無処理の果実に起こる種々の生理的変化を促進する役割を果たすと思われた.<br>5. 採取後, 果実に30%アルコール処理を行うことによって, 熟度の異なる果実の呼吸活性やエチレン生成能 (生理活性) と, 果実の生理的変化を調査した. その結果, ステージIIの未熟果は生理活性が高く, アルコール処理によってヘタの脱落と急速な果実の軟化が起こった. 着色開始期のステージIIからステージIIIにかけての果実 (9月中旬ごろ) は, 個々の果実間で生理活性が大きく異なり, 果実の軟化やヘタの脱落の有無などにもかなり大きな変異が認められた. ステージIIIに入った9月下旬ごろより急速に果実の生理活性が低下し, それと平行してヘタの脱落が認められなくなり, 果実の軟化もかなり緩慢となった. その後, 熟度が進むに従って果実の生理活性が低下し, アルコール脱渋後の貯蔵性は完熟期において最高となった. 落葉期以後, 樹上で果実が軟化するに従って果実の貯蔵性も低下した.<br>6. アルコール脱渋後, 急速に軟化する果実が混入する危険性がなくなる時期は, 山形県庄内地方においては満開後120日ごろの10月10日ごろであると思われた.
著者
北村 利夫 板村 裕之 福嶋 忠昭
出版者
山形大学
雑誌
山形大學紀要. 農學 (ISSN:05134676)
巻号頁・発行日
vol.11, no.1, pp.201-204, 1990-01-20
被引用文献数
1

【緒言】メロン(Cucumis melo L.)は非常に多形態な種で,多くの変種(variety)に分化しているが,主なものとして次の4種類がある. ①var.reticulatus ②var. cantalupensis ③var. inodorus ④var. makuwa また,① var.reticulatusはいわゆる温室メロンと称するイギリス系ガラス室栽培アミメロンとアメリカ及び中近東系露地栽培のcantaloupeに分けられる.近年メロンの消費の増加,高級品種志向に伴い,これらの変種, 系統間の交雑によるF1品種が続々と誕生しており,現在メロン果実の外観,風味,成熟の進展の様相が品種間で著しく異なるゆえんとなっている.既報において4品種のメロン果実の採取後の成熟・追熟生理を検討し,おのおの特徴のある3つのタイプを示すことを明らかにした.すなわち,'ライフ'では呼吸量及びエチレン発生量の急激な増大(クライマクテリック・ライズ)がみられた.一方,'アールス・フェボリット'系の'ハニーキング'ではクライマクテリック・ライズが起こることなく追熟を完了した.'プリンス'および'エリザベス'では'ライフ'のような明確なクライマクテリック・ライズは起こらないが,呼吸量及びエチレン発生量の多少の増大がみられた.本報では,'クリネット','マドンナ'及び'サンジュエル'の3品種のメロン果実について,収穫後の呼吸量及びエチレン発生量の変化を調査した結果を述べる.
著者
鶴永 陽子 松本 敏一 倉橋 孝夫 持田 圭介 板村 裕之
出版者
園芸学会
雑誌
園芸学研究 (ISSN:13472658)
巻号頁・発行日
vol.5, no.3, pp.321-324, 2006-09-15
参考文献数
17
被引用文献数
4 6

14年生カキ&lsquo;西条&rsquo;を用い,成育中の柿葉におけるアスコルビン酸,イソケルシトリン,アストラガリン,ポリフェノール量含量の推移を検討した.その結果,アスコルビン酸とポリフェノールは6月から7月の含量がもっとも高く,それぞれ3700 mg/100 gDW,16100 mg/100 gDW(アストラガリン相当量)であった.また,イソケルシトリン,アストラガリン含量は5月葉が最も高く,それぞれ480, 520 mg/100 gDWで,その後新梢長の急激な伸長の伴い6月には激減することが明らかとなった.<br>
著者
鶴永 陽子 松本 敏一 倉橋 孝夫 持田 圭介 板村 裕之
出版者
一般社団法人 園芸学会
雑誌
園芸学研究 (ISSN:13472658)
巻号頁・発行日
vol.5, no.3, pp.321-324, 2006 (Released:2006-09-25)
参考文献数
17
被引用文献数
3 6

14年生カキ‘西条’を用い,成育中の柿葉におけるアスコルビン酸,イソケルシトリン,アストラガリン,ポリフェノール量含量の推移を検討した.その結果,アスコルビン酸とポリフェノールは6月から7月の含量がもっとも高く,それぞれ3700 mg/100 gDW,16100 mg/100 gDW(アストラガリン相当量)であった.また,イソケルシトリン,アストラガリン含量は5月葉が最も高く,それぞれ480, 520 mg/100 gDWで,その後新梢長の急激な伸長の伴い6月には激減することが明らかとなった.
著者
江角 智也 多田 康浩 吉林 隆太 末廣 優加 板村 裕之 白澤 健太
出版者
島根大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2014-04-01

サクラは散房花序から散形花序の形態多様性を示す.その違いを遺伝子レベルで特徴付けて解明することを目指し,フロリゲン・アンチフロリゲン遺伝子を解析の糸口として花序の形態形成の分子メカニズムを探った.サクラ140品種の花序形態を調査し,花序軸伸長と花数との関係,花序軸伸長と開花の早晩との関係を見出した.次に,サクラ7品種の花芽分化を走査型電子顕微鏡で比較観察し,花序発達の初期段階の小花原基誘導の違いについて明らかにした.花序組織におけるFT相同遺伝子,TFL1相同遺伝子,およびCEN相同遺伝子などの遺伝子発現について調査したが,それら遺伝子発現と花序形態の違いとに関係性を見出すことは出来なかった.
著者
倉橋 孝夫 松本 敏一 板村 裕之
出版者
園藝學會
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.74, no.1, pp.63-67, 2005-01-15
参考文献数
15
被引用文献数
5 13

収穫初期から終期のカキ&lsquo;西条&rsquo;の果実を用いて, 収穫時期別の軟化発生程度と1-MCPおよびエチレン吸収剤を用いた脱渋中の軟化防止と脱渋後の日持ち性向上効果を検討した. その結果, 無処理区の脱渋完了時の軟化発生は, 収穫初期の10月1日収穫果で78.1%と最も高く, 収穫時期が遅れるのに伴って徐々に低下し, 収穫盛期の10月22日と29日収穫果ではほとんど認められなかったが, 収穫終期の収穫果では50.0%と再び増加した. 脱渋時のドライアイス封入48時間後の袋内エチレン濃度は, 収穫初期の10月1日収穫果が最も高く, 収穫時期が遅くなるにつれて低下した. また, 1-MCP処理により, 収穫期前半の脱渋処理解除直後の軟化発生は抑えられたが, 収穫終期の抑制効果は低かった. 収穫盛期の日持ち期間は1-MCP処理により無処理区と比較して約6日間延長できた. さらに, エチレン吸収剤処理により, 収穫期前半の脱渋処理解除直後の果実軟化は抑えることができたが, 脱渋後の日持ち期間は延長できなかった.
著者
倉橋 孝夫 松本 敏一 板村 裕之
出版者
園芸学会
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.74, no.1, pp.63-67, 2005-01-15
被引用文献数
5 13

収穫初期から終期のカキ'西条'の果実を用いて, 収穫時期別の軟化発生程度と1-MCPおよびエチレン吸収剤を用いた脱渋中の軟化防止と脱渋後の日持ち性向上効果を検討した. その結果, 無処理区の脱渋完了時の軟化発生は, 収穫初期の10月1日収穫果で78.1%と最も高く, 収穫時期が遅れるのに伴って徐々に低下し, 収穫盛期の10月22日と29日収穫果ではほとんど認められなかったが, 収穫終期の収穫果では50.0%と再び増加した. 脱渋時のドライアイス封入48時間後の袋内エチレン濃度は, 収穫初期の10月1日収穫果が最も高く, 収穫時期が遅くなるにつれて低下した. また, 1-MCP処理により, 収穫期前半の脱渋処理解除直後の軟化発生は抑えられたが, 収穫終期の抑制効果は低かった. 収穫盛期の日持ち期間は1-MCP処理により無処理区と比較して約6日間延長できた. さらに, エチレン吸収剤処理により, 収穫期前半の脱渋処理解除直後の果実軟化は抑えることができたが, 脱渋後の日持ち期間は延長できなかった.
著者
板村 裕之 福嶋 忠昭 北村 利夫 原田 久 平 智 高橋 芳浩
出版者
園藝學會
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.62, no.4, pp.867-875, 1994
被引用文献数
3 2

カキ平核無の果実の脱渋後の軟化と樹体条件, とくに葉との関連について調べた.<BR>1.樹勢が弱く落葉時期が早い樹と, 9月以降にビニール被覆を行って, 落葉時期を遅らせた樹と生育中庸な対照区の樹からそれぞれ果実を採取し, アルコール処理を行った後の20°C条件下における果実の軟化を比較した. その結果, 早期落葉樹からの果実は対照区の果実に比べて, 軟化が早く, 逆に落葉が遅れた区の果実は軟化するのが遅かった.<BR>2.7月21日に摘葉処理を行い, 9月11日, 9月30日, ならびに10月15日にそれぞれ果実を採取して, アルコール脱渋後の軟化を調べた. いずれの採取時期の果実でも, 摘葉処理は脱渋後の果実のエチレン生成を促進した. さらに, 9月30日および10月15日採取の果実では摘葉処理区の果実の軟化は無処理区(対照区) に比べて7~10日促進された.<BR>3.9月7日に50ppm GA散布処理を行い, 9月15日, 9月25日, ならびに10月12日に果実を採取して, 脱渋処理を行った. いずれの採取時期の果実でも, 脱渋後の果実のエチレン生成量はGA処理の影響をまったく受けなかった. しかし, 10月12日採取果ではGA処理は, 明らかに果実の軟化を抑制した.<BR>4.10月20日に摘葉処理を行った区と, 摘葉処理の4日前に50ppm GAを前処理した区の果実を, 11月2日に採取して脱渋処理した. 脱渋後の果実のエチレン生成量は, 摘葉処理やGA前処理の影響をほとんど受けなかったものの, 摘葉処理区は果実の軟化を促進した. また, この軟化促進効果はGA前処理によってほぼ完全に打ち消された.<BR>5.7月21日に摘葉した区と対照区の果実を11月15日に採取し, 内生のGA様活性を比較した. 対照区では, 比較的高いGA様活性が認められたのに対して, 摘葉区では抑制分画は認められたが, GA様活性はほとんど認められなかった.<BR>以上の結果から, 葉が樹体に着生していることが,採取脱渋後の果実のエチレン生成を抑制する効果があるものと考えられた. また, 葉のエチレン生成抑制効果はGA以外のものによっていると思われた. さらに,成熟果においてはエチレン生成から軟化にいたる一連の反応のどこかを葉由来のGAが阻害している可能性が示唆された.