著者
福本 淳一 小松 英二 木下 哲男
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. AI, 人工知能と知識処理
巻号頁・発行日
vol.95, no.76, pp.23-28, 1995-05-26
被引用文献数
1

従来の自然言語処理では,文法,辞書,語用論などをはじめとする様々な知識が利用されてきた.自然言語処理の頑健性を向上させるためには,これらの知識を用いた種々の自然言語処理機能が協調的に動作する必要がある.このような協調的システムのモデルとしてマルチエージェントモデルがある.我々は,このマルチエージェントモデルに基づいて,従来の自然言語処理システムに埋め込まれていた自然言語処理モジュール群をエージェントとして形式化し,これらエージェントの協調的動作によって頑健で効率的な自然言語処理システムについて検討を進めている.本稿では,まず,従来のシーケンシャルな自然言語処理における問題点についていくつかの例をあげ,それらの問題点を解決するための基本的な処理の枠組みについて検討する.次に,種々の知識の協調的活用という視点から頑健な自然言語処理の基本的枠組について検討し,マルチエージェントモデルに基づく自然言語処理システムのアーキテクチャについて考察する.
著者
福本 文代 佐野 洋 斎藤 葉子 福本 淳一
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.33, no.10, pp.1211-1223, 1992-10-15
参考文献数
20
被引用文献数
9

一般に 語の係り受け関係を解析する依存文法は 文を構成する要素間の2項関係を重視しているこのため 従来から提案されている手法の多くは 係り受け関係を判定するための言語的な制約として 格情報あるいは意味属性などを中心とした任意の2要素間の局所的な情報を用いている.しかしこれら局所的な情報だけでは 文全体の構造を決定するための制約として不十分であり 結果的に 可能な解釈として不自然なものまで得られてしまう.そこで本文法では言語的な制約に 係り受けの強度に基づく制約を課した.この制約は 文節とアークに付与された係り受けの強度を用いて2文節間の係り受け関係の有無を判定するものである.ここで 文筋に関する係り受けの強度とは その文節が修飾することができる相手の文節の種類 およびその文節が修飾を受けることができる相手の文節の種類を分類し それぞれ係り 受けの強さの度合いとして表したものであるまた アークに関する係り受けの強度とは 文節同士の結びつきの強さの度合いを示したもので これを用いて依存構造に現れるアーク間の制約を表している.係り受け関係の判定に意味素性を用いた文法と この文法に係り受けの強度に基づく制約を加えた文法とを作成し 文解析実験をった結果 解の数はこの制約を加えることで 約6割に抑えられていることがわかった.本稿ではこの係り受けの強度を用いた文法の記述について述べる.