著者
秋山 雄次 鈴木 輝彦 田中 政彦 小林 厚生 片桐 敏郎 石橋 俊子 北川 秀樹 今井 史彦 原 清 土肥 豊
出版者
一般社団法人 日本アレルギー学会
雑誌
アレルギー
巻号頁・発行日
vol.39, no.6, pp.542-547, 1990

混合性結合組織病(MCTD)として経過観察中に強皮症(PSS), 全身性エリテマトーデス(SLE), 多発性節炎(PM), シェーグレン症候群(SjS)の重複症候群に進展した1例を経験したので報告する.症例は42歳の女性で18歳より日光過敏症があった.昭和61年レノイー現象, swollen hands, 関節痛が出現し, 抗RNP抗体81920倍, 抗Sm抗体陰性, 血清CPK値上昇を認めたため, MCTDとして経過観察を開始, 昭和63年多関節痛, 節痛の増強を主訴に入院.理学所見では開口制限, 皮膚硬化, 筋力低下, ラ音を認め, 検査所見では節原性酵素の上昇, LE細胞, 抗核抗体, 抗DNA抗体, 抗ENA抗体, 抗SS-A抗体を認めた.又, 皮膚生検でPSSに一致した組織所見, 節電図で節原性変化, 口唇生検で慢性唾液腺炎像, 腎生検にてメサンギウムの増殖性変化を認めた.MCTDの概念, 殊に重複症候群との差異は明確でなく, さらなる症例の蓄積・検討が必要である.MCTDの経過中にPSS, SLE, PM, SjSへ移行した報告は見当たらず, MCTDの研究上, 貴重な症例であると思われた.
著者
和田 琢 秋山 雄次 横田 和浩 佐藤 浩二郎 舟久保 ゆう 三村 俊英
出版者
日本臨床免疫学会
雑誌
日本臨床免疫学会会誌 (ISSN:09114300)
巻号頁・発行日
vol.35, no.5, pp.433-438, 2012 (Released:2012-10-31)
参考文献数
22
被引用文献数
6 28

アバタセプト(ABT)を投与後に肺間質影の増悪がみられた関節リウマチ(RA)の1例について報告する.55歳時にRAおよび間質性肺炎を発症した.間質性肺炎は副腎皮質ステロイド大量療法で改善した.RAは多種の疾患修飾性抗リウマチ薬およびインフリキシマブに対して抵抗性であった.タクロリムス(TAC)が有効であったが難治性の掻痒感と下痢のため中止となった.2ヶ月後,関節炎が増悪したためABTの国内第III相試験に参加した.ABT投与2日目から白色痰が出現.痰培養は陰性であり投与13日後に胸部CTを施行した.2ヶ月前に比して間質影の増悪がみられたため,臨床試験は中止された.関節炎に対しABT投与27日後にプレドニゾロンを2 mg/日から10 mg/日に増量した.ABT投与44日後に胸部CTを再検した結果,間質影は改善傾向を示した.本例の発症機序については,ABTによる間質性肺炎の増悪以外に,TAC中止による間質性肺炎の増悪,RA増悪による間質性肺炎の悪化,ウイルス感染の関与なども考えられた.新規抗リウマチ生物学的製剤であるABT投与後に間質性肺炎が増悪した症例は未だ報告されておらず,これが最初の症例報告である.ABTと間質性肺炎増悪の因果関係は不明であり,このような症例の蓄積が必要であると考える.
著者
大野 修嗣 秋山 雄次
出版者
一般社団法人 日本東洋医学会
雑誌
日本東洋医学雑誌 (ISSN:02874857)
巻号頁・発行日
vol.64, no.6, pp.319-325, 2013 (Released:2014-05-16)
参考文献数
13

本研究の目的は関節リウマチ(RA)に対する防已黄耆湯とメソトレキサート(MTX)の併用効果と経済的有用性を3年間の後ろ向き検討で明らかにすることである。2006年5月から2011年11月に治療した症例で,1987年のアメリカリウマチ学会(ACR)分類基準で診断された症例を対象とした。抽出された症例は126例であり,その中で3年間継続投与できたMTX-防已黄耆湯併用群(併用群)45例とMTX 単独群(非併用群)48例を比較検討した。併用群は非併用群に比較して低疾患活動性達成率が有意(P=0.0372)に高く,また寛解率も有意(P=0.0093)に優れていた。3年後の活動性の変化も併用群で有意(P=0.0050)に優れていた。3年間の期間中に他の疾患修飾性抗リウマチ薬(DMARD)が追加された症例は併用群でより少なく,1人当たりの薬剤費は¥2,145,470であり,非併用群では¥2,301,690であった。従って,防已黄耆湯を併用することによって1人当たり¥156,220の節約となった。
著者
大野 修嗣 鈴木 輝彦 原 清 今井 史彦 田中 政彦 北川 秀樹 片桐 敏郎 小林 厚生 秋山 雄次 土肥 豊
出版者
一般社団法人 日本アレルギー学会
雑誌
アレルギー
巻号頁・発行日
vol.39, no.8, pp.701-707, 1990

症例は68歳の男性, 昭和61年10月気管支喘息と診断され, 昭和63年7月よりプレドニソロン10mg/dayの内服を開始.同年9月5日より5mg/dayに減量された.同年9月26日下肢の脱力感出現, 2日後には対麻痺にて歩行不能となった.症状発現後6日目に入院.入院時, 記銘力低下.見当識障害・項部硬直・対麻痺(いずれの筋もMMT2以下).軽度の線維束攣縮・感覚障害・直腸膀胱障害を認めた.白血球数24580/mm^3・好酸球数13760/mm^3・ESR31mm/hr・IgE1200IU/ml・骨髄像にて好酸球19.9%・脳脊髄液中好酸球10%.心電図でV_1V_2のr消失, ミエログラヒフィー, 同部のMRIにて脊髄前部に索状の腫瘤陰影が認められた.腹部単純X線では陽管の麻痺が認められた.プレドニソロン60mg/dayより投与開始, 臨床症状・好酸球の速やかな改善とMRI上の腫瘤陰影の消失が認められた.すなわち, 本症例のごとき重篤な症例に対しても, 早期のステロイド剤大量投与の有効性が示唆された.また, 好酸球性肉芽腫と考え得る本症例の髄腔内の肉芽腫様病変がアレルギー性肉芽腫性血管炎(AGA)のある種の神経症状の原因として示唆に富むものと考えられた.