著者
金原 清之
出版者
公益財団法人大原記念労働科学研究所
雑誌
労働科学 (ISSN:0022443X)
巻号頁・発行日
vol.95, no.5-6, pp.150-162, 2019 (Released:2021-10-10)
参考文献数
35

奈良・東大寺の廬舎那仏像(いわゆる奈良・大仏)は,鋳了後,5か年を要して金メッキが施された。このメッキ法は,金アマルガムを鋳造像の表面に塗り,これを加熱して水銀を蒸発させ,表面に金を残す「アマルガム法」であった。このとき蒸発させた水銀蒸気により,多数の職人が水銀中毒にり患したと言われている。しかしながら,中毒が発生したとする根拠は明らかにされていない。そこで,本報では,金メッキ作業従事者の水銀中毒発生の可能性をリスクアセスメントにおけるリスク評価の方法を用いて検討した。その結果,作業は危険な状況で,多数の作業者が中毒したと判断された。
著者
菅原 清康
出版者
日本雑草学会
雑誌
雑草研究 (ISSN:0372798X)
巻号頁・発行日
vol.23, no.2, pp.79-85, 1978-08-25 (Released:2009-12-17)
参考文献数
17
被引用文献数
1

1) 本研究は比較的古い火山灰黒ボク土壌地帯で, 原野を開墾した畑地に対し耕うんや土壌改良資材の投入によって熟畑化する過程で生起する土壌の化学的性質の変化と, これに伴う雑草植生変化との関係を究明しようとしたものである。2) 土壌改良資材を全く使用しない無施用区では, 土壌の化学的性質は15年後も開墾当初とさほど変らず, 開墾5年後ごろまで草種数が多少増加したが, 以後は変らず, 草種は山野草が主体をなした。3) 少量混用区では, 開墾2年後ごろまで山野草, 以後は山野草と畑地雑草の混生が続き, 草種数は10年後まで, また個体数および草重は8年後まで増加した。4) 多量混用区では, 開墾1年後は山野草, 2~6年後は山野草と畑地雑草の混生, 以後は畑地雑草に転換し, 草種数, 個体数, ならびに草重はそれぞれ少→多→中といった傾向を示した。5) 3試験区を通じ全般的にみると, 熟畑化過程における雑草植生の変遷は, 山野草主体→山野草+畑地雑草→畑地雑草の経過をたどり, これは原野状態の雑草植生→未熟畑状態の雑草植生→熟畑状態の雑草植生とみることができる。6) 山野草の雑草植生から未熟畑状態の雑草植生に転換する土壌の化学的性質の段階は, おおむね土壌pH (KCl) 4.40, 置換酸度 (y1) 10.0, ならびに石灰飽和度20%, また熟畑状態の植生にはそれぞれ5.00, 1.0, ならび50%を境点として転換するようである。7) 雑草植生を転換させうる土壌の化学的性質の境点が究明されれば, これを指標として利用することができ, 営農上極めて有利である。
著者
宇次原 清尚 加藤 克彦 小枝 剛
出版者
岐阜県農業技術研究所
雑誌
岐阜県農業技術研究所研究報告 (ISSN:13468456)
巻号頁・発行日
no.3, pp.1-8, 2003-03

1992年から1998年にかけて、農業技術研究所で育成した8系統から、雑種第1代の7品種と固定1品種を「トゥインクル」シリーズとして育成した。「トゥインクルスノー」は純白で、花底が緑の品種で唯一固定種である。「トゥインクルホワイト」「トゥインクルパープル」「トゥインクルピンク」は単色で花底は赤黒、花径はやや大きい最も開花の早い品種である。「トゥインクルスカイ」「トゥインクルチェリー」はかすりの紫とかすりのピンクの品種で、花色や切り花形質が特に優れていたので、この2品種を品種登録出願した。「トゥインクルマリン」「トゥインクルピーチ」はバイカラーの紫とバイカラーのピンクの品種で草丈が良く伸びる品種である。「トゥインクルマリン」は固定種のバイカラーパープルとバイカラーピンクの交雑によるF1品種で、他の6品種は「トゥインクルスノー」を母親にして、固定系統を交雑したF1品種である。育成した品種は、いずれも枝数が多く、極小輪の花が多数着く、ボリュームの出やすい極早生品種である。
著者
田畑 泉 前田 顕 相原 清乃 街 勝憲 東郷 将成 吉岡 路 恵土 孝吉
出版者
日本武道学会
雑誌
武道学研究 (ISSN:02879700)
巻号頁・発行日
vol.54, no.1, pp.1-13, 2021 (Released:2021-10-27)
参考文献数
36

The effects of high-intensity intermittent training incorporating ʻkakari-geiko' (HIITK) on the maximal oxygen uptake of male and female university kendo players were observed. The HIITK consisted of eight sets of 20-sec maximal exercise incorporating Tabata-style kakari-geiko (continuous attack practice) with a 10-sec rest between the sets. In Experiment 1, seven male kendo players performed the HIITK 3×/week for 6 weeks, and five other male kendo players on the same kendo team served as the control group not participating in the HIITK. The maximal oxygen uptake was measured during treadmill running before and after the training. For Experiment 2, the maximal oxygen uptake of 13 female kendo players was measured during treadmill running before and after 11 weeks of the HIITK performed 3×/week. In Experiment 1, the training group's maximal oxygen uptake was significantly increased (pre: 50.9±8.4 ml/kg/min, post: 54.1±8.0 ml/kg/min, p<0.05), whereas no change was observed in the control group (pre: 51.8±3.9 ml/kg/min, post: 52.6±3.6 ml/kg/min). In Experiment 2, the maximal oxygen uptake of the female kendo players was significantly increased after the training (pre: 42.1±2.9 ml/kg/min, post: 48.3±2.2 ml/kg/min, p<0.001). These results demonstrated that the HIITK improved the aerobic fitness of both male and female university kendo players.
著者
宮崎 和夫 原 清治
出版者
神戸親和女子大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1997

この研究の主な目的は、阪神・淡路大震災で避難所になった学校で(1)校長や教員がどのように避難所の運営に当たったか(2)教員・避難民・行政間のトラブルや連絡調整などの諸問題(3)避難所内における教員の仕事と授業などの教育活動との両立の諸問題等を実証的に明らかにすることである。研究の方法として(1)質問紙法による大量調査と(2)事例研究の2つの方法を採った。(1) 質問紙法では、阪神・淡路大震災で避難所になった285校の全教員約8,200人を調査対象とし、3,221名を抽出し(39.0%)質問紙郵送法で調査した。有効回答者数は904名(28.3%)であった。調査結果の主な点は、(1) 地震当日、学校へ出勤できた教員は49.9%、その交通手段はマイカー56.2%、自転車16.3%、徒歩13.7%、自動二輪12.2%。そして26.1%の教員が「勤務校にこだわらず、自宅近くの学校へ出勤した方がよい」としている。(2) 授業の再開は地震後2週間で63.3%、4週間後には94.3%と比較的速い立ち直りを示している。(3) 児童・生徒への特別な配慮では、「精神的支援」がトップで42.7%、次いで「学習の遅れ」が20.2%、生徒指導が13.7%の順。これらの数値は8ヶ月以上を経過しても減少せず、地震による学習の遅れがなかなか挽回できないこと、避難所暮らしなどで子供たちの生活が安定しないことを示している。(4) 避難所の運営における教員の主な仕事は、「来訪者や電話の取り次ぎ」16.9%、「救援物資の仕訳や保管」16.5%、「各種情報の収集と伝達」14.5%など。(5) つらいことは、「トラブルの仲裁」で38.5%、(6) 教員が感じたストレスの主な原因は「上司との人間関係」81.2%、「自分や家族の被災問題」55.7%、「授業や学習の遅れ」41.3%、「避難してきた人たちとのトラブル」36.8%、「生徒指導」33.9%となっており、教員は自分自身も被災者でありながら、授業の遅れを取り戻さなければと責任を感じる教育者であり、さらにまた避難所の運営者でもあるという三重の役割を課せられた苦悩の状況が出ている。(2) 事例研究では、神戸市立神戸商業高校を抽出し、面接法で調査取材し、また報告書や多くの記録や文書を提出いただいた。それらをもとに教員や避難民、生徒の状況と声が取材できた。避難民が生活している講堂での卒業式や入学式、生徒のボランティア活動、教師は遺体の収容や管理、水が出ず数百人の溜った糞尿の処理などに追われ、一方では24時間体制で行政と避難民の種々のトラブルの仲裁に苦悩する教職員の姿が浮き彫りにされた。
著者
本 秀紀 愛敬 浩二 森 英樹 小澤 隆一 植松 健一 村田 尚紀 木下 智史 中里見 博 小林 武 上脇 博之 奥野 恒久 近藤 真 植村 勝慶 倉持 孝司 小松 浩 岡田 章宏 足立 英郎 塚田 哲之 大河内 美紀 岡本 篤尚 前原 清隆 中富 公一 彼谷 環 清田 雄治 丹羽 徹 伊藤 雅康 高橋 利安 川畑 博昭
出版者
名古屋大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2009

比較憲法研究・憲法理論研究を通じて、(1)先進諸国が「ポスト・デモクラシー」という問題状況の中でさまざまな問題を抱えていること、(2)各国の政治状況・憲法制度の差異等が原因となって、その問題の現れ方には多様性があること、の2点が確認された。そして、「ポスト・デモクラシー」の状況の下で国内・国際の両面で進行する「格差社会」化の問題は、今日の憲法制度・憲法理論において有力な地位を占める「法的立憲主義Liberal Democracy」の考え方では、適切・正当な対応をすることが困難であることを明らかにした。以上の検討を踏まえて、民主主義をシリアスに受け止める憲法理論の構築の必要性が確認された一方、「政治的公共圏」論を抽象論としてではなく、(日本を含めた)実証的な比較憲法研究との関連において、その意義と問題点を検討するための理論的条件を整備した。
著者
服部 靜夫 中原 清士
出版者
公益社団法人 日本植物学会
雑誌
植物学雑誌 (ISSN:0006808X)
巻号頁・発行日
vol.61, no.717-718, pp.37-38, 1948 (Released:2007-06-18)
被引用文献数
2 2

On the trnnks of pine trees, Pinus densiflora and P. Thunbergii, there are found somewhat globular, large wooden protuberances, the formation of which is caused by the infection of a pathogenous fungus Cronartium quercuum Miyabe. During a relatively short winter period, from the middle of January to the beginning of February in Middle Japan, pale yellow, sweet watery drops are exudated from the cracks of the protuberances. This phenomenon was from an old time known and named“pine honey”by natives. The yellow colour is that of minute spermatia of the fungus, which are formed just at the exudation of sugary liquid. We have been studyiug this curious phenomenon, and found that the sweetness of the exadate is caused by two sugars, namely d-fructose and d-glucose, the amount of the former being 3.3 times that of the latter.The absolute amount of the sugars has been estimated to be about 3.7%, though it would vary according to the duration the liquid experiences after the exudation, that is to say, to the possible evaporation, which in turn varies according to the activity of the plant. That the saccharose, as is the case with sugar maple, does not occur here, together with the fact that the fructose is the leading sugar, is noteworthy.
著者
河口 勝憲 市原 清志
出版者
一般社団法人 日本臨床衛生検査技師会
雑誌
医学検査 (ISSN:09158669)
巻号頁・発行日
vol.64, no.2, pp.143-154, 2015-03-25 (Released:2015-05-10)
参考文献数
17

臨床検査データは臨床の現場で病気の診断,治療経過のモニター,予後判定に利用される。しかし,病気以前に患者の身体的特性や採血条件で測定値が変化したり,測定技術上の問題で測定値が動いた可能性を常に念頭に置く必要がある。測定値が変化する原因を分類すると,病態変動,生理的変動,測定技術変動に分けて考えることができる。生理的変動は,さらに個人の年齢,性,環境,生活習慣,遺伝的因子などに左右される個体間変動と,同じ個体内でも検体採取前の体位や活動度,採血時間などで変化する個体内変動に分けてとらえることができる。本稿では個体間変動として年齢,性差,過食・肥満,喫煙習慣,飲酒習慣を,個体内変動として体位,運動の影響,日内リズム,喫煙の短期的影響,飲酒の短期的影響について変動機序とその影響を受けやすい検査項目を系統的に整理して記載する。検査データを正しく判定するには,これらさまざまな生理的変動を熟知しておくことが重要である。
著者
明間 立雄 藤原 清悦 黒坂 光寿 舩橋 利也
出版者
聖マリアンナ医科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2014-04-01

ラットで受動的回避学習行い、ミクログリア特異的な阻害薬、ミノサイクリンを投与した。ミノサイクリンを投与したラットは嫌な記憶を早く忘れた。つまり、ミノサイクリン投与によりミクログリアの作用が弱まった結果、嫌な記憶の固定や再生が抑制されたと考えた。学習と関係のあるAMPA受容体のサブユニットを調べた結果、発現量にミノサイクリン投与による変化は認められなかった。しかし、リン酸化は減少する傾向が認められたことからPKAが関与する可能性が示唆された。マウスの受動的回避学習を解析する系を立ち上げた。その結果、ラットとマウスでミノサイクリン投与による受動的回避学習の変容が異なることが示唆された。
著者
藤原 清司 金広 文男 梶田 秀司 横井 一仁 齋藤 元 原田 研介 比留川 博久 五十棲 隆勝
出版者
日本ロボット学会
雑誌
日本ロボット学会誌 (ISSN:02891824)
巻号頁・発行日
vol.23, no.4, pp.427-434, 2005-05-15 (Released:2010-08-25)
参考文献数
13
被引用文献数
2 3

This paper investigates a method through which a human-size humanoid robot can fall over backwards safely. Squatting-extending motion of legs reduce impact of falling and shock-absorbing parts of the robot keep the force at a permissible range. The robot could stand up itself again after falling.
著者
本橋 玲 渡嘉敷 亮二 平松 宏之 野本 剛輝 許斐 氏元 櫻井 恵梨子 豊村 文将 塚原 清彰 鈴木 衞
出版者
THE JAPAN LARYNGOLOGICAL ASSOCIATION
雑誌
喉頭 (ISSN:09156127)
巻号頁・発行日
vol.26, no.2, pp.93-98, 2014-12-01 (Released:2015-07-22)
参考文献数
11

Thyroarytenoid muscle myectomy (TAM) is a useful procedure for treating adductor spasmodic dysphonia (ADSD), in addition to type II thyroplasty (TP II), and both are performed in our department in Japan. In the present study, we examined the surgical outcomes of TAM. The subjects were 31 patients who underwent TAM between 2008 and 2013 at Tokyo Medical University Hospital, who could be followed up for at least six months following surgery and whose voice quality evaluation data were available. A comparison of voice evaluations pre-surgery and six months post-surgery was made. After six months, a significant improvement was seen in all of the voice quality evaluation items, including “strangulation”, “interruption”, “tremors” and voice handicap index (VHI). There was a marked recurrence of the symptoms in two of the 31 subjects within six months. Hemorrhage and scarring were observed as postoperative complications. In addition, we gave a questionnaire to 30 of the subjects who were followed up for at least one year following surgery, which asked about the recurrence of hoarseness and the degree of satisfaction with the surgery. Fifteen subjects responded (50%). The period of continuous hoarseness had ranged from one to 24 months. No subject felt that the hoarseness was a serious impediment in daily life, and the median period required for its disappearance was four months. Symptoms recurred in three subjects, but they tended to be mild. All 15 subjected reported experiencing a benefit from the surgery. The degree of satisfaction with TAM is very high, and we consider it to be a useful procedure for adductor spasmodic dysphonia.
著者
上原 清
出版者
日本大学
雑誌
日本大学芸術学部紀要 (ISSN:03855910)
巻号頁・発行日
vol.42, pp.29-47, 2005

「NHKスペシャル」<以下"Nスペ"と略す>は、1976年4月にはじまった「NHK特集」<以下"N特"と略す>の後を受け、1989年4月にスタートした。「N特」は当初、週1回でスタートしたが、週2本でも出来ると判断し、78年4月(月・金曜)の週2本となった。84年4月から(日・月・金曜)の週3本となる。「N特」の企画はNHKの中ならば誰れでも参加でき、番組制作スタッフはテーマに即したピックアップ方式で参画できた。80年代後半になって"花鳥風月"ばかりが眼につくようになるとの批判が目立ちはじめてくる。NHKとはいえ、週3本も"スペシャル"番組を作ることはむずかしかったといえる。「N特」は13年間で1,378本放送された。「Nスペ」は「N特」放送年数を越え今年2005年で17年目を迎える。04年3月までに1,643本を数える放送を行なってきた。ここでは過去2000年〜03年度の「Nスペ」がいかなる制作母体で作られてきたかをさぐってみたい。