著者
利野 靖 湯川 寛夫 山田 六平 佐藤 勉 稲垣 大輔 藤川 寛人 長谷川 慎一 大島 貴 吉川 貴己 益田 宗孝 今田 敏夫
出版者
日本外科系連合学会
雑誌
日本外科系連合学会誌 (ISSN:03857883)
巻号頁・発行日
vol.38, no.1, pp.62-66, 2013 (Released:2014-02-28)
参考文献数
9

【目的】十全大補湯は病後の疲労倦怠,食欲不振,貧血に処方される漢方薬の一つである.再発胃癌の抗癌剤治療中の白血球減少,貧血,食思不振に悩んでいた症例に十全大補湯を処方したところ改善した症例を経験した.そこで胃癌の診断で抗癌剤治療を施行した症例で十全大補湯を処方した症例をretrospectiveに解析し,抗癌剤の副作用の発現率を検討することとした. 【対象と方法】進行再発胃癌の診断で抗癌剤治療を施行した症例で31例に十全大補湯を処方した.抗癌剤の副作用発現と,十全大補湯の副作用について検討した. 【結果】十全大補湯が不味くて飲めない症例が1例.17例の血液毒性では,11例(64.7%)でGradeの低下がみられ,有効と判定した.10例の非血液毒性(食思不振,倦怠感など)では,7例(70.0%)で効果がみられた. 【結語】抗癌剤治療の副作用に十全大補湯は有効であることが考えられた.
著者
稲垣 大輔 塩澤 学 里吉 哲太 渥美 陽介 風間 慶祐 樋口 晃生 利野 靖 益田 宗孝
出版者
一般社団法人 日本消化器外科学会
雑誌
日本消化器外科学会雑誌 (ISSN:03869768)
巻号頁・発行日
vol.50, no.8, pp.607-613, 2017-07-01 (Released:2017-08-24)
参考文献数
19

目的:原発巣切除を施行した腹膜播種を伴う大腸癌の予後因子を明らかにすることを目的として検討を行った.方法:2000年から2010年まで,当科で治療を行った原発性大腸腺癌を対象とした.結果:大腸癌1,484例のうち77例(5.2%)に腹膜播種を認めた.腹膜播種を伴う大腸癌で原発巣切除を施行したのは74例で,手術根治度Bを得られたのは12例であった.手術根治度Cの65例において,原発巣切除62例と非切除3例の治療成績を比較すると,原発巣切除症例の生存率が有意に良好であった(P=0.037).腹膜播種を伴う大腸癌で原発巣切除を施行した74例で,腹膜播種の程度の分類はP1 32例,P2 17例,P3 25例で,3年生存率(生存期間中央値)は,P1 34.4%(20.2か月),P2 41.2%(24.7か月),P3 8.0%(14.8か月)であった.P3とP1およびP3とP2を比較すると,P3はいずれも有意に予後不良であった(P=0.008,P=0.008).多変量解析の結果,組織型(低分化腺癌・粘液癌・印環細胞癌),腹膜播種P3,手術根治度Cが独立した予後不良因子であった(P<0.001,P=0.015,P=0.002).結語:腹膜播種を伴う大腸癌では,原発巣切除と腹膜播種切除で肉眼的根治切除を行うことができれば治療成績を改善できる可能性があると考えられた.
著者
稲垣 大輔 長谷川 慎一 吉田 達也 大佛 智彦 米山 克也 笠原 彰夫 山本 裕司
出版者
一般社団法人 日本消化器外科学会
雑誌
日本消化器外科学会雑誌 (ISSN:03869768)
巻号頁・発行日
vol.43, no.2, pp.141-147, 2010-02-01 (Released:2011-12-27)
参考文献数
15
被引用文献数
3 2

はじめに:高齢者大腸癌症例の術後合併症のリスク因子を検討して,手術リスク評価法であるEstimation of Physiologic Ability and Surgical Stress(以下,E-PASS)の高齢者大腸癌に対する有用性の評価を行う.方法:2002年から2007年まで,当院において原発巣を切除した大腸癌の75歳以上82症例の臨床病理組織学的因子と術後合併症を検討した.E-PASSの術前リスクスコア(PRS),手術侵襲スコア(SSS),総合リスクスコア(CRS)を算出し,術後合併症とE-PASSとの関連を検討した.結果:術後合併症は36症例(43.9%)に発生した.合併症非発生群(A群)と発生群(B群)に分類した.PRS, SSS, CRSはすべてB群において有意に高値で,またB群にはCRS 0.5以上の症例が有意に多かった.腸管穿孔,低栄養,PS 2または3, ASA分類3または4の症例はB群に有意に多く認めた.多変量解析の結果,CRS 0.5以上が術後合併症発生に関する独立したリスク因子として選択された.考察:E-PASSは高齢者大腸癌症例に対するリスク評価法として有用であると考えられた.