著者
鈴木 香峰理 永野 靖彦 森 隆太郎 國崎 主税 今田 敏夫 嶋田 紘
出版者
日本臨床外科学会
雑誌
日本臨床外科学会雑誌 (ISSN:13452843)
巻号頁・発行日
vol.69, no.8, pp.1955-1959, 2008 (Released:2009-02-05)
参考文献数
25
被引用文献数
3

症例は59歳,男性.2004年10月 右季肋部痛を主訴に当院を受診した.同部位に著明な圧痛,反跳痛を認め,また,腹部CTでは回腸周囲のfat densityの上昇および右側腹直筋の肥厚を認め大腸憩室炎と診断された.入院後絶飲食,抗生剤投与を行い症状は一時改善したが,経口摂取開始後再び発熱と上腹部痛を認め開腹手術を施行した.圧痛部位の直下に手拳大の腫瘤を認め,空腸,横行結腸が巻き込まれていたため,腫瘤を含め小腸部分切除及び横行結腸部分切除術を施行した.腫瘤内部は膿瘍を形成しており,内部に小腸と交通する爪楊枝を認め,爪楊枝による消化管穿孔と診断した.爪楊枝による消化管穿孔は稀で,病歴から誤飲の有無を聞き出せないことも多く,診断に難渋する.本症例は,急性腹症の鑑別診断のひとつとして重要な症例と考え報告した.
著者
湯川 寛夫 赤池 信 杉政 征夫 武宮 省治 亀田 陽一 今田 敏夫
出版者
一般社団法人日本消化器外科学会
雑誌
日本消化器外科学会雑誌 (ISSN:03869768)
巻号頁・発行日
vol.35, no.8, pp.1443-1447, 2002-08-01
参考文献数
15
被引用文献数
15

症例は50歳の女性.1996年6月注腸検査,大腸内視鏡検査で肛門縁から10cmの直腸に2型病変をみとめ生検でanaplastics quamous cell carcinomaであった.術前CTにて傍直腸,大動脈周囲,左腸骨動脈周囲にリンパ節腫大を認めた.8月12日低位前方切除術施行,術中迅速診にて大動脈周囲リンパ節に転移陽性であり,根治度Cであった.病理組織診では直腸原発の小細胞癌と診断した.肺小細胞癌に準じ術後CDDP40mg×2日,VP-16100mg×3日(1クール)の化学療法を施行した.化学療法が奏効し術後9MのCTにて傍大動脈リンパ節腫大消失CRを得て以後2001年2月まで42か月,再発なく経過中である.小細胞癌の直腸原発例はまれであり,1クールにもかかわらず化学療法が奏効した1例を経験したので報告する.
著者
利野 靖 湯川 寛夫 山田 六平 佐藤 勉 稲垣 大輔 藤川 寛人 長谷川 慎一 大島 貴 吉川 貴己 益田 宗孝 今田 敏夫
出版者
日本外科系連合学会
雑誌
日本外科系連合学会誌 (ISSN:03857883)
巻号頁・発行日
vol.38, no.1, pp.62-66, 2013 (Released:2014-02-28)
参考文献数
9

【目的】十全大補湯は病後の疲労倦怠,食欲不振,貧血に処方される漢方薬の一つである.再発胃癌の抗癌剤治療中の白血球減少,貧血,食思不振に悩んでいた症例に十全大補湯を処方したところ改善した症例を経験した.そこで胃癌の診断で抗癌剤治療を施行した症例で十全大補湯を処方した症例をretrospectiveに解析し,抗癌剤の副作用の発現率を検討することとした. 【対象と方法】進行再発胃癌の診断で抗癌剤治療を施行した症例で31例に十全大補湯を処方した.抗癌剤の副作用発現と,十全大補湯の副作用について検討した. 【結果】十全大補湯が不味くて飲めない症例が1例.17例の血液毒性では,11例(64.7%)でGradeの低下がみられ,有効と判定した.10例の非血液毒性(食思不振,倦怠感など)では,7例(70.0%)で効果がみられた. 【結語】抗癌剤治療の副作用に十全大補湯は有効であることが考えられた.
著者
樋口 晃生 齊藤 修治 池 秀之 三箇山 洋 原田 浩 三辺 大介 今田 敏夫 山本 直人 湯川 寛夫 利野 靖 益田 宗孝
出版者
日本大腸肛門病学会
雑誌
日本大腸肛門病学会雑誌 (ISSN:00471801)
巻号頁・発行日
vol.67, no.2, pp.68-73, 2014 (Released:2014-01-31)
参考文献数
12
被引用文献数
8 8

【目的】大腸癌術前症例に3D-CT angiography(3D-CTA)を施行し動脈の走行分類を行う.【方法】2012年3月から8月の新規大腸癌患者56例に対し3D-CTAを行い(1)右結腸動脈(2)中結腸動脈(3)左結腸動脈およびS状結腸動脈の分岐走行を分類した.【結果】(1)右結腸動脈:上腸間膜動脈からの独立分岐(Type A)が25.0%,中結腸動脈からの分岐(Type B)が37.5%,回結腸動脈からの分岐(Type C)が26.8%,欠損例(Type D)が10.7%であった.(2)中結腸動脈:右枝と左枝が共通幹を形成しているものが80.4%,右枝と左枝が独立して分岐しているものが12.5%であった.副中結腸動脈は33.9%に認められた.(3)左結腸動脈およびS状結腸動脈:左結腸動脈とS状結腸動脈が独立して分岐(独立分岐型)が51.8%,同じ部位から分岐(同時分岐型)が16.1%,共通幹形成(共通幹型)が32.1%であった.【結語】3D-CTAによる動脈走行分類は腹腔鏡下手術をはじめとしたすべての大腸癌手術に有用と思われる.
著者
加藤 直人 鈴木 弘治 田中 淳一 利野 靖 今田 敏夫 天野 富薫 高梨 吉則
出版者
一般社団法人 日本消化器外科学会
雑誌
日本消化器外科学会雑誌 (ISSN:03869768)
巻号頁・発行日
vol.33, no.8, pp.1525-1528, 2000 (Released:2011-06-08)
参考文献数
21
被引用文献数
5 9

症例は48歳の男性. 発熱, 腹痛を主訴に来院, 腹部全体に反跳痛, 筋性防御が認められ, 汎発性腹膜炎の診断にて開腹した. 手術所見では漿液性腹水少量, 小腸間膜の肥厚, 発赤を認めるのみであった. 腸間膜脂肪織炎を疑い一部生検を施行し, 閉腹した. 術後39℃の発熱が8日目まで持続したが, γ-globulin投与したところ平熱化し, 炎症は鎮静化した. 病理組織所見では, 変性脂肪細胞, 炎症細胞浸潤, 微小膿瘍が認められ, 脂肪織炎と診断した. 腹水細菌培養は陰性であった.腸間膜脂肪織炎は原因不明の比較的稀な疾患であり, その臨床像は多彩なため診断は困難で確立した治療法はない. 今回, 我々はγ-globulin投与が奏効したと思われる1例を経験したので文献的考察を加え報告する.
著者
青山 法夫 米山 克也 徳永 誠 南出 純二 小沢 幸弘 山本 裕司 今田 敏夫 赤池 信 天野 富薫 有田 英二 小泉 博義 松本 昭彦
出版者
一般社団法人日本消化器外科学会
雑誌
日本消化器外科学会雑誌 (ISSN:03869768)
巻号頁・発行日
vol.24, no.10, pp.2594-2598, 1991-10-01
被引用文献数
2

消化管吻合部狭窄の治療法として,内視鏡的切開およびブジーによる拡大術の適応と限界について検討した.吻合部狭窄35例(瘢痕性26例,癌性9例)を対象とした.瘢痕性狭窄の長さによる狭窄解除率をみると,2cm未満14/15(93.3%),2cm以上3cm未満8/9(88.9%),3cm以上0/2(0%)であった.一方,癌性狭窄は0/9(0%)と効果不良であった.効果不良例13例(瘢痕性4例,癌性9例)の内,癌性3例を除く10例に他の治療を加えた.3例(瘢痕性1例,癌性2例)に手術,7例(瘢痕性3例,癌性4例)に食道ブジー挿管術を施行した.手術では,狭窄が解除出来たのは1例のみで他は試験開腹および合併症死におわった.食道ブジー挿管術は7例全例狭窄を解除でき退院可能であった.皮膚管瘢痕性狭窄1例のみ皮膚瘻孔を形成し手術を要した.食道ブジー挿管術は難治性吻合部狭窄の非観血的治療法として有用であった.