著者
窪野 隆能
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. C, エレクトロニクス (ISSN:13452827)
巻号頁・発行日
vol.83, no.4, pp.300-307, 2000-04-25
被引用文献数
26

継電器に搭載した3.6mmφAg/CdO12wt%電気接点(開離力0.15〜0.18N, 接点間隙(げき)0.8〜1.0mm)を直流30V-10Aの抵抗性回路内で閉成責務電気接点として使い, 閉成責務動作ごとにバウンス回数, アーク継続時間, 接触抵抗や背面温度を測定し, 更に陰極面上に形成される転移突起の成長過程を撮影した.数千回の閉成責務動作で丘状の転移突起は肉眼で確認できるほどに成長し, 動作回数が更に増すとその突起は石筍(じゅん)形状で高くなる.閉成責務動作が1万回以上になると動作回数の増加とともに, 石筍形状の突起高さHの成長率は鈍化し, しかも突起の根本太さDfはさほど変動しない.転移突起を成長させる閉成時アークは, 閉成責務動作ごとのアーク継続時間が200〜500μsであっても, 数万回の閉成責務動作(積算アーク継続時間では8〜10s)で分離不良を起こすほどに転移突起を高くすることがこの実験で明白となった.分離不良を起こした試料から, 「電気接点が分離不良を起こす際の突起形状は, 曲がった石筍タイプであり, H/Df≧0.5でかつH/間隙≧0.5である」と判断できる結果が得られた.
著者
小林 篤人 窪野 隆能
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. EMD, 機構デバイス
巻号頁・発行日
vol.97, no.329, pp.1-6, 1997-10-17
参考文献数
8
被引用文献数
1

小形の電磁継電器で発生する開離不能故障を防止することを目的として、試作したAu接点に接触力を印加した状態でしゅう動を与え粘着力の測定を行った。その際、接触面積を推定する目的でしゅう動前後および粘着力を測定するために接点を引き離していく途中で接触力がゼロになったときに接触抵抗の測定を行った。その結果から、しゅう動回数が増加しても接触面積がある値以上に増加しないことおよびこのときの接触面積を用いて計算した見かけの応力が結果的にミーゼスの降伏条件を満足することを示した。また、降伏応力、引張り強さおよび摩擦係数から粘着力を推定する方法を提案した。
著者
窪野 隆能 赤池 務
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. C-II, エレクトロニクス, II-電子素子・応用 (ISSN:09151907)
巻号頁・発行日
vol.77, no.9, pp.377-383, 1994-09-25
被引用文献数
5

陽極と陰極の電極材料がアーク放電にどのような影響を及ぼすかを調べる目的で,AgとCuを組み合せた電極対で直流30V-3Ω抵抗回路の遮断のみを30回行い,アーク放電継続時間と陰極近傍の光スペクトルの強度波形を測定した.開離時アークにおける開離動作回数と放電継続時間との関係,開離動作回数と検出スペクトルの種類およびそれらの強度との関係を調べた.陰極にAg電極を使うと陰極Cuの場合よりもアーク継続時間が長い.陽極Cuと陰極Agの異種金属電極対の場合はAgスペクトルのみ現れ,Cuスペクトルは検出されなかった.陽極Agと陰極Cuの異種金属電極対の場合は少数回の開離時にCuスペクトルのみ出現したが,開離動作回数が多くなるとAgスペクトルが放電後期から出現するようになり,開離動作数が30回程度になると放電初期からAgスペクトルが出現し,その強度は強かった.これらの現場は,AgとCuの蒸発量の違い,開離時アークの転移方向に関する二つの特徴および転移量によって引き起こされたと考えた.