著者
立松 洋子
出版者
別府大学短期大学部
雑誌
別府大学短期大学部紀要 (ISSN:02864991)
巻号頁・発行日
no.27, pp.137-157, 2008-03

(1)今回の調査で大分県の郷土料理で高い認知度を示したのは,ひじきごはん,高菜ご飯,とり飯,けんちん汁,団子汁,とりてん,やせうま,カボスゼリーである。郷土料理の種類で認知度の差があるが,この8品だけが認知度が60%以上である。郷土料理は子どもにはあまり知られていない(伝承されていない)と考える。1つの根拠と考えられるのは,一般的に大分県は小藩分立の影響が残り,郷土料理が県全体で食べられていないと考える。(2)学校や家庭や外食で作られ普及している郷土料理の方が,子どもへの認知度が高くなると考える。家庭でも大事に引き継がれている郷土料理ほど認知度は低い。これらの認知度の低い郷土料理を絶やさず,次世代に伝承していくことが重要であると考える。(3)ほとんどの郷土料理は地域性があるが,学校給食でだされている郷土料理は地域を超えて伝承されている。このことからも,学校での食育は重要であると考える。(4)郷土料理が体に良いと思う・美味しいと思うと60%が認識しているが,郷土料理が本当に身近な料理と思っている子は31%しかいないことからも郷土料理は子どもに浸透していない。また,郷土料理は家庭で, 1か月に数回しか食べられていないことからも郷土料理が作られていないことがわかる。また,非常に伝えていきたい,作れるようになりたいと思う子どもも少なく,郷土料理にあまり関心がないようである。これからどのように取り組みをするかが重要になる。(5)外食については, 69%の子どもたちは1ヶ月に数回以上外食の頻度があり,外食が日常化している。また,家庭では芋類・豆類・果物が食べられていない。家庭での調理が少なくなり外食やコンビニ弁当・インスタント食品では芋や豆・果物をとる機会が少なくなると考えられる。家庭でも心がけて郷土料理の素材である芋や豆を使った料理を作ることで,郷土料理が家庭で一層普及し,さらに,学校給食がこれまで以上に食育の立場で郷土料理の伝承に大きな役割を果たすことを期待している。また,外食での郷土料理の普及も重要な鍵となると考えられる。
著者
西澤 千惠子 立松 洋子 望月 美左子 宇都宮 由佳 篠原 壽子
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.31, 2019

<p>【目的】伝統的な地域の料理が伝承されにくくなっている現在,大分県の次世代に伝え継ぐ家庭料理を暮しの背景と共に記録し,家庭料理研究の基礎研究,家庭や教育現場でも利用可能な資料とする。</p><p>【方法】本研究は,平成24〜26年度に大分県内8地域における昭和35〜45年頃までに定着していた家庭料理について,60歳代以上を対象とし聞き書き調査を行なった結果から,大分県で食されていた副菜とその特徴について検討した。</p><p>【結果および考察】大分県は九州の北東部に位置し,東側は遠浅の瀬戸内海とリアス式海岸の豊後水道に面し,西側が九州山地で,その間に平野や盆地が点在するという自然豊かな地域のため,新鮮で豊富な食材に恵まれている。当時は流通網が発達しておらず,県内全域に食材が行き渡ることは難しく,その土地で季節ごとに入手・収穫した食材を大切に保存して利用していた。これらを先人の知恵に基づいてバラエティーに富んだ料理にしてきた。生産量日本一の干し椎茸を使い「含め煮」や「辛子漬け」に,瀬戸内海で採れる海藻イギス草を固めて「いぎす」にした。内陸地域では,身近にあるドングリを粉状にしてアクを除いて保存しておく。ここに水を加えて加熱しながら練ると,海藻から作った「いぎす」に似た「かたぎの実のいぎす」になる。また,早春に採れる海藻クロメを様々な工夫を凝らして食感と味を保ちながら,目先を変えた料理として食べていた。「きらすまめし」は大豆を余す所なくおいしく食べようとした倹約料理であり,「オランダ」は大分の方言「おらぶ(大きな声を出す)」から名付けられた野菜料理である。現在,家庭で日常的に作られている料理がある一方,ほとんど作られなくなっている副菜も多い。</p>
著者
立松 洋子 小畑 光朗
出版者
別府大学短期大学部
雑誌
別府大学短期大学部紀要 = Bulletin of Beppu University Junior College (ISSN:02864991)
巻号頁・発行日
no.35, pp.101-109, 2016-02

大分県は南海トラフ地震が心配され各地で防災の対応がなされている。また、地球温暖化、世界情勢の変動の時代の中、地球環境も食糧事情も不安定になりつつある時代、食糧を確保する方面から、救荒作物を利用することを考えていく必要がある。今回、芋茎がどのような物かを理解し、芋茎をどのように食するのが一番良いのかを検討し、非常時に役立てたいと考え、様々な調理を検討し、特に保存性のあると考える干した芋茎を用いた料理を数々作り、その結果から、どんな料理でも可能であるが、調理方法としては、災害時には、炒めて煮る簡単な料理が一番食べやすく美味しいのではないかと判断した。
著者
立松 洋子 衛藤 大青
出版者
別府大学短期大学部
雑誌
別府大学短期大学部紀要 (ISSN:02864991)
巻号頁・発行日
no.31, pp.177-186, 2012-02

平成20年度から23年度3月卒業した学生の調理実習達成度調査から年々上達している様子が見受けられるが、実際の調理実習では年々実技が低下しているように伺える。達成度の項目では、記憶する項目は達成度は高いが濃度や吸油率等の数学的化学的項目や相互関係が必要とされる項目については達成度が低い。また、各学年ごとの性格や学習態度により達成度が異なっているので、教師の指導方法や教育環境を整備し、調理実習にあたらなければならないと感じている。さらに、高い達成度をもつ学生についてはもっと高いレベルの実習をしなければならないと考える。