著者
高島 弘幸 黄金 勲矢 竹林 庸雄 押切 勉 森田 智慶 吉本 三徳 寺島 嘉紀 山下 敏彦
出版者
一般社団法人 日本脊椎脊髄病学会
雑誌
Journal of Spine Research (ISSN:18847137)
巻号頁・発行日
vol.11, no.6, pp.897-901, 2020-06-20 (Released:2020-06-20)
参考文献数
15

慢性腰痛患者では,多裂筋の筋細胞内脂肪(intramyocellular lipids:IMCL)が上昇していることが報告されている.本研究では,慢性腰痛患者における多裂筋のIMCLが腰痛の経過とともにどのように変化するかを縦断的に解析した.腰痛VASの改善率とIMCLの変化率の間には,正の相関(r = 0.818,p < 0.001)が認められ,腰痛の改善とともにIMCLが低下する傾向であった.多裂筋のIMCLは,慢性腰痛と深い関連があることが示唆された.
著者
山下 敏彦
出版者
日本腰痛学会
雑誌
日本腰痛学会雑誌 (ISSN:13459074)
巻号頁・発行日
vol.13, no.1, pp.24-30, 2007 (Released:2008-01-22)
参考文献数
11
被引用文献数
1

椎間関節包やその周囲組織には,痛覚伝達に関与する細径神経線維や侵害受容器が豊富に存在する.椎間関節の炎症により,受容器は長時間にわたり興奮し,機械的閾値が低下する.また,椎間関節の炎症は,神経根に波及し,後根神経節内のサイトカインの発現を増加させるとの報告がある.椎間関節に対する機械的有害刺激や,椎間関節の炎症あるいは椎間板変性に伴い発生する化学的有害刺激は,椎間関節および周囲組織に存在する侵害受容器を興奮させ,急性あるいは慢性腰痛の発生に関与しているものと思われる.また,椎間関節の変性や炎症は,神経根性疼痛の発生にも関与していることが推測される.
著者
石井 圭史 川口 哲 渡邊 吾一 神谷 智昭 石川 一郎 山下 敏彦
出版者
南江堂
雑誌
臨床雑誌整形外科 (ISSN:00305901)
巻号頁・発行日
vol.63, no.1, pp.1-4, 2012-01-01

急性腰痛で受診した47例を対象に、MRI撮像により椎体骨折と診断した28例(男2例、女26例、平均76.8歳;椎体骨折群)とそれ以外の19例(男5例、女14例、平均76.2歳;非椎体骨折群)に分け、sit-up-lie-down(S-L)テストの有用性について検討した。S-Lテストは患者を診察台に寝かせ、起き上がり或いは寝そべりのいずれかで腰痛が誘発されれば陽性とした。その結果、椎体骨折群28例中26例が陽性で、椎体骨折に対する感度は92.9%、特異度52.6%であった。棘突起叩打痛が有ったのは64.3%であった。日整会腰痛評価質問票で感度80%を超えたのは腰椎機能障害6項目4項目、歩行機能障害5項目中2項目で、疼痛visual analogue scaleは両群間で有意差はなかった。座位・仰臥位X線では椎体骨折群28例中23例で椎体前壁高変化を認め、非椎体骨折群には変化がなく、感度82.1%、特異度100%であった。S-Lテストは椎体骨折の簡便な診断法として有用であることが示された。
著者
山下 敏彦
出版者
日本疼痛学会
雑誌
PAIN RESEARCH (ISSN:09158588)
巻号頁・発行日
vol.30, no.4, pp.199-207, 2015-12-10 (Released:2016-01-06)
参考文献数
20

The incidence of chronic pain among the adult Japanese population has been reported to be around 23%. In the majority of cases, the site of chronic pain is located in the musculoskeletal system, such as the lumbar spine, neck and shoulder joint. Based on the pain mechanism, musculoskeletal chronic pain is classified as chronic nociceptive pain, neuropathic pain or mixed pain. Psycho–social factors often affect clinical symptoms in chronic pain cases.   The first choice of medication for chronic nociceptive pain, resulting from conditions such as inflammation or degeneration of joints or spine, is nonsteroidal anti–inflammatory drugs (NSAIDs). Cox 2 selective inhibitors should be used in cases of long–term use to avoid gastrointestinal problems. Although opioids may be applied in cases in which NSAIDs have no effect, attention should be paid to potential side effects such as nausea and consti-pation, abuse and addiction. Physical therapy including muscle stretching and strengthening is a very important therapeutic modality for chronic noci-ceptive pain. Surgical treatment, such as arthroplasty and spinal fusion, may also be applied in cases in which conservative treatments fail.   As NSAIDs are not effective for neuropathic pain caused by disorders and diseases of nervous system, pregabalin (Ca2+ channel blocker), anti–depressant s and opioids may be applied. Surgery intervention, including laminectomy, discectomy or neurolysis for the purpose of nerve decompres-sion, may be applied in cases in which conservative treatment fail or nerve palsy is observed. For difficult chronic pain cases with psycho–social factors, a multidisciplinary approach including cognitive behavioral therapy should be considered.
著者
横串 算敏 成田 寛志 瀧内 敏郎 山下 敏彦 野坂 利也
出版者
社団法人日本リハビリテーション医学会
雑誌
リハビリテーション医学 : 日本リハビリテーション医学会誌 (ISSN:0034351X)
巻号頁・発行日
vol.33, no.7, pp.488-491, 1996-07-18
被引用文献数
3

5例の下腿切断者を対象に, ICEROSSを使用したTSB義足とPTB義足の比較検討を行った.歩行時の安定感, 総合評価の点では, 全例がTSB義足はPTB義足より優れていると評価した.運動学的評価では, TSB義足歩行時の遊脚後期と立脚初期での加速度垂直成分は, PTB義足歩行時に比べ有意に減少していた.歩行時の膝関節屈曲角度は, 両義足間で差はなかった.
著者
早川 光 小笹 泰宏 成田 有子 射場 浩介 山下 敏彦
出版者
金原出版
巻号頁・発行日
pp.1041-1043, 2017-07-01

野球歴のある7 歳男児のPanner 病を経験した。初診時は上腕骨小頭骨端核の骨透亮像は限局しており,離断性骨軟骨炎と診断した。その後の経過で,骨端核全体の分節化が出現したためPanner 病との診断に至った。安静,生活指導による保存加療を行い症状は消失し,7 カ月後より投球練習を開始,最終経過観察時には制約なく野球が可能となった。
著者
大坪 英則 鈴木 大輔 神谷 智昭 鈴木 智之 山下 敏彦 史野 根生
出版者
金原出版
巻号頁・発行日
pp.1481-1488, 2018-11-01

要旨:近年,膝前十字靱帯(ACL)再建術では,形態的にも機能的にも正常靱帯に近い靱帯を再建するために,正常靱帯付着部に骨孔を作成し自家腱を移植固定する解剖学的再建術が行われている。われわれは,新鮮屍体膝を用いた解剖学的研究を行い,ヒト正常ACLは,前内側線維束(AM束)と後外側線維束(PL束)の2線維束に分けられ,さらにAM束は内側部分(AM-M束)と外側部分(AM-L束)に分けられ,3線維束を構成することを明らかにした。さらに,線維束の配列と断面積計測,付着部位置および面積計測,MRIによる生体内画像解析,透過型電子顕微鏡(TEM)によるコラーゲン線維の微細構造についての詳細な検討を行い,ACL 3線維束の解剖学的な特徴を明らかにした。これの結果は,各線維束が力学的に異なる役割を担っていることを示しており,靱帯再建術式の決定や移植腱の選択においては,これらの線維束構造の機能解剖学的特徴を十分に考慮すべきである。
著者
射場 浩介 道家 孝幸 花香 恵 金谷 久美子 阿部 恭久 山下 敏彦
出版者
日本疼痛学会
雑誌
PAIN RESEARCH (ISSN:09158588)
巻号頁・発行日
vol.31, no.4, pp.203-209, 2016-12-26 (Released:2017-01-27)
参考文献数
20

We have recently demonstrated that pathological changes leading to increased bone resorption by osteoclast activation are related to the induction of pain–like behavior in ovariectomized (OVX)mice. In addition,we have shown that the skeletal pain accompanying osteoporosis is possibly associated with the acidic microenvironment caused by osteoclast activation under a high bone turnover state. We, therefore, hypothesize that another osteoporosis model mouse might reveal the induction of pain–like behaviors in relation with osteoporotic changes. In this study, we demonstrated that regional osteoporosis of hind limbs induced pain–like behaviors using tailsuspended mice as another osteoporosis model.The hind limbs of tail–suspended mice were unloaded for 2 weeks, during which time the mice revealed significant regional osteoporotic changes in their hind limbs accompanied by osteoclast activation. In addition, these changes were significantly recovered by the resumption of weight bearing on the hind limbs for 4 weeks. Consistent with the pathological changes in the hind limbs, pain–like behaviors in the mice were induced by tail suspension and recovered by the resumption of weight bearing. Moreover, treatment with bisphosphonate significantly prevented the triggering of the regional osteoporosis and pain–like behaviors, and antagonists of the acid–sensing nociceptors, such as transient receptor potential channel vanilloid subfamily member 1 and acid–sensing ion channels, significantly improved the painlike behaviors in the tail–suspended mice.We, therefore, believe that pathologic changes of osteoporosis due to osteo clast activation might be a trigger for the pain–like behaviors in osteoporosis patients.
著者
森田 智慶 本望 修 山下 敏彦
出版者
医学書院
雑誌
臨床整形外科 (ISSN:05570433)
巻号頁・発行日
vol.52, no.4, pp.366-371, 2017-04-25

はじめに 本邦の脊髄損傷患者の年間発生数は5,000〜6,000人と言われており,総数は10万人を超える.その発生機序は,直達外力による脊髄組織の圧挫である一次損傷と,出血・浮腫・炎症などによる壊死や損傷神経線維の脱髄・軸索損傷などの二次損傷が関与すると考えられている1).今日の標準治療は,脊椎の整復固定術・除圧術といった手術療法や,リハビリテーションが一般的である.メチルプレドニゾロンの大量投与療法は,その有効性が疑問視され,また種々の重篤な合併症が散見されることから,2013年のガイドラインにおいて「推奨しない」と記されている2).一度受けた脊髄の損傷そのものを修復し得る治療法はいまだ存在せず,現在も患者は大きな後遺症を抱えたまま,その後の生活を余儀なくされている. われわれは1990年代から,脊髄損傷の実験的動物モデルを用いて,各種幹細胞をドナーとした再生医療研究を精力的に行ってきた.なかでも,脊髄損傷のみならず,脳梗塞やパーキンソン病など,他の多くの分野の再生医療研究において有用性が高いと注目されており,臨床応用が大いに期待できるドナー細胞として骨髄中に含まれる間葉系幹細胞(mesenchymal stem cell:MSC)に着目した.われわれは,急性期から亜急性期の脊髄損傷動物モデルに対し,骨髄由来のMSCの移植実験を行い,良好な機能回復が得られたことを報告した1,3).これらの基礎研究結果に基づき,2013年11月には,脊髄損傷患者に対する医師主導治験を実施しており,再生医療等製品としての薬事承認を目指している. 本稿では,われわれがこれまでに行ってきた急性期から亜急性期,さらに慢性期の脊髄損傷に対するMSCを用いた再生医療研究の最新の知見と,現在本学で施行している自家MSC移植療法の医師主導治験の概要について述べる.
著者
山下 敏彦
出版者
医学書院
雑誌
臨床整形外科 (ISSN:05570433)
巻号頁・発行日
vol.38, no.9, pp.1131-1132, 2003-09-01

本学の医学部5年生を対象に「整形外科はメジャー(大診療科)だと思うか,マイナー(小診療科)だと思うか」について無記名でアンケートをとった.回答のあった89名中,メジャーと答えた者が48名(54%),マイナーと答えた者が41名(46%)であった.メジャー,マイナーがほぼ相半ばしたが,整形外科が医師国家試験や卒後臨床研修の必修科目に入っていない割には,メジャーととらえている学生が意外に多いと言えるのかもしれない. 医学教育の現場では,整形外科はマイナー科として扱われることが多い.本学を例にすると,整形外科の必修臨床実習期間はマイナー科とみなされ1週間のみである.内科などのメジャー科は2週間の配分だが,内科は第1から第4まであるので計8週間となり整形外科との差は歴然である(現在,不均衡の是正を交渉中である).厚生労働省により平成16年度(2004年)から始められる,医師免許取得後の臨床研修制度においても,必修科目は内科,外科,救急部門(麻酔科を含む),小児科,産婦人科,精神科,地域・保健医療であり,その中に整形外科は入っていない.