著者
清水 哲朗 加藤 博 山下 巌 斎藤 智裕 竹森 繁 中村 潔 穂苅 市郎 山田 明 島崎 邦彦 小田切 治世 坂本 隆 唐木 芳昭 田沢 賢次 藤巻 雅夫
出版者
一般社団法人日本消化器外科学会
雑誌
日本消化器外科学会雑誌 (ISSN:03869768)
巻号頁・発行日
vol.23, no.3, pp.753-757, 1990-03-01
被引用文献数
6

食道の小細胞型未分化癌に対し,温熱療法を併用した集学的治療を施行し,約9か月の生存を得られた症例を経験したので報告する.症例は75歳男性.昭和62年7月より嗄声,嚥下困難が出現,近医にて食道癌と診断され,11月16日当科入院となった.入院後の諸検査により,ImEiIuにわたる切除不能食道癌で,生検により小細胞型未分化癌と診断された.11月30日より放射線療法計47Gy,免疫・化学療法として,BLM計65mg,CDDP計150mg,5FU計4,500mg,VP-16計180mg,OK432計57.2KE,PSK99gを投与し,これらに局所温熱療法9回を加えた集学的治療により,症状はもちろん,食道造影上も,腫瘍陰影が消失した.しかし,昭和63年7月になり,多発性肝転移により再入院,8月6日死亡した.放射線・温熱併用療法の局所に対する効果は期待されるが,より有効な化学療法の検討が必要であると考えられた.
著者
竹森 繁 田澤 賢次
出版者
富山医科薬科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1997

現在の温熱療法の主流は誘電加温法であるが,癌局所のみを選択的に加温するのは困難である.一方,電磁誘導加温法では選択的な加温が可能である.過去に磁性体としてDextran Magnetite(DM),Thermosensitive magneto-liposome(TMs)を用いた方法を開発し,その特性・治療効果について報告してきた.TMsは内部に封入した抗癌剤などの薬剤を温度感受性に徐放する性質を有し,選択的温熱化学療法が可能であるが,粒子径が小さく塞栓作用が弱かった.この問題点を解決すべく,新たにDMアルブミンマイクロスフェア(DM-AMs)を開発し,誘導加温法を行い,その特性と新しい温熱治療法について検討した.DM-AMsの粒径は条件を変更することで任意に作製でき,今回の実験には粒径4-6μm,鉄含有量39.6%のものを用いた.前年度の実験で,出力7kW,周波数500KHzの誘導加温装置と,光センサー式温度測定装置を用いた計測では,in vitroではDM-AMsの濃度20mg/mlで6℃/3分,10mg/mlで6℃/7分の温度上昇,in vivoではラットの肝尾状葉に経動脈的に投与し塞栓後,誘導加温を行ったところ,肝尾状葉は43℃に加温された.直腸温は36.7℃であり,投与局所のみ加温された.組織学的所見では,肝尾状葉の類洞,肝動脈は塞栓され,腫瘍内へもDM-AMsが取り込まれていた.塞栓加温後3日目の肝臓の病理組織所見では,辺縁部の腫瘍細胞は粗な配列を示し,他の部分は壊死と繊維化が始まっていた.以上のようにDMアルブミンマイクロスフィアによる塞栓を併用した誘導加温法は,有意に肝実質を加温することが可能であった.抗癌剤を同時に封入することで,薬剤を徐放性に放出する性質を合わせ持つことが期待され,十分量を塞栓することにより腫瘍内組織のみを選択的に加温し,局所の温熱化学療法を行える可能性が示唆された.本研究結果については第14,15回日本ハイパーサーミア学会において発表した.