著者
半明 敬子 並川 宏英 斉藤 智宏 大上 英夫 田澤 賢次
出版者
富山大学
雑誌
富山医科薬科大学看護学会誌 (ISSN:13441434)
巻号頁・発行日
vol.2, pp.7-16, 1999-03
被引用文献数
2

大腸癌発癌抑制作用が明らかとなっているアップルペクチンの作用機序の解明を目的に, アップルペクチン由来のオリゴ糖を用いて活性酸素に対する効果を分析し, 市販されている他のオリゴ糖やその関連物質とも比較した.アップルペクチン由来のオリゴ糖は平均重合度により, pos-S, pos-M, pos-L, pos-LLに分け, さらにpos-Sを121℃30分加熱し, pos-Hとした.活性酸素に対する効果はESRスピントラッピング法を行い, その抑制率から検討した.その結果, アップルペクチン由来のオリゴ糖は活性酸素抑制効果を持ち, ・02一に対してはpos-H(82.3%), pos-S(48.9%), ・OHではペクチンオリゴ糖(88.6%), pos-H(87.2%)であり, 加熱すると更に強いSOD様活性(26.7unit/ml)を示した.以上から, アップルペクチンの発癌抑制作用の一端に活性酸素抑制があることが示唆された.
著者
田中 愛子 関 太輔 落合 宏 田澤 賢次
出版者
富山医科薬科大学看護学会
雑誌
富山医科薬科大学看護学会誌 (ISSN:13441434)
巻号頁・発行日
no.2, pp.49-58, 1999-03

消毒剤の皮膚刺激性を成人30名の前腕の皮膚を用いて検討した.臨床で繁用される消毒剤の調査結果をもとに, ポビドンヨード製剤(PVP-1), 日局消毒用エタノール(EtOH), グルコン酸クロルヘキシジン製剤(CHG), およびチオ硫酸ナトリウム製剤(STS)を選択し, 対照群として生理的食塩水(SCI)を用いた.消毒剤塗布部に加え無処理の皮膚において, 単回及び一週間の連続使用後の皮膚表面のpH, 角質水分量, 経表皮水分喪失量, 皮表皮脂量の生理機能の変化を多角的に検討し, 皮膚刺激の調査も加えた.健康な皮膚の表面はpH5.5~7.0であり, 今回使用した消毒剤のうちPVP-I, CHGの塗布部では低値を示し, STSの塗布部では高値を示していたが, pHはいずれにおいても生理的中性範囲内に留まり, 消毒剤の刺激に対する皮膚の緩衝作用が有効に働いていた.肉眼的皮膚刺激, 皮表皮脂量は, どの薬剤も有意差は認められなかったが, 消毒剤一週間連続使用後のPVP-I, EtOH, CHG塗布部においては, 角質水分量が低値を示し, 皮膚刺激が長期にわたると角質水分保持能が低下する可能性が示唆された.
著者
小池 潤 田澤 賢次 並川 宏英 伊藤 佳代子 八塚 美樹 安田 智美 小林 祐子 梶原 睦子 大上 英夫 斎藤 智裕
出版者
富山医科薬科大学看護学会
雑誌
富山医科薬科大学看護学会誌 (ISSN:13441434)
巻号頁・発行日
vol.3, pp.153-160, 2000-04

十全大補湯, 四物湯, 補中益気湯, 小柴胡湯の経口投与は実験的ラット肝転移を抑制し, 十全大補湯と四物湯はマクロファージを, 補中益気湯はNK細胞を活性化するが, これら漢方方剤における活性酸素消去能の特徴を検討した.上記を含めて9種類の漢方方剤を検討したところ, ・O_2^-と・OH(Fenton反応・UV照射)の消去能の総和では小柴胡湯が最も強く, 温清飲, 補中益気湯十全大補湯四物湯人参養栄湯の順であった.更にこれら9種類の構成生薬23種類別における活性酸素消去能の検討の結果, 漢方方剤の特徴として十全大補湯, 四物湯温清飲は・O_2^-を, 補中益気湯と小柴胡湯は・OHを抑える傾向がみられ, ・O_2消去能の高い漢方方剤はマクロファージ活性に, ・OH消去能の高い漢方方剤はNK細胞活性に関与するという可能性が示唆された.
著者
八塚 美樹 和田 重人 原 元子 松井 文 駒井 希望 安田 智美 吉井 美穂 田澤 賢次
出版者
Japanese Society for Thermal Medicine
雑誌
日本ハイパーサーミア学会誌 (ISSN:09112529)
巻号頁・発行日
vol.21, no.4, pp.231-236, 2005-12-01 (Released:2010-01-29)
参考文献数
9
被引用文献数
4 6

遠赤外線温熱療法は, 免疫賦活作用を有する癌治療法として, 今改めて注目されている.その特徴は相補・代替医療の特徴を備え, 西洋医学単独では解決しえない病態や未病への治療となる新たなる領域である.そこで, 今回, 肩こり, 不眠, 冷え等の体調の不良を訴える人を対象に, 遠赤外線温熱刺激による効果を, 気分プロフィール尺度 (POMS) を用いて心理的側面の変化から検討した.結果として, 温熱刺激により「抑うつ-落ち込み」, 「怒り-敵意」, 「混乱」においてPOMS評点の有意な低下, 「緊張-不安」, 「疲労」の低下傾向が認められ, 温熱刺激が心理的側面に影響を与えることが示唆された.
著者
佐々木 祐子 安田 智美 八塚 美樹 田澤 賢次
出版者
新潟青陵大学・新潟青陵大学短期大学部
雑誌
新潟青陵大学紀要 (ISSN:13461737)
巻号頁・発行日
vol.3, pp.133-139, 2003-03-10
被引用文献数
1

本研究では,スイートオレンジ精油の吸入が人に及ぼす影響を,自律神経と心理面の両側面から検討した.被験者は健康な若年成人女性15名とし,影響評価の指標として,自律神経系に関してはストレスアナライザーを,心理面に関しては日本語版感情プロフィール検査(POMS)と官能評価(評定法)を用いた.その結果,ストレスアナライザーではストレス負荷前後でコントロール群,アロマ群共に導電率,静電容量で有意な減少を確認することが出来た.また,コントロール群とアロマ群の間については有意な差は確認できなかったが,静電容量においてアロマ群は減少傾向にあった.次にPOMSに関しては,ストレス負荷前後においてコントロール群は「活気」と「抑うつ」に有意な差がみられた.これに対してアロマ群では「抑うつ」のみ有意な変化がみられ,「活気」に関しては有意な差がみられなかった.最後に官能評価においては,スイートオレンジを「好き群」と「どちらでもない群」では「気分が休まる」,「快い」の項目で差がみられ,嗜好の差によって違いがみられた.
著者
前川 厚子 安藤 詳子 神里 みどり 楠神 和男 新藤 勝久 田澤 賢次 門田 直美
出版者
名古屋大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2002

「ストーマ保有者の生きる意欲とスキンケア行動にストーマ看護サービスが及ぼす影響」について当該3年間にわたり研究した。ストーマケアとそのリハビリテーションは医師からがんや炎症性腸疾患などの病名を告げられ、手術の説明を受けた時が始発であり、回復期、退院後の生活維持期、終末期までのライフスパンを含む。ストーマ保有者への聞き取り、患者会への参加観察と質問紙調査を通して課題を掘り下げ、以下を明らかにした。【成果の概要】1)ストーマ保有者の加齢に伴う課題:65歳以上の比率が60%を超え、生活課題は介護問題から緩和ケアまで拡大していた。虚弱・要介護状態にある高齢ストーマ保有者へのQOL保持、看看連携、訪問看護師と介護職の機能分担、ならびに終末期ケアの在宅基盤整備が重要であった。2)炎症性腸疾患によるストーマ保有者の課題:平成15年全国患者会調査で2,175名中285名(13.1%)、平均年齢39.8±12.9歳で性比1.6:1であった。手術創、ストーマ周囲と肛門周囲皮膚ケアのニーズは81%であった。人生の「生きがいなし」と答えたものが30%を占め、継続ケア提供時にはメンタルサポートが不可欠と考えられた。3)ストーマ保有者のライフサイクルと課題:多様な価値観と人生経験や生活背景について配慮をしながら個別的なケアを提供する必要がある。4)QOL課題:ストーマ造設に関連した治療の成績は向上し、5年無再発生存率は高くなってきたが、主観的な健康状態とストーマの局所状況はQOLと密接な関連を持つので、ケア困難時のマネジメントについては事例の集積と人的資源の整備が必要である。
著者
竹森 繁 田澤 賢次
出版者
富山医科薬科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1997

現在の温熱療法の主流は誘電加温法であるが,癌局所のみを選択的に加温するのは困難である.一方,電磁誘導加温法では選択的な加温が可能である.過去に磁性体としてDextran Magnetite(DM),Thermosensitive magneto-liposome(TMs)を用いた方法を開発し,その特性・治療効果について報告してきた.TMsは内部に封入した抗癌剤などの薬剤を温度感受性に徐放する性質を有し,選択的温熱化学療法が可能であるが,粒子径が小さく塞栓作用が弱かった.この問題点を解決すべく,新たにDMアルブミンマイクロスフェア(DM-AMs)を開発し,誘導加温法を行い,その特性と新しい温熱治療法について検討した.DM-AMsの粒径は条件を変更することで任意に作製でき,今回の実験には粒径4-6μm,鉄含有量39.6%のものを用いた.前年度の実験で,出力7kW,周波数500KHzの誘導加温装置と,光センサー式温度測定装置を用いた計測では,in vitroではDM-AMsの濃度20mg/mlで6℃/3分,10mg/mlで6℃/7分の温度上昇,in vivoではラットの肝尾状葉に経動脈的に投与し塞栓後,誘導加温を行ったところ,肝尾状葉は43℃に加温された.直腸温は36.7℃であり,投与局所のみ加温された.組織学的所見では,肝尾状葉の類洞,肝動脈は塞栓され,腫瘍内へもDM-AMsが取り込まれていた.塞栓加温後3日目の肝臓の病理組織所見では,辺縁部の腫瘍細胞は粗な配列を示し,他の部分は壊死と繊維化が始まっていた.以上のようにDMアルブミンマイクロスフィアによる塞栓を併用した誘導加温法は,有意に肝実質を加温することが可能であった.抗癌剤を同時に封入することで,薬剤を徐放性に放出する性質を合わせ持つことが期待され,十分量を塞栓することにより腫瘍内組織のみを選択的に加温し,局所の温熱化学療法を行える可能性が示唆された.本研究結果については第14,15回日本ハイパーサーミア学会において発表した.
著者
吉井 美穂 八塚 美樹 安田 智美 木本 久子 亀谷 由美 田澤 賢次
出版者
富山大学
雑誌
富山医科薬科大学看護学会誌 (ISSN:13441434)
巻号頁・発行日
vol.5, no.2, pp.103-107, 2004-09
被引用文献数
4

私たちは,了解の得られた看護学科4年次生60名を対象にSD法(形容詞23対)を用いて成人看護学(急性期)実習前後の手術に関するイメージ調査をおこなった.実習前の手術に関するイメージは,「清潔な」「特色のある」「激しい」「固い」「はりつめた感じ」「男性的な」「ちから強い」「変化に富んだ」「特色のある」「テンポの速い」「せわしない」「動的」「クールな」「不安定な」であった.実習前に比べて,「楽しみである-憂うつである」「好き-嫌い」「明るい-暗い」「親しみやすい-親しみにくい」「のどかな-緊迫した」「激しい-穏やかな」「はりつめた-ゆったりした」「生き生きした-生気のない」「和やかな-とげとげした」の9項目で差が見られた.イメージは,ある対象に対するその人の過去経験や感情の評価などの心的過程のはたらきの総体を反映し,否定的なイメージは,消極的や無気力な行動を生み,肯定的なイメージは,積極的行動を生み出すと考えられる.今回調査した結果,手術に関する肯定的なイメージへ変化しており,学生の実習態度の向上に少なからず効果的に作用するものと考えられた.