著者
藤﨑 万裕 竹田 香織 武田 賢 鈴木 貴 大森 純子
出版者
日本保健医療福祉連携教育学会
雑誌
日本保健医療福祉連携教育学会学術誌・保健医療福祉連携 (ISSN:18836380)
巻号頁・発行日
vol.14, no.2, pp.164-173, 2021 (Released:2021-12-07)
参考文献数
22

【目的】医学部保健学科3専攻4年次学生を対象とする「チーム医療実習」を実施し,学生の自己評価を用いて教育効果を評価する。 【方法】実習後に「チーム医療実習」の目的と目標の到達度を測定した。また,実習前,中盤,実習後に,Interprofessional Competency Assessment Scale for Undergraduates(以下,ICASU)を用いて多職種連携能力に関する学生の自己評価を収集し,3時点間の比較をカイ2乗検定で行い,傾向性の検定としてMantel-Haenszal test for trendを実施した。 【結果】132名から有効回答を得た。実習の目的・目標到達度を肯定的に答えた者は94.7~98.5%だった。ICASUのほぼすべての項目で,実習前,中盤,実習後の順に「できる」と答えた者の割合が増加した。 【結論】「チーム医療実習」の内容は,学生が実習目的・目標に到達でき,多職種連携能力を短期間で段階的に高められる内容であった。
著者
田口 敦子 村山 洋史 竹田 香織 伊藤 海 藤内 修二
出版者
日本公衆衛生学会
雑誌
日本公衆衛生雑誌 (ISSN:05461766)
巻号頁・発行日
vol.66, no.11, pp.712-722, 2019-11-15 (Released:2019-11-26)
参考文献数
25

目的 地域保健に関わる住民組織には食生活改善推進員,健康づくり推進員,母子保健推進員,愛育班等がある。これらの住民組織は,行政によって育成・支援され,住民の身近な存在として,住民への健康情報の提供や意識啓発を行っている。その活動効果が報告されている一方で,成り手の減少等の課題がある。そこで,本研究では,全国調査により地域保健に関わる4つの住民組織の特徴と課題を明らかにすることを目的とした。これにより,住民組織の養成・支援の方策を立てるのに有益な資料となり得ることを目指す。方法 対象は,全国の市町村1,873か所であった。全国の市町村のうち政令指定都市は行政区ごとを対象とし,特別区は除外した。市町村自治体の健康増進担当者を対象に,メールまたは郵送にて調査を実施した。調査期間は2017年2月~3月末であった。食生活改善推進員,健康づくり推進員等,母子保健推進員等,愛育班について,それぞれ住民組織の設置の有無,組織の設立年,会員数,最も多くを占める年代,メンバーの主な選出方法,等について尋ねた。組織の現在の課題は12項目を6件法(1=全くそう思わない~6=非常にそう思う)で尋ねた。活発に活動しているメンバーの割合を0~10割の範囲で尋ねた。結果 全国の市町村808件の回答を得た(有効回答数805件,有効回答率43.0%)。設置の有無は,食生活改善推進員が最も多く全対象市町村の84.7%であり,続いて健康づくり推進員等(64.3%),母子保健推進員等(26.4%),愛育班(10.1%)であった。組織の課題について「非常にそう思う」,「そう思う」,「まあそう思う」の回答を合計した割合は,「新しいメンバーがなかなかみつからない」,「活動の対象者が固定化している」等で4組織共に50%以上であった。また,4つの組織に共通して「活動を楽しめていないメンバーが多い」,「仕事や介護等の理由により活動への関わり方に制約があるメンバーが多い」,「活動の目的がメンバー全体で共有されていない」の課題は,組織の中で活発に活動しているメンバーの割合と,中程度または弱い負の相関がみられた。結論 4つの住民組織の特徴には違いもみられたが,組織の課題は全国的に共通するものが多いことが明らかになった。
著者
伊藤 海 田口 敦子 松永 篤志 竹田 香織 村山 洋史 大森 純子
出版者
日本公衆衛生学会
雑誌
日本公衆衛生雑誌 (ISSN:05461766)
巻号頁・発行日
vol.67, no.5, pp.334-343, 2020-05-15 (Released:2020-06-02)
参考文献数
32

目的 介護保険制度が2000年に導入され,高齢社会の到来を見越した動きが高まり,互助の重要性が国として認識され始めた。本研究は,近年の互助の定義と構成概念を明らかにし,互助の取り組みを拡充する方策を検討することを目的とした。それにより,地域包括ケアシステムの構築に向けた互助拡充に資することを目指す。方法 Rodgersの概念分析法を用いた。データベースは医学中央雑誌web版に加え,CiNii Articlesを用いた。タイトルまたは抄録に「互助」を含む文献を検索した。検索式は「互助/TA」と設定した。検索期間は2000年以降とした(検索日2016年8月30日)。30件の文献をランダムサンプリングにより選定し,そこにランドマークとなる文献を加えた全32件を分析対象とした。分析は,属性(互助の特性),先行要件(互助に影響する要因),帰結(互助に期待される成果)の3つの枠組みで質的に行った。結果 互助の特性として,【住民間の生活課題に関する共感体験】,【互いに補おうとする住民の自発的な意識】,【地域の生活課題を解決し合う住民の相互行為】の3つのカテゴリが抽出された。互助に影響する要因として,【自助や共助・公助のみでは解決できない生活課題の存在】,【住民間の交流の存在】,【住民間の生活課題の共有】,【住民主体の支え合いを推進する公的仕組み】の4つのカテゴリが挙がった。互助に期待される成果として,【住民の生活課題の解決】,【住民の自助意識の向上】,【住民の役割や生きがいの創出】,【住民間の交流やつながりの促進】の4つのカテゴリが抽出された。結論 互助は,「地域の生活課題を解決し合う住民の相互行為。また,生活課題に対する共感体験,および互いに地域の生活課題を補おうとする自発的な意識を住民が持つこと」と定義された。また,互助の拡充に向けて必要な対策として,住民が他者への共感を持つこと,互助で取り組むことで得られる住民の利益を住民自身が理解すること,住民主体の支え合いでありつつも公的な仕組みがあることの必要性が示唆された。