著者
寺尾 詩子 山崎 裕司 横山 仁志 大森圭貢 笠原 美千代 平木 幸治
出版者
高知リハビリテーション学院
雑誌
高知リハビリテーション学院紀要 = Journal of Kochi Rehabilitation Institute (ISSN:13455648)
巻号頁・発行日
vol.5, pp.1-6, 2004-03-31

本研究の目的は,昇段動作に必要な下肢筋力水準について検討することである.対象は,運動器疾患を有さない高齢患者166名(74.4歳)である.昇段能力は高さが40cm,30cm,20cm,10cmの練習台を用い,上肢の支持がない状態での昇段の可否を調査した.下肢筋力は,椅子座位,膝関節屈曲度位での等尺性膝伸展筋力を測定した.昇段能力が優れた群において膝伸展筋力は有意に高値を示した(p<0.001).膝伸展筋力が体重の17%を下回る場合,いずれの段差においても昇段は不可能であった.筋力が30%を上回る場合,全ての症例が10cmの昇段が可能で,80%の症例は20cmの昇段が可能であった.筋力が40%を上回る場合,80%の症例が30cmの昇段が可能であった.さらに,筋力が50%を上回る場合,80%の症例が40cmの昇段が可能であった.本研究から,高齢患者における昇段能力の規定要因としては膝伸展筋力が重要であり,昇段動作が手すりなしで自立するためには最低限の下肢筋力が必要なことが示唆された.
著者
大森 圭貢 横山 仁志 青木 詩子 笠原 美千代 平木 幸冶 山崎 裕司 笹 益雄
出版者
公益社団法人日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.31, no.2, pp.106-112, 2004-04-20
被引用文献数
14

本研究は,立ち上がり動作が障害される下肢筋力水準を明らかにすることを目的として,等尺性膝伸展筋力と立ち上がり能力の関連について検討した。対象は,運動器疾患を有さない65歳以上の高齢患者205名である。立ち上がり動作は,座面高40cm,30cm,20cmの台からの立ち上がりの可否を調査した。等尺性膝伸展筋力は,腰掛け座位で下腿を下垂させた肢位での筋力を徒手筋力測定器によって測定し,左右の脚の平均値を体重で除した値を百分率で表した。単変量解析によって,座面高40cm台からの立ち上がり不可能群,40cm可能群,30cm可能群,20cm可能群を比較した結果,年齢,身長,体重,Body Mass Index,等尺性膝伸展筋力に有意差を認めた。ロジスティック解析では,等尺性膝伸展筋力のみが,各座面高からの立ち上がりの可否に有意に影響を与えていた。等尺性膝伸展筋力が35%,45%,55%を上回った場合,それぞれ全ての者が40cm台,30cm台,20cm台からの立ち上がりが可能であった。一方,等尺性膝伸展筋力がこれらの値を下回る場合,筋力の低下に従って各座面高からの立ち上がり可能者の割合は減少した。等尺性膝伸展筋力が20%を下回った場合,40cm台,30cm台からの立ち上がり可能者を認めなかった。同様に等尺性膝伸展筋力が30%を下回った場合,20cm台からの立ち上がり可能者を認めなかった。これらのことは,高齢患者の等尺性膝伸展筋力と立ち上がり能力が密接に関連することを示しており,等尺性膝伸展筋力が一定水準を下回った場合,立ち上がり動作が困難になると考えられた。