著者
青木 詩子 山崎 裕司 青木 治人
出版者
日本理学療法士学会
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.25, no.2, pp.77-81, 1998-03-31 (Released:2018-09-25)
参考文献数
1
被引用文献数
1

階段を前向きに降りること(前方アプローチ)が困難な片麻痺患者に対し,後ろ向きに降りる方法(後方アプローチ)を試み,その有用性について検討した。対象は片麻痺患者13例(年齢58.8 ± 15.8歳)で,前方アプローチによる階段の降りは,13例中5例が不可能であった。これらの症例に対し,前方アプローチと後方アプローチを施行し,それぞれの可否,不安感,所要時間,動作パターンを調査した。後方アプローチは全例が階段の降りが可能となり,階段の降りにおける不安感の比較でも,前方アプローチに比べ後方アプローチにおいて有意に不安感は小さかった。階段降りの所要時間は,後方アプローチと前方アプローチの間に有意な差を認めなかった。以上のことから,階段の降りが困難な片麻痺患者に対しては,後方アプローチを指導することが有効と考えられた。
著者
大森 圭貢 横山 仁志 青木 詩子 笠原 美千代 平木 幸冶 山崎 裕司 笹 益雄
出版者
公益社団法人日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.31, no.2, pp.106-112, 2004-04-20
被引用文献数
14

本研究は,立ち上がり動作が障害される下肢筋力水準を明らかにすることを目的として,等尺性膝伸展筋力と立ち上がり能力の関連について検討した。対象は,運動器疾患を有さない65歳以上の高齢患者205名である。立ち上がり動作は,座面高40cm,30cm,20cmの台からの立ち上がりの可否を調査した。等尺性膝伸展筋力は,腰掛け座位で下腿を下垂させた肢位での筋力を徒手筋力測定器によって測定し,左右の脚の平均値を体重で除した値を百分率で表した。単変量解析によって,座面高40cm台からの立ち上がり不可能群,40cm可能群,30cm可能群,20cm可能群を比較した結果,年齢,身長,体重,Body Mass Index,等尺性膝伸展筋力に有意差を認めた。ロジスティック解析では,等尺性膝伸展筋力のみが,各座面高からの立ち上がりの可否に有意に影響を与えていた。等尺性膝伸展筋力が35%,45%,55%を上回った場合,それぞれ全ての者が40cm台,30cm台,20cm台からの立ち上がりが可能であった。一方,等尺性膝伸展筋力がこれらの値を下回る場合,筋力の低下に従って各座面高からの立ち上がり可能者の割合は減少した。等尺性膝伸展筋力が20%を下回った場合,40cm台,30cm台からの立ち上がり可能者を認めなかった。同様に等尺性膝伸展筋力が30%を下回った場合,20cm台からの立ち上がり可能者を認めなかった。これらのことは,高齢患者の等尺性膝伸展筋力と立ち上がり能力が密接に関連することを示しており,等尺性膝伸展筋力が一定水準を下回った場合,立ち上がり動作が困難になると考えられた。