著者
菅野 陽平 坂田 こずえ 中村 公亮 野口 秋雄 福田 のぞみ 鈴木 智宏 近藤 一成
出版者
公益社団法人 日本食品衛生学会
雑誌
食品衛生学雑誌 (ISSN:00156426)
巻号頁・発行日
vol.58, no.3, pp.113-123, 2017-06-25 (Released:2017-07-07)
参考文献数
15
被引用文献数
7

ツキヨタケは,シイタケやヒラタケ,ムキタケと誤認されやすい毒キノコの一種で,日本でのキノコによる食中毒の主要な原因キノコである.本研究では,ツキヨタケを迅速に判別する分子生物学的手法としてPCR-RFLPを用いた判別法を構築した.Sau96I, Bpu10I, SfcI, DrdI/HincIIの4組の制限酵素を用いたPCR-RFLPにより,有毒のツキヨタケと食用キノコのシイタケ,ムキタケ,ヒラタケを明確に判別することに成功した.また,加熱調理や消化によりDNAの一部が断片化した試料でも判別可能な200 bp程度の領域を対象としたShort PCR-RFLPも構築し,リアルタイムPCRによる確認試験法についても検討した.これらは,ツキヨタケが疑われる食中毒事例の原因究明に有効な検査法として有用と考えられた.
著者
菅野 陽平 坂田 こずえ 中村 公亮 野口 秋雄 福田 のぞみ 鈴木 智宏 近藤 一成
出版者
公益社団法人 日本食品衛生学会
雑誌
食品衛生学雑誌 (ISSN:00156426)
巻号頁・発行日
vol.58, no.3, pp.113-123, 2017
被引用文献数
7

<p>ツキヨタケは,シイタケやヒラタケ,ムキタケと誤認されやすい毒キノコの一種で,日本でのキノコによる食中毒の主要な原因キノコである.本研究では,ツキヨタケを迅速に判別する分子生物学的手法としてPCR-RFLPを用いた判別法を構築した.Sau96I, Bpu10I, SfcI, DrdI/HincIIの4組の制限酵素を用いたPCR-RFLPにより,有毒のツキヨタケと食用キノコのシイタケ,ムキタケ,ヒラタケを明確に判別することに成功した.また,加熱調理や消化によりDNAの一部が断片化した試料でも判別可能な200 bp程度の領域を対象としたShort PCR-RFLPも構築し,リアルタイムPCRによる確認試験法についても検討した.これらは,ツキヨタケが疑われる食中毒事例の原因究明に有効な検査法として有用と考えられた.</p>
著者
高畠 令王奈 大西 真理 真野 潤一 岸根 雅宏 曽我 慶介 中村 公亮 近藤 一成 橘田 和美
出版者
公益社団法人 日本食品衛生学会
雑誌
食品衛生学雑誌 (ISSN:00156426)
巻号頁・発行日
vol.61, no.6, pp.235-238, 2020-12-25 (Released:2020-12-25)
参考文献数
10
被引用文献数
1

安全性審査済み遺伝子組換え(GM)トウモロコシおよびダイズの粉砕試料中の混入率を,重量混合比として算出するためには,内標比が必要である.内標比は,GMダイズに関しては,リアルタイムPCR新機種QuantStudio5, QuantStudio12K Flex, LightCycler 96およびLightCycler 480において,組換え配列と内在性配列のコピー数比を基に既に測定されているが,GMトウモロコシに関しては未対応であった.本研究では,GMトウモロコシのスクリーニング検査法の対象であるカリフラワーモザイクウイルス35Sプロモーター,GA21構造特異的領域,MIR604系統特異的領域,MIR162系統特異的領域において,上記リアルタイムPCR4機種を用いて内標比を算出した.
著者
鈴木 彰 Duc Hoang Pham Nguyen 中村 公亮 穐山 浩 笠原 義正
出版者
日本食品化学学会
雑誌
日本食品化学学会誌 (ISSN:13412094)
巻号頁・発行日
vol.18, no.1, pp.18-24, 2011

2004年に、木材腐朽性の担子菌スギヒラタケを摂食した人、とりわけ慢性腎臓病患者に深刻な急性脳症が大発生した。急性脳症を引き起こす要因の主体は依然未解明である。これは、同菌の生長が極度に遅いことに一部起因している。このため、様々な分野の研究の進展に資する同菌の栄養生長に適する培地の探索を試みた。日本各地の地理的に異なる地点のスギとアカマツの枯木から分離した同菌の15菌株をポテトデキストロース寒天培地(PDA)で培養したところ、生長速度のみならずコロニー形態にも著しい変異が存在することが明らかになった。生長の速い5菌株を選抜し、5種類の液体培地[ポテトデキストロース培地(PD培地)、麦芽エキス・酵母エキス培地(MY培地)、ジャガイモ抽出液・ニンジン抽出液培地(PC培地)、甘酒培地、太田氏培地]で20℃、暗黒下で8週間、静置培養したのち、各菌株の乾燥重を量った。同菌の乾燥生物量を指標とした生長は、PD培地で最大値が得られ、次いで太田氏培地、MY培地、甘酒培地、PC培地の順となった。同一培地での液体培養において、いずれの供試菌株ともに生物量に顕著な変異がみられ、栄養菌糸体には発育不全の分枝が高頻度に発生しており、栄養生長が極めて遅い一因となっていると推察される。これらの結果から、日本産のスギヒラタケの個体群には顕著な生長変異が存在することが判明した。以上から、今後、栄養生長能の高いスギヒラタケ菌株を選び、PD培地や太田氏培地を用いて培養実験を行なえば、同菌の菌体化学成分と急性脳症の発症との関係の解明に寄与すると期待される。
著者
岸根 雅宏 野口 秋雄 真野 潤一 高畠 令王奈 中村 公亮 近藤 一成 橘田 和美
出版者
公益社団法人 日本食品衛生学会
雑誌
食品衛生学雑誌 (ISSN:00156426)
巻号頁・発行日
vol.59, no.3, pp.151-156, 2018-06-25 (Released:2018-07-21)
参考文献数
15
被引用文献数
2

過去の検討によってDNA検出が不可能であった高度加工食品(しょうゆ,コーンフレーク,でんぷん糖,甜菜糖,植物油など)については,現在遺伝子組換え表示対象外となっている.われわれは,それら高度加工食品のうち,水飴,甜菜糖および植物油を対象として,最新のDNA抽出キットを用いることでDNAが検出可能であるか検討を行った.食品原材料植物の種特異的内在性遺伝子DNAの検出を指標とした結果,いずれの試料においてもDNA検出可能と判定された試料はなかった.DNAが検出されなかった試料の大部分は,抽出DNAへのPCR阻害物質の混入は認められず,抽出DNA量がPCRによる検出限界以下であることが原因であると考えられた.