著者
笹田 耕一 松本 行弘
雑誌
情報処理学会論文誌プログラミング(PRO) (ISSN:18827802)
巻号頁・発行日
vol.10, no.3, pp.16-16, 2017-06-16

マルチスレッドプログラミングは,共有するデータに対して,複数のスレッドから同時に読み込み,書き込みを行うとデータレースなどの問題を発生させるため,排他制御などの同期を適切に行わねばならず,難しい.この問題は,スレッドが変更可能なデータを簡単に共有できるため生じるので,そのような共有を制限する方法が必要である.プログラミング言語Rubyの次期メジャーバージョンであるRuby 3では,マルチスレッドプログラミングの持つ難しさを緩和するため,“Guild” というRuby向けの新しい並行実行モデルを検討している.インタプリタは1つ以上のGuildを持つ.変更可能なすべてのオブジェクトはある1つのGuildに所属し,Guild間では,変更可能なオブジェクトを共有しない.ただし,不変オブジェクトや,クラスやモジュールは共有する.Guildは1つ以上のスレッドを持ち,異なるGuildは並列に実行する.Guild間の通信はチャネルを通して行い,変更可能なオブジェクトをGuild間で通信するにはコピーと移籍という2つの方式を提供する.移籍は,所属するGuildを変更する操作であり,単なるコピーより軽量となる.性能などの観点から,変更可能なオブジェクトを共有しなければならない場合,特別なデータ構造を提供することができる.本提案は,既存のアイデアの「いいとこどり」を狙ったものである.本発表では,この並行実行モデルの目論見について議論する.
著者
松本 行弘 笹田 耕一
雑誌
情報処理
巻号頁・発行日
vol.56, no.12, pp.1156-1159, 2015-11-15

プログラミング言語Rubyは2013年に20周年を迎えた.2003年に本誌に寄稿した「Rubyの真実」を振り返り,「20年目のRubyの真実」としてまとめる.
著者
吉原 陽香 笹田 耕一 並木 美太郎
出版者
情報処理学会
雑誌
研究報告システムソフトウェアと オペレーティング・システム(OS) (ISSN:09196072)
巻号頁・発行日
vol.2010, no.4, pp.1-9, 2010-04-14

本研究では,Ruby で記述された OS である RubyOS の構成法の提案と,その実行基盤の試作を行った.また RubyOS の試作として,ポーリング方式でキーボードの入力を受け取り,画面にその文字を出力するプログラムを Ruby にて記述した.実行基盤については,既存の Ruby 処理系を OS を搭載していないハードウェア上で直接実行できるように移植した.OS を記述するために必要となる,実メモリアクセス・I/O ポートアクセスといった Ruby の言語仕様にない機能は,拡張ライブラリを自作して実装した.評価としていくつかのプログラムの実行時間の計測を行い,Ruby が OS を記述するのに十分な機能を持っているか検討した.This paper describes basic design of the 'RubyOS' operating system with programming language Ruby and its VM(Virtual Machine) for the RubyOS. For building RubyOS,the CRuby interpreter was revised and executed directly on a PC/AT compatible machine without OS. The Ruby extension libraries were implemented for physical memory and I/O port access in Ruby. In evalution, The CRuby interpreter performances were mesured on PC/AT compatible machine without OS and with Ubuntu 9.04. As the result, this Ruby environment has performance enough to build operating system.
著者
並木 美太郎 副田 俊介 繁富利恵 笹田 耕一
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会研究報告コンピュータと教育(CE) (ISSN:09196072)
巻号頁・発行日
vol.2005, no.15, pp.73-80, 2005-02-18
参考文献数
6
被引用文献数
5

文部科学省の「IT人材育成プロジェクト」において、ITに関する知識・技能を有する高校生のアイデア・スキルを発揮させることで独創性を向上させる「ITスクール」の実施例について報告する。5泊6日の合宿形式で全30名の生徒に、Squeakを用いてオブジェクト指向の概念を講義・実習し、自由研究で小規模なシステムを作成させた。結果としては、概ね好評、自由研究などでも完成度の高い作品を作成するなど、一定の効果を得ることができた。また、受講後、各高校でITの推進役を務めるなど、高度IT人材育成の役割を果たすことができた。ただ、開催形態、テーマ、時期などについてさらなる検討が必要であり、今後の課題となっている。This paper reports "IT school"that educates advanced IT knowledge and skill to improve originality for high school students.In the school planed as a part of "IT Jinzai Ikusei Project"of the Ministry of Education,the concept of object-oriented was lectured and practiced by using Squeak for 30 high school students in the training camp on the 6 days stay.Small systems in free research themes could be developed with the knowledge lectured and practiced.As the result,the students could take abilities of advanced IT and be served as the leader of IT in each high school after the school.
著者
吉原陽香 笹田耕一 佐藤未来子 並木美太郎
雑誌
第73回全国大会講演論文集
巻号頁・発行日
vol.2011, no.1, pp.173-175, 2011-03-02

本研究はオブジェクト指向スクリプト言語であるRubyでOSの資源管理機能を実装することを目標とした.Ruby処理系をOSのないハードウェア上で直接実行し,その内部でRubyスクリプトをを実行するVMや,Rubyの言語仕様を利用して,安全性が高く見通しの良い構成のOSを目指す.現時点までに,Cで書かれた既存のRuby処理系をベアマシン上に移植した.さらにOSの記述に必要となる実メモリ・I/OポートへのアクセスといったRubyの言語仕様にない機能を拡張ライブラリにて実装した.またキーボードとテキストVRAMのドライバを作成し,それらを利用するスクリプトを記述して実行を確認した.