著者
間辺 美樹 並木 美太郎 兼宗 進 間辺 美恵子 間辺 広樹
雑誌
情報処理学会論文誌教育とコンピュータ(TCE) (ISSN:21884234)
巻号頁・発行日
vol.4, no.1, pp.16-30, 2018-02-20

コンピュータやスマートフォンなどの電子機器の普及による若者の漢字離れが懸念されている.ところが,一般的な漢字学習法といえば,「繰り返し書く」など機械的反復練習から導かれる「暗記」に主眼が置かれていて,「意味の理解」を重視した漢字学習法についてはこれまで十分に議論されてこなかった.本研究では「漢字1字の意味の理解が熟語の理解につながり,熟語を介して形成される漢字ネットワークを拡大させていくことで,多くの漢字を理解できるようになる」という日本漢字能力検定1級取得者の漢字理解モデルに基づき,学習者に意味の理解の大切さを認識させる目的の漢字学習ソフト「熟語マニア」を開発した.選択肢として提示された複数の熟語の中から,意味を考えれば正しい漢字を選択できるクイズ形式のソフトである.高等学校において「熟語マニア」を用いた実験授業を行った結果,生徒の多くが意味を理解することの大切さを認識するようになった.
著者
吉原 陽香 笹田 耕一 並木 美太郎
雑誌
研究報告システムソフトウェアと オペレーティング・システム(OS)
巻号頁・発行日
vol.2010-OS-114, no.4, pp.1-9, 2010-04-14

本研究では,Ruby で記述された OS である RubyOS の構成法の提案と,その実行基盤の試作を行った.また RubyOS の試作として,ポーリング方式でキーボードの入力を受け取り,画面にその文字を出力するプログラムを Ruby にて記述した.実行基盤については,既存の Ruby 処理系を OS を搭載していないハードウェア上で直接実行できるように移植した.OS を記述するために必要となる,実メモリアクセス・I/O ポートアクセスといった Ruby の言語仕様にない機能は,拡張ライブラリを自作して実装した.評価としていくつかのプログラムの実行時間の計測を行い,Ruby が OS を記述するのに十分な機能を持っているか検討した.
著者
浅野 一成 並木 美太郎
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会研究報告システムソフトウェアとオペレーティング・システム(OS) (ISSN:09196072)
巻号頁・発行日
vol.2007, no.83, pp.87-94, 2007-08-03
被引用文献数
2

本報告では, Microperl を用いた PerlOS の試作とその評価について述べる. Microperl を拡張し,I/Oポートや実メモリへアクセスを行う機構を取り入れ,Perl メソッドコールのAPI を使うことで, Perl で割込み処理やデバイスドライバが記述できることを示す.今回は試作段階として,デバイスドライバと割込み処理を扱った.ドライバと割込み処理の実装は,キーボードについて行った.評価では,I/Oポートの入出力時間と割込みハンドラの起動時間について, C と Perl での実行時間を比較した.その結果, C に対する Perl のI/O ポート入出力時間は,最大で85%,割込みハンドラの起動時間は17%の性能比となった.各種ドライバやファイルシステムの実装・評価が,今後の課題である.This paper describes a design and evaluation for perl interpreter running on a bare machine.We propose that Extented-Microperl can access to I/O port and physical memory, and that perl program provieds device drivers and interrupt handlers using Perl method call API. This time, the updated interpreter provides device drivers and interrupt handlers. Keyboard driver and handler has been implemented. In evaluation, we have compared access time to I/O port and uptime to interrupt handler with C. As a result, each performance is 85 percent and 17 percent as fast as C code. Other device drivers and file systems are prospected.
著者
笹田 耕一 松本 行弘 前田 敦司 並木 美太郎
雑誌
情報処理学会論文誌プログラミング(PRO) (ISSN:18827802)
巻号頁・発行日
vol.48, no.SIG10(PRO33), pp.1-16, 2007-06-15

本論文ではスクリプト言語Ruby 用仮想マシンYARV: Yet Another RubyVM における並列実行スレッド処理機構の実装について述べる.Ruby はその使いやすさから世界中で広く利用されているプログラム言語である.Ruby の特徴の1 つにマルチスレッドプログラミングに対応しているという点があるが,現在広く利用されているRuby 処理系は移植性を高めるため,すべてユーザレベルでスレッド制御を行っている.しかし,このスレッド実現手法では,実行がブロックしてしまう処理がC 言語レベルで記述できない,並列計算機において複数スレッドの並列実行による性能向上ができないなどの問題がある.そこで,現在筆者らが開発中のRuby 処理系YARV において,OS やライブラリなどによって提供されるネイティブスレッドを利用するスレッド処理機構を実装し,複数スレッドの並列実行を実現した.並列化にあたっては,適切な同期の追加が必要であるが,特に並列実行を考慮しないC 言語で記述したRuby 用拡張ライブラリを安全に実行するための仕組みが必要であった.また,同期の回数を減らす工夫についても検討した.本論文では,これらの仕組みと実装についての詳細を述べ,スレッドの並列実行によって得られた性能向上について評価した結果を述べる.
著者
並木 美太郎- 長慎也
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会研究報告コンピュータと教育(CE) (ISSN:09196072)
巻号頁・発行日
vol.2005, no.123, pp.61-68, 2005-12-10
被引用文献数
3

2004年度から開始された文部科学省の「IT人材育成プロジェクト」において、ITに関する知識・技能を有する高校生のアイデア・スキルを発揮させることで独創性を向上させる「ITスクール」の2005年度の実施例について報告する。昨年度同様、5泊6日の合宿形式で全30名の生徒に、SqueakとSmalltalkを用いてオブジェクト指向の概念を講義・実習し、自由研究で小規模なシステムを作成させた。結果としては、概ね好評、自由研究などでも完成度の高い作品を作成するなど、一定の効果を得ることができた。This paper reports "IT school" that educates advanced IT knowledge and skills to improve originality for high school students. In the school planed as a part of "It Training Project" of the Ministry of Education Culture, Sports, Science and Technology in Japan, the concept of object-oriented was to educate 30 high school students and let them practice using Squeak and Smalltalk in the 6days training camp. Small-scaled systems of freely research were implemented by students with the knowledge they acquired though lecture and practice. As a result, the students could develop abilities of handing advanced IT and be experts of IT in each high school after the school.
著者
横関 隆 岡野 裕之 並木 美太郎 高橋 延匡
雑誌
情報処理学会研究報告システムソフトウェアとオペレーティング・システム(OS)
巻号頁・発行日
vol.1990, no.49, pp.1-8, 1990-06-08

本報告では,我々が研究・開発を行っているOS/omicron第3版のファイルシステム内部アーキテクチャ「ソフトウェアバス」について述べる.ソフトウェアバスはハードウェアのコモンバスシステムを参考に考案したもので,OS内部をモジュール化し各モジュールの呼び出しを,バスと呼ばれる仲介手続きを通して行うものである.この結果,OSを構成する各モジュールの独立性を高め,保守・拡張を容易に行うことができる。ソフトウェアバスを導入し,OS/omicronファイルシステムでは,モジュールの交換・単体デバッグが容易に行え,OSのプロトタイピング環境の基礎を実現した.また複数のファイルシステムが共存できるマルチファイルシステムの環境を整えた.This paper describes a "Software Bus" architecture on which OS kernel is constructed with independent modules. The idea of this architecture is based on common bus systems hardware architectures. Each module is accessed through a common bus by internal procedures and it manages many resources uniformly. We have implemented this software bus architecture on a file system of OS/omicron V3, which is designed for super personal computing and Japanese information processing.
著者
長島 和平 本多 佑希 長 慎也 間辺 広樹 兼宗 進 並木 美太郎
雑誌
情報教育シンポジウム2016論文集
巻号頁・発行日
vol.2016, pp.137-140, 2016-08-15

次期指導要領では初等中等教育でのプログラミングの充実が検討されており,実習用のPCなどに事前のインストールなどの手間をかけずにさまざまなプログラミングを行える学習環境が望まれている.そこでWebブラウザから手軽に利用できるオンラインプログラミング学習環境Bit Arrowを提案する.Bit Arrowは代表的なWebブラウザで動作し,複数のプログラミング言語を切り替えて使用できる.現在はJavaScript,C,ドリトルに対応している.教員が授業用のIDを伝えることで,生徒は教室や自宅から利用できる.作成したプログラムは自動的にサーバに保存され,教員が状況を確認したり,課題を評価したりすることが可能である.本発表ではBit Arrowの概要を紹介し,高校と大学で行ったJavaScriptとCの授業を報告する.
著者
笹田 耕一 松本 行弘 前田 敦司 並木 美太郎
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌プログラミング(PRO) (ISSN:18827802)
巻号頁・発行日
vol.48, no.10, pp.1-16, 2007-06-15
被引用文献数
2

本論文ではスクリプト言語Ruby 用仮想マシンYARV: Yet Another RubyVM における並列実行スレッド処理機構の実装について述べる.Ruby はその使いやすさから世界中で広く利用されているプログラム言語である.Ruby の特徴の1 つにマルチスレッドプログラミングに対応しているという点があるが,現在広く利用されているRuby 処理系は移植性を高めるため,すべてユーザレベルでスレッド制御を行っている.しかし,このスレッド実現手法では,実行がブロックしてしまう処理がC 言語レベルで記述できない,並列計算機において複数スレッドの並列実行による性能向上ができないなどの問題がある.そこで,現在筆者らが開発中のRuby 処理系YARV において,OS やライブラリなどによって提供されるネイティブスレッドを利用するスレッド処理機構を実装し,複数スレッドの並列実行を実現した.並列化にあたっては,適切な同期の追加が必要であるが,特に並列実行を考慮しないC 言語で記述したRuby 用拡張ライブラリを安全に実行するための仕組みが必要であった.また,同期の回数を減らす工夫についても検討した.本論文では,これらの仕組みと実装についての詳細を述べ,スレッドの並列実行によって得られた性能向上について評価した結果を述べる.In this paper, we describe an implementation of parallel threads for YARV: Yet Another RubyVM. The Ruby language is used worldwide because of its ease of use. Ruby also supports multi-threaded programming. The current Ruby interpreter controls all threads only in user-level to achieve high portability. However, this user-level implementation can not support blocking task and can not improve performance on parallel computers. To solve these problems, we implement parallel threads using native threads provided by systems software on YARV: Yet Another RubyVM what we are developing as another Ruby interpreter. To achieve parallel execution, correct synchronizations are needed. Especially, C extension libraries for Ruby which are implemented without consideration about parallel execution need a particular scheme for running in parallel. And we also try to reduce a number of times of synchronization. In this paper, we show implementations of these schemes and results of performance improvement on parallel threads execution.
著者
中原 健志 佐藤 美紀子 紫合 治 並木 美太郎
雑誌
研究報告システムソフトウェアとオペレーティング・システム(OS) (ISSN:21888795)
巻号頁・発行日
vol.2015-OS-134, no.21, pp.1-8, 2015-07-28

近年,分散処理の利用場面が増えつつあるが,多くの分散処理系では専用のプログラムを書く必要があり,プログラム変更の手間が大きい.本稿では既存のコマンドを分散して実行する分散シェルについて述べる.本シェルではデータの分割,合成とネットワークを介して利用可能なパイプの機能を追加し,コマンドをネットワークで繋がっている複数台の計算機で分散実行することでプログラムを改変せず手軽に分散処理を実現することを検討した.コマンドの分散実行については,各種の位置透過性が必要であるが,これらを分散向け OS である Plan9[1] の分散透過性を用いることでシェルに実現する.
著者
笹田 耕一 松本 行弘 前田 敦司 並木 美太郎
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌プログラミング(PRO) (ISSN:18827802)
巻号頁・発行日
vol.47, no.2, pp.57-73, 2006-02-15
被引用文献数
5

本稿ではオブジェクト指向スクリプト言語Ruby を高速に実行するための処理系であるYARV: Yet Another RubyVM の実装と,これを評価した結果について述べる.Ruby はその利用のしやすさから世界的に広く利用されている.しかし,現在のRuby 処理系の実装は単純な構文木をたどるインタプリタであるため,その実行速度は遅い.これを解決するためにいくつかの命令実行型仮想マシンが提案・開発されているが,Ruby のサブセットしか実行できない,実行速度が十分ではないなどの問題があった.この問題を解決するため,筆者はRuby プログラムを高速に実行するための処理系であるYARV を開発している.YARV はスタックマシンとして実装し,効率良く実行させるための各種最適化手法を適用する.実装を効率的に行うため,比較的簡単なVM 生成系を作成した.本稿ではRuby の,処理系実装者から見た特徴を述べ,これを実装するための各種工夫,自動生成による実装方法について述べる.また,これらの高速化のための工夫がそれぞれどの程度性能向上に寄与したかについて評価する.In this paper, we describe the implementation and evaluation results of YARV, next generation Ruby implementation. The Ruby language is used worldwide because of its ease of use. However, current interpreter is slow due to its evaluation method. To solve this problem, several virtual machine designs were proposed, but none of them exhibited adequate performance/functionality combination. Our implementation, called YARV (Yet Another Ruby VM), is based on a stack machine architecture. YARV incorporates a number of optimization techniques for high speed execution of ruby programs. In this paper, we describe the characteristics of Ruby from implementor's point of view, and present concrete solutions for these issues as well as implementation of optimization techniques. We also show how each of these optimizations contributed to the speed-up.
著者
林 寛 並木 美太郎
雑誌
情報処理学会研究報告システムソフトウェアとオペレーティング・システム(OS)
巻号頁・発行日
vol.2003, no.42(2003-OS-093), pp.119-126, 2003-05-08

今日,組込み機器の高性能化や小型化により,携帯電話や家電製品などにオペレーティングシステム(OS)が搭載されるようになった.それに伴い,リアルタイム性を持つグラフィカルユーザインタフェース(GUI)の必要性も増している.そこで,本研究ではリアルタイム性を持った組込みウィンドウシステムの開発を行っている.本稿では,本システムの中心となる描画処理に関して設計と実装について述べる.描画処理に優先度と時間制約を設定することでリアルタイムな描画処理を実現し,また,資源の少ない組込み機器へ実装するため,システム本体サイズおよび実行時の使用メモリを抑えることも考慮した.その結果,描画のリアルタイム処理を実現することができた.
著者
DouangchakSithixay 佐藤未来子 山田浩史 並木美太郎
雑誌
研究報告システムソフトウェアとオペレーティング・システム(OS)
巻号頁・発行日
vol.2013-OS-127, no.8, pp.1-10, 2013-11-26

本稿では,仮想化環境における省電力化を目的とし,消費エネルギー予測に基づいた省電力化を行う仮想マシンモニター (VMM) の設計,実装と評価について述べる.従来手法では,OS やアプリケーションを修正する必要があるが,本研究では VMM レイヤにおいて動的電圧・周波数制御 (DVFS) 時の仮想マシン (VM) ごとの演算性能,消費電力,ネットワーク I/O,ディスク I/O の予測に基づいた省電力制御を行うことで,VM のゲスト OS やアプリケーションに対して透過的に省電力を実現できるのが特徴である.本手法では,VM 実行時のキャッシュミス率やプロセッサ全体のメモリアクセス頻度などのハードウェアパフォーマンスカウンタの情報と仮想 NIC,仮想 I/O の情報を用いて,多変量回帰分析手法により求めた最適な演算性能,消費電力またはスループットをもとに DVFS 制御を実施する.実装には,Linux カーネルを用いた VMM である KVM を用いた.評価より,コア単位で DVFS 制御可能なマルチコア環境において,演算性能とスループットの条件の範囲内で VM が 1 台ある場合,最大でメモリバウンドベンチマークにて 38.3%,ディスクベンチマークにて 35.1%,ネットワークベンチマークにて 46.0%,VM が複数台ある場合,最大で 44.3% のプロセッサの消費エネルギーの削減率を確認した.
著者
玉木 裕二 森田 雅夫 並木 美太郎 高橋 延匡
雑誌
全国大会講演論文集
巻号頁・発行日
vol.40, pp.672-673, 1990-03-14

当研究室では,システムやアプリケーションの開発に,主に言語Cを使っている.また,OS/omicron上で,当研究室で設計・開発した言語CコンパイラCATが存在する.一方,プログラムの入力手段として,プログラムの編集だけでなく,論文や仕様書などの文書やデータの作成などを行う汎用のテキストエディタのALTHEAを開発し,使用している.しかし,汎用であるがゆえ,括弧の対応付けもプログラマが自分で確認しなくてはならない.編集の対象を特定のプログラミング言語に限定すれば,専用のエディタ(構造化エディタ)を開発するアプローチがある.すなわち,プログラムを構文規則に対応した構造を持つものとして扱う.本研究の目標は,言語Cを対象とした構文要素を意識したエディタを開発し,プログラミング支援環境を実現することである.本稿では,そのための手段としての言語Cインクリメンタルパーザと,それによって実現されるプログラミング支援環境について述べる.
著者
並木 美太郎 高橋 延匡
雑誌
全国大会講演論文集
巻号頁・発行日
vol.38, pp.31-32, 1989-03-15

当学科では、情報工学科の計算機初期教育として、世界最初のストアード型プログラミングの計算機EDSACを用い、過去10年にわたり成果をあげてきた。その教育システムは、(1)中型TSSシステム上に構築されたCAIシステムとソフトウェアシミュレータ (2)布線論理によるハードウェアシミュレータとマイクロプロセッサを用いたハードウェアシミュレータ (3)パーソナルコンピュータPC-9801上に構築されたCAIシステムとソフトウェアシミュレータが存在する。しかし、中型TSS上のシステムは8年、PC-9801上のものでさえ、5年が経過した。その間のハードウェアの進歩は目覚ましく、ビットマップウィンドウや日本語などユーザインターフェイスの質は格段に向上している。学生が個人の計算機を所有している例も少なくない。また、CAIの分野も人工知能の技法を取り入れた知的CAIが脚光をあびている。本報告では、これら情報工学の進歩を考慮したEDSAC教育システムの設計とともに、種々のシステムに移植可能なEDSACソフトウェアシミュレータ核の実現について述べる。
著者
柴山 守 笠谷 和比古 加藤 寧 山田 奨治 川口 洋 原 正一郎 並木 美太郎 柴山 守 石谷 康人 梅田 三千雄
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2002

本研究は、古文書翻刻支援システム開発プロジェクト(HCRプロジェクト)において、手書き文字OCR技術などを発展的に応用して、古文書文字認識システムの高精度化に関する研究を行うことである。平成14-16年度の研究期間において、主に古文書文字データベースを構築すること、及び日本語文字認識アルゴリズムの適用可能な範囲と問題点を洗い直し、以下の検討課題での研究をすすめ、成果を挙げた。(1)文字切り出し法、及び正規化法について:射影ヒストグラム、文字外形の曲率などの手法を検討し、レイアウト認識では、Hough変換による行抽出方式を提案し、文字データベースの基づく実験を進めた。(2)オフライン文字認識手法について:古文書文字認識に有効と考えられる文字切り出しと文字認識を連携処理させる方法について検討した。非線形正規化手法の研究及び実験を行った。(3)オンライン文字認識手法について:くずし字検索等に適用可能なタブレット入力によるオンライン古文書文字認識手法について検討した。また、『くずし字解読辞典』の文字画像から筆順を推定する手法の研究を行った。本成果は、電子くずし字辞典として平成17年度中に刊行する予定である。(4)東京堂出版『漢字くずし方辞典』の文字パターンを入力し、オンライン検索ソフトウェアの開発を行った。これも上記の(3)に含め、刊行予定である。(5)文字認識用文字パターン辞書として、9種類の古文書文字データベースを公開した。すべてがHCRプロジェクトのホームページは,http//www.nichibun.ac.jp/shoji/hcr/からダウンロード可能である。また、公開したソフトウェアは、2種類GetAMojiマクロ(古文書翻刻中に遭遇する不明文字(ゲタ文字)の正解候補を提示する機能)、及びWeb版GetAMoji(古文書翻刻中に遭遇する不明文字(ゲタ文字)の正解候補を提示する機能のWeb版)である。
著者
金井 遵 須崎 有康 八木 豊志樹 並木 美太郎
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D, 情報・システム (ISSN:18804535)
巻号頁・発行日
vol.90, no.6, pp.1383-1393, 2007-06-01
被引用文献数
4

本論文では,モバイル環境をはじめとしたCPUやメモリなどのハードウェア資源が制限された環境でHTTP-FUSE-KNOPPIXによる実用的なシンクライアント環境を実現するために,高速化・負荷分散機構,耐故障性機構を実装したモバイルシンクライアントサーバHTTP-FUSE-KNOPPIX-BOXを開発した.キャッシュサーバはネットワークの遅延やバンド幅を隠ぺいし,高速化するとともに,ブロックファイルを取得する一次サーバがWAN側にあり,インターネット接続がない環境でもOSを起動可能にする。また,ソフトウェアRAIDを導入し,ファイル入出力性能自体を向上させるとともに,RAIDの冗長性により耐故障性を向上させた.更に,DNSであるDNS-Balanceを改良し,サーバの負荷分散を行うとともに,サーバの障害を自動的に検知し,動的にクライアントの接続サーバを切り換えることで耐故障性を確保した.評価により,CPUやメモリなどのハードウェア制限があるサーバ環境においても,従来のシンクライアントと遜色ない性能を実現でき,障害発生時にもユーザが意識することなくシステムの正常動作が継続できることを確認した.
著者
本村 哲朗 近藤 雄樹 山田 哲也 高田 雅士 仁藤 拓実 野尻 徹 十山 圭介 斎藤 靖彦 西 博史 佐藤 未来子 並木 美太郎
雑誌
研究報告組込みシステム(EMB)
巻号頁・発行日
vol.2013-EMB-28, no.28, pp.1-6, 2013-03-06

今日の組込みシステムは,リアルタイム制御と情報処理のような独立の複数の機能を扱う必要があり,マルチコア上への搭載が有効である.この時,リソース保護のため,仮想化の一技術であるリソースパーティショニングが必要となる.我々は,リアルタイム性の実現に向けリソースパーティショニングのオーバヘッドを削減する,ハードウェア支援技術ExVisor/XVSを開発した.その主要技術は物理アドレス管理モジュールPAM*で,組込みシステムのメモリ利用方法の特徴を活かした階層のないページテーブルによるダイレクトなアドレス変換で高速化を図る.RTLシミュレーションとFPGA実装で評価を行った結果,シングルコアと比較してリソースアクセス時のオーバヘッドは高々5.6%であることを確認した.*PAM : Physical Address Management module
著者
並木 美太郎 川合 秀実
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会研究報告コンピュータと教育(CE) (ISSN:09196072)
巻号頁・発行日
vol.2007, no.12, pp.143-150, 2007-02-17

2004年度から開始された文部科学省の「IT人材育成プロジェクト」において、ITに関する知識・技能を有する高校生のアイデア・スキルを発揮させることで独倉雌を向上させる「ITスクール」の2006年度の実施について報告する。過去2年間同様、5泊6日の合宿形式で約30名の生徒に、SqueakとSmalltalkを用いてオブジェクト指向の概念を講義・実習し、自由研究で小規模なシステムを作成させた。結果としては、概ね好評、自由研究などでも完成度の高い作品を作成するなど、一定の効果を得ることができた。また、本稿では2004年からの3年間を概観する。
著者
砂田 徹也 関 直臣 中田 光貴 香嶋 俊裕 近藤 正章 天野 英晴 宇佐美 公良 中村 宏 並木 美太郎
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会研究報告システムソフトウェアとオペレーティング・システム(OS) (ISSN:09196072)
巻号頁・発行日
vol.2008, no.35, pp.163-170, 2008-04-24
被引用文献数
6

本報告は,省電力化技術であるパワーゲーティングを細粒度に施した MIPS R3000 ベースの CPU チップ Geyser-0 に対して,その上で動作する OS の試作およびその OS を用いてシミュレーションによる電力評価を行う.細粒度は,ALU,SHIFT,MULT, DIV および CP0 のそれぞれを PG の対象とすることを意味する.試作した OS は,例外・割り込み管理機能,システムコール, タスク管理機能を備えており,タイマ割込みによるマルチタスクを実現する.試作 OS によって 4 種類のベンチマークプログラムをマルチタスクで動作させた際の電力評価を行った結果,総電力で平均約 50%,リーク電力で平均約 72%の消費電力削減を実現した.This paper describes prototype of OS for processor Geyser-0 based on MIPS R3000 with a fine grain power gating technique to reduce power consumption and evaluation of power by the simulations when running the OS. The processor has power gating units such as ALU, SHIFT, MULT, DIV, and CP0. The prototype OS has the exception management, the system call, and the task management, and its OS achieves the multitask by the timer interruption. As the results of evaluation running four benchmark program on the OS and the processor, 50% working power and 72% leakage power are reduced.
著者
松尾 和弥 佐藤未来子 並木 美太郎
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会研究報告システムソフトウェアとオペレーティング・システム(OS) (ISSN:09196072)
巻号頁・発行日
vol.2007, no.36, pp.39-46, 2007-04-05
被引用文献数
1

OS をはじめとするシステム構築において、実際の計算機の動作データ、資源利用データは有用な情報となる。そこで本研究では各種アーキテクチャ対応の高速な命令、メモリアクセストレーサを構築した。構築したトレーサによって x86、ARM アーキテクチャでの実行命令列、アクセスされた物理アドレス、物理アドレスに対応する仮想アドレス、アクセス時・命令実行時の CPU 特権レベル、実行中プロセスの PID といった情報がトレースできる。構築はフリー、オープンソースの CPU エミュレータ QEMU に300行程度のコードを追加することで実現した。また、有用性を確認するために、構築したトレーサの性能評価を行い、さらに実際に構築したトレーサを省電力手法の考察に応用した例を示す。In development of computer systems such as OS, actual data about behaviour and resource usage of a computer is important. So we developed high speed tracer of executed instruction and main RAM access for various architecture. By our tracer, we can trace data about executed instructions, accessed physical and virtual memory address, CPU mode and PID on x86 and ARM. To develop our tracer, we remodeled QEMU, free and open source CPU emulator. In addition, to show the usefulness of our tracer, we evaluated the performance of our tracer and applied our tracer to the research of low power computer system.