著者
筒井 稔 柳谷 俊 加納 靖之
雑誌
京都産業大学先端科学技術研究所所報 = The bulletin of the Research Institute of Advanced Technology Kyoto Sangyo University (ISSN:13473980)
巻号頁・発行日
vol.11, pp.1-6, 2012-07

地震に伴って地殻岩盤に生じる圧電効果により、電磁波パルスが励起されるとの仮説の下、京都産業大学では地中に深さ100mのボアホールを構築し、その中に電磁波センサーを挿入して地中励起の電磁波を検出する事を目指して観測を続けている。一方、この岩盤からの電磁波励起を確認検証するために、地上の実験室で岩石に衝撃応力を印加する基礎実験を行っている。最初は効果の強い水晶における衝撃印加実験を行い、円柱状の水晶の周方向に沿った磁界が発生している事を確かめた。今回は、花崗岩への衝撃応力印加による電磁界の励起を確認するための実験を行った。一辺が10cmで長さが50cmの四角柱の花崗岩を用いて、その四角柱の側面の軸方向に沿った4か所に電界・磁界のセンサーを配置し、花崗岩の上端で軸方向に衝撃応力を印加した時の、各位置での電界・磁界の検出測定実験を行った。この実験により、電界・磁界成分ともに検出された。検出された電界・磁界波形の立ち上がり時刻は上部から下部へと少しずつ時間の遅れが認められた。この時間差から、花崗岩中の衝撃波の速度が計算でき、それは地震波のP波の速度と同等である事が明らかとなった。この事から岩盤に加わる衝撃応力によって、電界・磁界が十分に励起される事を確認した。
著者
筒井 稔
雑誌
日本地球惑星科学連合2015年大会
巻号頁・発行日
2015-05-01

京都産業大学では以前から地中で電磁波が励起されるかどうかを確かめるための観測研究を行ってきたが、周波数が数kHz については殆ど全てが雷放電によるもので、地中起源の電磁波は全く見つける事が出来なかった。それは地中媒質の電気伝導度が高いために、励起された電磁波は遠距離まで伝搬出来ないためであった。そこで2011年の12月から検出しようとする周波数を25 Hz以下にしたところ、電磁波観測点での震度が1以下であっても地震波により励起された電磁波を検出できる事を確認した。即ち、地震波が伝搬している近傍では常に電磁波が励起されている事を示した。これは地震波の波頭に電磁波放射源が載っていて、電磁波を放射しながら地震波の速度で移動している形を採っていると考えられる。放射された電磁波の地中を進む距離は短いが、容易に放射されている事が確実となった。これがMT法での測定でもco-seismic 信号として検出される理由である[1]。上記の電磁波は地震発生後のS波の伝搬時に発生しているものであって、解明したいのは地震発生以前に電磁波が発生するかどうかという問題である。これまでの電磁波観測データを調べたが、地震発生時には電磁波パルスが検出されていない。また岩石破壊実験でもマイクロ波の雑音は検出されているが、低周波の電磁波の励起は見られていない。そこで地震発生以前でも地中において電磁波が励起される可能性がある状況を考え、その検証のための研究を進めた。地下で電磁波が励起される機構としては岩盤内でのP波成分による一種の共振効果が作用していると考えている。そこで、岩盤からの電磁波放射を検証するために実験室でその模擬実験を行った。頑丈な木製の台の上に長さが50 cm程度の花崗岩の柱を2本直線状に並べ、その接触面にガラス玉を挟んだ状態としてセットする。そしてこの2本の花崗岩柱の軸に沿って外側から圧力を加えていくと、ある圧力を超えるとガラス玉が破壊される。この時、それまで花崗岩の軸に沿って掛かっていた圧力が急激に無くなる。この時、ガラス玉に接触していた面では負の衝撃が加わった事になる。この衝撃によって、花崗岩内の軸方向にはP波が伝搬する。ある程度の長さを有する花崗岩である場合はP波の振動での共振現象を引き起こす可能性がある。その振動によって強い圧電効果が生じ電磁波が放射されると考えられる。この時、電界と磁界成分の両方を検出した。この実験結果を紹介する。上記実験状況は実際の活断層を中心とした領域でも生じていると考えられる。活断層の接触面には破砕帯と呼ばれる領域があるが、そこには以前の地殻変動により岩盤から崩れた小岩石が多く存在すると考えられる。このような状況の下で、破砕帯の両側の岩盤に新たな圧力が加わり始めた場合、その圧力が地震を引き起こすよりもはるかに弱い圧力であっても、まず破砕帯にある小岩石が破壊されると考えられる。この時、両側の岩盤には負の衝撃が印加されるので、それにより岩盤内にP波が伝搬する。このP波の振動で岩盤内では圧電効果により電磁波が励起され、外部に放射される。岩盤に掛かる圧力が更に増加していくと、破壊される小岩石の数も増えてきて多くの電磁波パルスが放射される可能性がある。そうして最終的には地震を引き起こす。以上が、地震発生前に観測される電磁波パルス発生の可能性を持った仮説である。電磁波観測点から西南西の約24 kmの地点で地震が発生した。それによる地震波を電磁波観測点では検出しており、地上の電磁波センサーは磁界成分を検出した。そこでこの日の観測データを精査したところ、地震発生の約7時間前に地上センサーによって一つの電磁波パルスを検出していた。この事から、地震発生の7時間前に検出した電磁波は地震の前での小岩石の破壊時に励起されたものではないかと考えられる。今後はこの種の電磁波の検出データを集め、その強度とその後に発生する地震の規模やその発生するまでの時間との関係等を定量的に調べ、統計的な時間変化の傾向を確立すれば、地震予知の実現に繋がるものと考えている。[1] Minoru Tsutsui, Behaviors of Electromagnetic Waves Directly Excited by Earthquakes, IEEE Geoscience and Remote Sensing Letters, Vol. 11, No. 11, pp. 1961-1965, 2014.
著者
松本 紘 BOUGERET Jea ANDERSON Rog 小嶋 浩嗣 GURNETT Dona 村田 健史 笠原 禎也 八木谷 聡 臼井 英之 大村 善治 岡田 敏美 筒井 稔 橋本 弘蔵 長野 勇 木村 磐根 BOUGRET Jean-Louis ANDERSON Roger r. GURNETT D.A. BOUGERET J.L ANDERSON R.R
出版者
京都大学
雑誌
国際学術研究
巻号頁・発行日
1994

平成7年度には、GEOTAIL衛星は、地球から30Re付近の近地球軌道にあり、WIND衛星も主に、昼間側の太陽風の定常観測状態にあった。一方、同年度8月には、ロシアの衛星INTERBALLが、3月には、米国の衛星POLARが打ち上げられ、ISTP衛星による磁気圏の総合観測体制がほぼ整ったといえる。これらの衛星のうち、INTERBALL、POLAR衛星は、打ち上げ後、まもないということで、具体的な共同観測については、来年度に行われる予定であり、本年度は、主に、WIND衛星との共同観測を昨年度までのAKEBONO、Freja,ULYSSES衛星との共同観測に加えて重点的に行った。以下に、交付申請書の調査研究実施計画の項目に従って研究成果を列挙する。1.まず、惑星間衝撃波の観測でGEOTAILとWIND衛星で同時に観測を行った例において、WIND衛星で観測された磁場やプラズマの変化とそのGEOTAILでのある時間遅れでの観測、そしてそれに対応するプラズマ波動の強度の変化について解析を行った。その中には、衝撃波の到来とともにGEOTAILがバウショックを何度もよぎる現象がみられるものがあり、惑星間衝撃波の影響によりバウショックの位置が変化している様子を観測することができた。2.磁気圏昼間側のショック領域全面で発生しているといわれている2fpエミッションの観測をWIND、GEOTAIL両衛星を用いて行い、その発生時間や周波数変化の時間差から、その発生領域がやはりショック全面にあることが確認された。現在その位置的な偏りについても、より多くのデータを集めて解析を行っている。3.GEOTAILによって磁気圏内部で観測された「振幅変調をうけた電子プラズマ波」と同様な波形がWIND衛星によって太陽風中でも観測されていることがわかった。GEOTAILでの観測では、その波動の伝搬方向は外部磁場に対して平行、垂直の両者があることがわかっていたが、現在までのところWINDの方では平行伝搬のみがみつかっている。4.POLAR衛星の打ち上げに伴う共同観測体制を整えるための情報交換をアイオワ大学と行っている。5.POLAR衛星の打ち上げが遅れて本年度の3月になったため、具体的な共同観測は来年に執り行われることになる。6.本研究課題に関連して投稿された論文リストは、本報告書の研究発表欄に列挙する。以上が、交付申請書に書かれていた計画に対応する報告であるが、上述の他に、以下の項目についても共同研究を行った。1.極域で観測されるイオンサイクロトロン波とイオンコニックス分布との相関をAKEBONO衛星とFreja衛星の共同観測で明らかにした。2.極域で観測されるAKRの観測をGEOTAIL、WIND衛星で共同して行い、その観測が衛星の位置によってどのように変化してみられるかの評価をを行い、AKRの伝搬特性についての解析をおこなっている。3.太陽バースト伝搬をGEOTAIL、WIND衛星で同時に観測し、その強度を比較することにより、両者の受信機の較正を行った。