- 著者
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柳谷 俊
加藤 護
- 出版者
- 京都大学
- 雑誌
- 萌芽研究
- 巻号頁・発行日
- 2005
本研究では,近年飛躍的に性能が向上したデジタル一眼レフ・カメラをもちいて破壊に伴う発光をはじめて撮影することに成功した.えられた発光画像のなかで,特に決定的な例は,断層面が試料表面を切る線の上に発光スポットがきれいに並び,岩石のFaultingと発光の因果関係を強く示唆している.一般に,発光現象が生じる場合,そのメカニズムを特定するには,詳細な波長情報がえられる分光測定を行うのが標準的手法であるが,発光時間が数マイクロ秒以下の単発かつ局所的な現象であること,ISO3200でようやく撮影できる微弱光であり,このような光をさらに分光するには通常の分光器では困難であることがわかった.したがって本研究では,分光器の代わりにデジタル一眼レフ・カメラを使用して発光を観察することとし,シンプルな1軸圧縮破壊実験を行い,破壊時発光を撮影することを試みた.この手法は,分光器に比べて限定的ではあるが,撮影した画像から発光のおおまかな波長情報を得ることができるのに加えて,発光が生じる場所の空間的情報を得ることができる.岩石試料として,花崗岩,トーナライト,玄武岩,砂岩,大理石,珪岩を用いた.さらに花崗岩については,産地と粒径の異なる4種類を用いた.実験の結果,カメラの画像上ではっきりとした発光が確認できたのは,粒径の大きな石英を多くふくむ花崗岩と珪岩に限られた.破壊発光の色は,青系統と赤系統の2種類であり,特に青系統の発光は,珪岩でもっとも顕著に確認できるなど,石英を含む試料に特徴的に見られることから,石英の圧電効果によって生じた電場とそこでの放電がその原因であることを示唆している.いっぽう赤系統の発光は,その発光場所の分布にこれといった特徴は見られなかった.さらに赤系統の発光は,別途に行った摩擦発光とおなじ色に写ることから,破壊時のひずみエネルギーの開放にともなって高温となったスポットからの黒体放射がそのメカニズムである可能性が高い.