著者
笹 健児 川原 秀夫 箕浦 宗彦
出版者
神戸大学
雑誌
挑戦的研究(萌芽)
巻号頁・発行日
2018-06-29

当該年度は研究の4年目としてコンテナ船での実船実験について、1年目に設計した実験システムをアジア~欧州航路のコンテナ船(20,000TEU)に搭載、2019年5月 より実海域での実験を開始し現在も継続している。実船実験では船橋における気温、湿度、日射量をはじめ、本船位置、速力、海水温度、風向風速、 船体運動 等を時々刻々に観測、データを蓄積している。2019年12月にデータ回収し、分析を進めた。(1) 2019年5月~12月に至るアジア~欧州間の航海(3往復)における実海域データが計測できた。外気温、湿度、日射量についての変動特性を季節および航海ごとに 整理できた。また2018年度~2019年度に実施した大島商船高等専門学校で実施した陸上実験の結果についても同様に整理を進めた。(2) 陸上実験の結果をもとにコンテナ内外の関係を重回帰分析にて季節ごとにモデル化した。これを季節・海域ごとに組み合わせ、実船実験にて計測された3往 復の航海についてコンテナ内(日射の影響を直接的に受けるコンテナ)の温湿度、露点温度、汗濡れの状況を推定した。 (3)計測したパラメーター間の相関分析を行い、各パラメータ間の関係を明らかとした。この結果、コンテナ内の状態は単独のパラメータではなく、気温、水蒸 気圧、日射量の3変数からなる重回帰推定が最も高精度になることを明らかとした。 (4)この結果、季節および往航・復航による違いは見られるが、一航海にて30~50%の期間にて汗ぬれが生じうる結果となり、特に温度変化が著しく発生するスエ ズ運河~地中海を境界とした欧州前後で結露現象が顕著となりうるものと考えている。
著者
内藤 林 谷澤 克治 箕浦 宗彦 高木 健 木原 一 野澤 和男
出版者
大阪大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2001

強非線形の流体現象の数値計算できる可能性があると判断した粒子法について3年間の研究で以下の成果を得ることができた。1.粒子法の有効性を計算と実験値を比較することで示した。すなわち、粒子法が、衝撃的な短時間に生起する強非線形現象、例えばスラミング、デッキウエットネスなどの現象をよく表現できることを我々自身の実験と計算で確認した。2.粒子法は、その計算領域が大きくなるとそれに従って計算時間はうなぎ昇りに長くなる短所を持つ。このことを解決するために、計算領域の境界から波の反射を無くすため、そこに完全波吸収システムを設置する手法を示し、その有効性を確認した。この波吸収システムは研究代表者が他の研究で開発したシステムであり、それを粒子法に合うように改良し、成功を収めた。このシステムを設置した境界における波エネルギー吸収量を計算した結果、ほほ100%の波吸収を実現でき、境界からの反射をなくすことができた。3.波動場の計算領域を狭くするために、水底をどこに設定するかも、計算時間に直接的に響くとともに波が伝播するうちに減衰する計算上の現象を解決する上からも重要な問題である。そこで、有限水深の水底を波動運動させる手法を導入した。水面上の撹乱から計算水底境界の撹乱を推定し、それに基づいて水底を強制的に動かすことで波の減衰を大幅に減ずることができ、水深に関して計算領域を画期的に減ずる事を可能にした。4.3次元現象の解明のために、粒子法計算コードを3次元問題への拡張を図るためには、計算時間の短縮化技術が必要である。その目的のために、並列化計算手法を完成して大幅な時間短縮技術を完成した。5.自由表面上で波動場中で前進速度をもった船舶に起きる3次元強非線形現象の計算プログラムを作り、数例の計算例を示すことができた。6.前進速度を有する二次元船舶の運動計算を行い、従来計算が不可能であったポーポイジングなどの現象を計算上で得ることができるようになった。7.工学に必要な力の計算において、考えられない、実験値にもない高周波数の変動が計算値に現れていた。この現象を補助方程式を使うことによって除去できる計算法を完成させた。このことによって工学で最も大切である、物体に働く力の計算精度向上に大きな前進を示した。8.船舶海洋工学分野で難しい強非線形問題に、この粒子法が極めて強力な計算手法であることを、他の各種の具体的な問題を通じて明示した。9.この手法を広く国内外に周知するために国内外の論文雑誌に投稿するとともに、国内外の各種会議に積極的に出席し衆知してきた。多くの国外研究者からの問い合わせを受け討論を深めることができた。