- 著者
-
篠木 幹子
- 出版者
- The Japan Sociological Society
- 雑誌
- 社会学評論 (ISSN:00215414)
- 巻号頁・発行日
- vol.53, no.1, pp.85-100, 2002-06-30 (Released:2009-10-19)
- 参考文献数
- 22
- 被引用文献数
-
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環境配慮行動の実行に前向きであるにもかかわらず, 環境配慮行動に取り組んでいない人々が現実には少なからず存在する.本稿では, リサイクル行動の中でも, ビン・缶のリサイクルと牛乳パックのリサイクルに焦点をあて, 態度と行動の間に矛盾を抱える個人のリサイクル不実行のメカニズムを検討する.ここでは, Diekmann and Preisendöfer (1998) によって提唱された3つの正当化の戦略 (注意変更戦略, 高コスト戦略, 主観的合理性戦略) を修正し, 新たに「行動貶化戦略」を加えて, 正当化に関する修正モデルが一般的な合理的選択理論のモデルの観点から捉え直せることを示した.次に, 各戦略に関する予測を導出し, 仙台市において実施した調査データを使用して分析を行い, 予測を検証した.その結果, 態度と行動の間に矛盾のある人の中で, 行動貶化戦略をとる人はほとんどいないことが明らかになった.また, 注意変更戦略に関しては, 正当化が行われる可能性を推測できるが, 明確な傾向は得られなかった.これに対して, コスト戦略, 主観的合理性戦略は, リサイクルの種類にかかわらず正当化が行われる傾向がみられた.