著者
中村 浩己 畑 隆登 津島 義正 松本 三明 濱中 荘平 吉鷹 秀範 近澤 元太 篠浦 先 大谷 悟
出版者
The Japanese Society for Cardiovascular Surgery
雑誌
日本心臓血管外科学会雑誌 (ISSN:02851474)
巻号頁・発行日
vol.29, no.4, pp.268-271, 2000

悪性高熱 (MH) の high risk group で, さらに術中にアンチトロンビンIII (AT III) 欠乏症を早期に疑い回避しえた準緊急冠動脈バイパス術 (CABG) の1例を経験した. 症例は67歳, 男性. 既往歴として頻回におきるこむらがえりあり. 紹介医通院時より, 筋痙攣に対してダントロレン50mg/day を経口投与されておりCKも高値を示していた. 不安定狭心症にて当院に紹介され, CABG (4枝) を施行した. 手術にさいし, ダントロレン25mg内服および麻酔導入前に同160mgを静脈内投与した. 術中, 内胸動脈採取のさい, ヘパリン1ml投与後のACT延長が14秒と通常例 (約60秒) より著明に短縮していたため, AT III欠乏症を疑い, AT III製剤を1,500単位投与した. 術中・術後経過ともに良好であった. MH, AT III欠乏症ともに希ではあるが, ひとたび発症すると重篤な合併症となる疾患であるため, 予測・予防および早期発見・早期治療開始が重要である.
著者
三好 和也 松井 武志 雁木 淳一 篠浦 先 折田 薫三
出版者
一般社団法人 日本消化器外科学会
雑誌
日本消化器外科学会雑誌 (ISSN:03869768)
巻号頁・発行日
vol.29, no.7, pp.1716-1720, 1996 (Released:2011-08-23)
参考文献数
18

1992年から1994年末までの3年間に, 20年以上の長期にわたり抗精神病薬の内服治療を受けてきた8例の精神分裂病患者について消化器外科手術を経験した.手術の対象となった疾患は胆石症2例, 急性胆嚢炎2例, 虫垂炎の穿孔による汎発性腹膜炎2例, 肝内結石症と横行結腸癌が各1例であった. 術後の合併症は胆管空腸吻合の縫合不全と麻痺性イレウスを各1例に認めたのみで, 突然死例はなかった. 横行結腸癌で閉塞性イレウスをきたした1例を除いて, 抗精神病薬は手術の前日まで減量せずに継続した.手術の翌日から抗精神病薬の就眠前の非経口投与を開始し, 食餌開始にあわせて術前の経口剤を再開した. 4例に精神症状が見られたが, いずれも軽症で外科的管理上問題にならなかった. 精神分裂病患者の安全な周術期管理のためには精神科医の協力による精神的ケアが重要であった.
著者
松川 啓義 八木 孝仁 貞森 裕 松田 浩明 篠浦 先 楳田 祐三 成島 道樹 岩本 高行 佐藤 太祐 田中 紀章
出版者
一般社団法人 日本消化器外科学会
雑誌
日本消化器外科学会雑誌 (ISSN:03869768)
巻号頁・発行日
vol.40, no.12, pp.1915-1920, 2007 (Released:2011-06-08)
参考文献数
18
被引用文献数
3 4

内臓逆位症は合併奇形が多く, かつ内臓逆位による診断治療の困難性が診療上問題である.完全内臓逆位症, Kartagener症候群に合併した肝腫瘍に肝拡大後区域切除を安全に施行した1例を経験した. 症例はKartagener症候群 (気管支拡張症, 副鼻腔炎, 右胸心) の55歳の女性で, 腹部臓器も逆位の完全内臓逆位症で, 肝後区域中心に13cm径の血管性腫瘍を認めた. 内臓奇形・変異としては肝部下大静脈欠損・奇静脈連結・上大静脈還流, 肝静脈右房還流, 右腎静脈半奇静脈還流, 多脾, 膵体尾部欠損, 腸回転異常がみられた. 術中所見では肝部下大静脈欠損により解剖学的肝右葉は後腹膜に固定されず, 解剖学的右三角間膜から後腹膜無漿膜野はほとんどみられなかった. 完全内臓逆位症に対する肝切除も, 左右鏡像関係, 腹部臓器・脈管の変異を念頭におき, 解剖学的構造を同定認識し手術操作を行うことで通常の肝切除例と同等な切除手術が可能であった.