著者
山子 泰加 道堯 浩二郎 白石 明子 相引 利彦 奥平 知成 川村 智恵 中原 弘雅 須賀 義文 畔元 信明 平岡 淳 宮田 英樹 宮本 安尚 二宮 朋之 田中 光一 安中 哲也 楳田 祐三 八木 孝仁
出版者
一般社団法人 日本肝臓学会
雑誌
肝臓 (ISSN:04514203)
巻号頁・発行日
vol.55, no.12, pp.749-755, 2014-12-20 (Released:2015-01-07)
参考文献数
15

症例は20歳男性.全身倦怠感を主訴に近医を受診し,発熱,黄疸がみられたため精査加療のために当科へ紹介された.受診するまでの約3年間ひきこもり状態であり,家族と同居していたが,家人と接することが少なかったため家人は病状に気づかなかった.各種検査からWilson病による肝不全と診断し,保存的加療を行ったが軽快せず,生体肝移植を行った.移植後は経過良好で,現在外来通院中である.Wilson病は多彩な精神,神経症状を示しうる疾患であり,ひきこもりにて肝不全の発見が遅れたWilson病の1例を経験したため報告する.
著者
松川 啓義 八木 孝仁 貞森 裕 松田 浩明 篠浦 先 楳田 祐三 成島 道樹 岩本 高行 佐藤 太祐 田中 紀章
出版者
一般社団法人 日本消化器外科学会
雑誌
日本消化器外科学会雑誌 (ISSN:03869768)
巻号頁・発行日
vol.40, no.12, pp.1915-1920, 2007 (Released:2011-06-08)
参考文献数
18
被引用文献数
3 5

内臓逆位症は合併奇形が多く, かつ内臓逆位による診断治療の困難性が診療上問題である.完全内臓逆位症, Kartagener症候群に合併した肝腫瘍に肝拡大後区域切除を安全に施行した1例を経験した. 症例はKartagener症候群 (気管支拡張症, 副鼻腔炎, 右胸心) の55歳の女性で, 腹部臓器も逆位の完全内臓逆位症で, 肝後区域中心に13cm径の血管性腫瘍を認めた. 内臓奇形・変異としては肝部下大静脈欠損・奇静脈連結・上大静脈還流, 肝静脈右房還流, 右腎静脈半奇静脈還流, 多脾, 膵体尾部欠損, 腸回転異常がみられた. 術中所見では肝部下大静脈欠損により解剖学的肝右葉は後腹膜に固定されず, 解剖学的右三角間膜から後腹膜無漿膜野はほとんどみられなかった. 完全内臓逆位症に対する肝切除も, 左右鏡像関係, 腹部臓器・脈管の変異を念頭におき, 解剖学的構造を同定認識し手術操作を行うことで通常の肝切除例と同等な切除手術が可能であった.