著者
米盛 重保
出版者
琉球大学
雑誌
琉球大学農学部学術報告 (ISSN:03704246)
巻号頁・発行日
vol.30, pp.633-640, 1983-11-19

沖縄における春作マスクメロンの品種比較試験を無加温条件下のガラス室で1982年3月∿6月に実施した。供試品種は17品種で, 草丈, 葉数, 雌花着生, 果実品質等について調査した。各品種とも順調な生育がみられた無加温下での短期栽培が確認された。特に定植後20日∿30日における草丈伸長や出葉数は旺盛で1日当りの草丈伸長は7.8cm, 出葉数は1枚であった。果実の良否に大きな影響をおよぼす雌花の着生状況は比較的良好で9節∿15節の雌花着生率は78.7%, 各節位における雌花着生は5∿6節から始まり10節以上の節位では90%以上の雌花着生率を示した。果実の着果節位はほとんどの品種が11節目に集中しており理想節位に着果した。果実の品質は品種間差が大きく, アールス東海S-78とシーザーを除き果重が1,300∿1,600gで果形は偏平形を呈していた。糖度, ネット形成, 食味ではアールス春系の3品種は栽培管理の困難さがあって順調な結果が出ずネットの不形成や糖度不足が多かった。果肉色, 果皮色は品種特有で, 果肉色は白色, 果皮色は緑色を基色とした濃淡差がみられた。白裕は果肉色果皮色とも乳黄色で従来見られなかった乳黄色ネットメロンとして特異な品種である。病害虫による被害はツルガレ病以外の病虫害はほとんど問題なかった。ツルガレ病は全品種に被害を及ぼし枯死株が続出した。沖縄における春作マスクメロン栽培の可否はツルガレ病対策が重要な課題と思われる。本試験の実施にあたり供試品種の種子を提供下さった前記各種苗会社に深く感謝の意を表します。また本試験は実用規模での栽培であったため多大な労力を必要とした。その面で協力をいただいた農学科学生の糸洲朝光, 喜納兼二, 島袋つかさ, 仲田ひろみ, 林真人の諸君に深く感謝する。また本報告の校閲をしていただいた農場長の大屋一弘教授に深く感謝の意を表します。
著者
米盛 重保 Yonemori Shigeyasu 琉球大学農学部
出版者
沖縄農業研究会
雑誌
沖縄農業 (ISSN:13441477)
巻号頁・発行日
vol.27, no.1, pp.7-11, 1992-07

高温環境下における養液栽培の技術確立を図る目的で、1990年度に6種類、1991年度に4種類の固形培地を用いてマスクメロンの栽培を行い、生育状況および果実の収量・品質を調査した。1、1990年度はロックウール、ブラックライト、イソライト、バーミキュライト、ピートモスそしてパミスサンドを用いて栽培した結果、初期生育、果実収量・品質に及ぼす培地の影響が顕著に現れ、パミスサンドが最も優れ、つづいてロックウール、ブラックライトとイソライトは果実の収穫は出来たものの商品価値は著しく低かった。又、バーミキュライトとピートモスは初期生育から生育障害が見られ途中で枯死した。2、1991年度は、ロックウール、パミスサンド、パーライトおよびゼオライトの4固形培地を用いて栽培した結果、前年度同様、初期生育、果実収量・品質ともパミスサンドが最もよく、つづいてロックウールが良かった。パーライトとゼオライトは水分の乾湿差が大きいことによると思われる茎葉のしおれが発生し生育、果実収量ともパミスサンド、ロックウールより劣った。3、2カ年間の栽培結果と培地の取扱いの面からパミスサンドは沖縄における養液栽培の培地として優れた培地と判断された。
著者
張 琳 米盛 重保 上里 健次
出版者
琉球大学
雑誌
琉球大学農学部学術報告 (ISSN:03704246)
巻号頁・発行日
vol.52, pp.41-48, 2005-12-01

本調査研究では、ヒカンザクラの開花性における同一地域内の個体間差、地域間差および花芽の発育と花部器官の個体間差について比較検討した。調査は奥国道沿い、八重岳の高位、中位、低位所、嘉数公園、琉球大学内、与儀公園、八重瀬公園で実施した。得られた結果の概要は次のとおりである。1.同一時点の各調査地域における個体間差は幅広く見られた。また各調査樹の開花開始、満開、開花終了日および開花期間の長さにおいてもかなりの個体間差が確認された。2.沖縄におけるヒカンザクラの開花は、地域間では北部から南部へ移行することが認められ、また山地においては標高の高い所で早く咲くことが明確であった。これらのことは、北部および高所では開花に重要な低温遭遇の条件をより早い時期に満たされることを意味し、亜熱帯性サクラ特有のやや高い温度に反応する習性が早期開花の主要因と考えられる。3.花部器官の形態的な特徴にも標準とは異なる6枚の花弁、2本の雌ずいなどの変異が見られ、ヒカンザクラの花部器官もより多様であることが確認された。4.花色濃度の判別に対して、Adobe PhotoShopのRGB三原色分析をもとに、花色濃度指数を規定して花色の濃度差を比較した。この花色濃度指数は実際の花色の濃淡に即しており、利便性が高いと判断された。5.ヒカンザクラは早期開花を示すにもかかわらず、花弁形成、雄ずい形成、雌ずい形成時期は遅く、これには花芽の後半の発育が短期間になされることが考えられる。6.調査対象としたものはすべて実生由来ものであり、遺伝的には雑種であることから、開花性、花部器官における個体間差が生ずるのは当然のことで、その発現に当たってはむしろ環境要因よりも植物側のもつ遺伝性がより重要であると考えられる。
著者
米盛 重保
出版者
琉球大学農学部
雑誌
琉球大学農学部学術報告 (ISSN:03704246)
巻号頁・発行日
no.31, pp.p201-205, 1984-12
被引用文献数
1

(1)pHが8.15∿9.2の強アルカリ性の沖縄の海砂を培地に使用して過去4年に亘りトマトの砂栽培を試みた。(2)肥料はOKF-1の500倍液(PH6∿7,EC2.1)を5l/m^2で, 週2∿3回施用した。(3)栽培ベットは第1図の通り舟底型の隔離ベットで底部に砂利を敷きその上に15∿20cm厚の砂を敷き詰め栽培床とした。(4)排水が良くなり湿害は皆無でアルカリ障害や微量要素欠乏症の発生が全く認められなかった。(5)茎・葉の生育や果実の着果肥大は順調に行なわれ各果房の平均着果数は4.6個, 平均果重は237gで尻ぐされ病等の発生は全く認められなかった。(6)強アルカリ性の海砂でのトマト栽培が可能となり, 土耕に比較して湿害, 塩類集積, 連作障害が解消され, また養液栽培に比較して培養液調節, 培養液温度調節, 酸素補給が不要である。したがって本栽培法は土耕栽培法および養液栽培法の問題点を補う新しい栽培法と言えよう。(7)本栽培は土壌が不要であるため劣悪土壌地帯や市街地のベランダや屋上での栽培, 施設園芸の新しい培地として有望である。
著者
上里 健次 安谷屋 信一 米盛 重保 Uesato Kenji Adaniya Shinichi YoneMori Sigeyasu
出版者
琉球大学
雑誌
琉球大学農学部学術報告 (ISSN:03704246)
巻号頁・発行日
vol.49, pp.15-23, 2002-12-01

石垣を含めた沖縄における2000年開花のヒカンザクラについて,開花と出葉の早晩性を地域間差,個体間差を含めて比較検討した。調査地域は石垣市,八重瀬公園与儀公園,琉球大府附属農場,敷数公園,八重岳の高,中,低位所,国頭村奥で開花の安定したそれぞれ50本前後を対象とした。3月2日に石垣市,3日に他の地域に出かけ開花度,出葉度を10レベルに分けて調査した。得られた調査結果の概要は次ぎの通りである。1.地域間では石垣では最も遅く,与儀貢献もかなり遅く,八重岳の3区と八重瀬公園は最も早く,他の3区は同様で,4グループ間に有意性のある地域差が見られた。2.八重岳における標高差については高位所と低位所で早く,中位所は遅れる傾向があり,開花に対する350m程度の標高差は明確ではなかった。3.各調査区区における個体間差はかなりの幅で見られ,これは実生系による栽植で異なった遺伝性を持つことによる当然の結果といえる。4.12月,1月の名護,那覇,石垣における日最低気温の推移にかなりの差が見られ,石垣における開花の遅れは冬季の温度の低下が遅れることによるが,与儀公園の遅れも同様に,市民生活に起因する要素を加わった温度上昇が主要因と間がえられる。