- 著者
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張 琳
米盛 重保
上里 健次
- 出版者
- 琉球大学
- 雑誌
- 琉球大学農学部学術報告 (ISSN:03704246)
- 巻号頁・発行日
- vol.52, pp.41-48, 2005-12-01
本調査研究では、ヒカンザクラの開花性における同一地域内の個体間差、地域間差および花芽の発育と花部器官の個体間差について比較検討した。調査は奥国道沿い、八重岳の高位、中位、低位所、嘉数公園、琉球大学内、与儀公園、八重瀬公園で実施した。得られた結果の概要は次のとおりである。1.同一時点の各調査地域における個体間差は幅広く見られた。また各調査樹の開花開始、満開、開花終了日および開花期間の長さにおいてもかなりの個体間差が確認された。2.沖縄におけるヒカンザクラの開花は、地域間では北部から南部へ移行することが認められ、また山地においては標高の高い所で早く咲くことが明確であった。これらのことは、北部および高所では開花に重要な低温遭遇の条件をより早い時期に満たされることを意味し、亜熱帯性サクラ特有のやや高い温度に反応する習性が早期開花の主要因と考えられる。3.花部器官の形態的な特徴にも標準とは異なる6枚の花弁、2本の雌ずいなどの変異が見られ、ヒカンザクラの花部器官もより多様であることが確認された。4.花色濃度の判別に対して、Adobe PhotoShopのRGB三原色分析をもとに、花色濃度指数を規定して花色の濃度差を比較した。この花色濃度指数は実際の花色の濃淡に即しており、利便性が高いと判断された。5.ヒカンザクラは早期開花を示すにもかかわらず、花弁形成、雄ずい形成、雌ずい形成時期は遅く、これには花芽の後半の発育が短期間になされることが考えられる。6.調査対象としたものはすべて実生由来ものであり、遺伝的には雑種であることから、開花性、花部器官における個体間差が生ずるのは当然のことで、その発現に当たってはむしろ環境要因よりも植物側のもつ遺伝性がより重要であると考えられる。