著者
安谷屋 信一
出版者
園芸学会
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.60, no.2, pp.361-367, 1991 (Released:2008-05-15)
参考文献数
11
被引用文献数
3

ミョウガ (2n=55) は結実のまれな栄養繁殖性作物である. 本研究では, 本種の交雑育種を促進する目的で,結実に及ぼす受粉時季および相対湿度の影響を16時間日長条件下で検討した.1987年春季には, 交配した190小花のうち, 4子房に5粒の種子を得たのみであった. 一方, 1988年冬季の交配では, 184小花に受粉し, 26子房から84粒の種子が得られた. さらに1989年の春季には自然湿度区およひ加湿区を設け, 結実に及ぼす相対湿度の影響を調査した. 自然湿度区においては, 45小花に受粉したが,種子は得られなかった. しかし, 加湿区においては,121小花に受粉し, 23子房から73粒の種子が得られた.1988年および1989年にそれぞれ得た73および69粒の種子から摘出した胚を, ショ糖30g/1iterを含むMS培地上で培養し, 106の植物体を育成した. これらの自殖1代植物のうち, 67個体の染色体数は2n=46から2n=60の範囲に分布した. さらにこれらの自殖1代植物には著しい形態的変異が観察された.
著者
諸見里 善一 澤岻 哲也 田場 聡 安谷屋 信一 本村 恵二
出版者
Japanese Society for Tropical Agriculture
雑誌
熱帯農業 (ISSN:00215260)
巻号頁・発行日
vol.47, no.1, pp.34-41, 2003-03-01 (Released:2010-03-19)
参考文献数
32

各葉齢のマンゴー葉から希釈平板法により微生物を分離し, 生育過程における葉面微生物相の変遷を調べた.また, マンゴーハウス内気中の微生物相も調査し, 葉圏と気中の微生物相の比較・検討を行った.その結果, 気中および各齢葉面の細菌相では, 色素生成細菌が多く, 特に黄色陰性球菌 (Y, N, C) と白色陰性球菌 (W, N, C) の優占が認められた.グラム陰性菌と陽性菌の割合に着目すると, 気中では両菌の割合がほぼ同じであったが, 生葉上では全体的にグラム陰性菌がまた落葉上では陽性菌が優占した.一方糸状菌相では, 気中から多種の糸状菌が分離され, 複雑な菌相を示したのに対し葉面では菌相が単純化した.気中と各齢葉面のすべてで認められた菌はCladospoyium属とPenicillium属の菌のみであった.これらの葉面から分離した細菌および糸状菌であるマンゴー炭疽病菌をPDA培地上で対峙させ拮抗性を検討した.その結果, 細菌には強い拮抗性を示すものは少なかった.それに対し, 糸状菌ではPenicillium属菌は高い拮抗性を示すものが多く, とくに, P.citrinumとP.expansumの2種は最も強い拮抗性を有した.これらの菌の培養ろ液も炭疽病菌に対した高い抗菌性を有することから, 拮抗機作は抗菌物質によるものと考えられる.
著者
上里 健次 安谷屋 信一 米盛 重保 Uesato Kenji Adaniya Shinichi YoneMori Sigeyasu
出版者
琉球大学
雑誌
琉球大学農学部学術報告 (ISSN:03704246)
巻号頁・発行日
vol.49, pp.15-23, 2002-12-01

石垣を含めた沖縄における2000年開花のヒカンザクラについて,開花と出葉の早晩性を地域間差,個体間差を含めて比較検討した。調査地域は石垣市,八重瀬公園与儀公園,琉球大府附属農場,敷数公園,八重岳の高,中,低位所,国頭村奥で開花の安定したそれぞれ50本前後を対象とした。3月2日に石垣市,3日に他の地域に出かけ開花度,出葉度を10レベルに分けて調査した。得られた調査結果の概要は次ぎの通りである。1.地域間では石垣では最も遅く,与儀貢献もかなり遅く,八重岳の3区と八重瀬公園は最も早く,他の3区は同様で,4グループ間に有意性のある地域差が見られた。2.八重岳における標高差については高位所と低位所で早く,中位所は遅れる傾向があり,開花に対する350m程度の標高差は明確ではなかった。3.各調査区区における個体間差はかなりの幅で見られ,これは実生系による栽植で異なった遺伝性を持つことによる当然の結果といえる。4.12月,1月の名護,那覇,石垣における日最低気温の推移にかなりの差が見られ,石垣における開花の遅れは冬季の温度の低下が遅れることによるが,与儀公園の遅れも同様に,市民生活に起因する要素を加わった温度上昇が主要因と間がえられる。