著者
紀岡 秀征 古山 勝彦 三宅 康幸 酒井 潤一 長尾 敬介 池元 壮彦 野入 久幸 小田 貴代美
出版者
The Association for the Geological Collaboration in Japan
雑誌
地球科学 (ISSN:03666611)
巻号頁・発行日
vol.52, no.6, pp.464-474, 1998-11-25 (Released:2017-07-11)
被引用文献数
2

御岳火山中部更新統樽沢累層の溶岩47試料のK-Ar年代を測定した結果,古期御岳火山の火山活動は0.78±0.14 Ma〜0.39±0.006 Maの間である.年代データのそれぞれは,野外で観察された溶岩やテフラの層序関係と調和している.火山活動は,ステージ1(0.78-0.59 Ma)と2(0.53-0.39 Ma)に分けられ,ステージ1はさらに1a(0.78-0.71 Ma),1b(0.71-0.66 Ma)及び1c(0.66-0.59 Ma)に細分される.サブステージ1a,1bには主として玄武岩や安山岩の活動があり,サブステージ1c以降には安山岩やデイサイトが主体となっている.サブステージ1a,1bにはサブステージ1c以降に比べて非常に多くの泥流堆積物が含まれる.この岩相変化は,おそらく火山体の成長と関連している.すなわち,火山成長の初期には,流出した溶岩が各所で流水を堰き止め,できた湖の水とマグマとの相互作用の結果,大量の火山砕屑物が生産された.後には地形の低所は埋め立てられて,さらに粘性の高い溶岩が傾斜の大きな山体を作った結果,火山砕屑物質の生産は終わり,たとえあったにしても急勾配の調査範囲内には堆積しにくくなった.火山体がほぼ円錐状に成長したため,上述した岩相変化のタイミングは円錐火山体の全方向でほぼ一敦する.溶岩に挟在される以下の指標テフラの年代も溶岩の年代から決定できた.それらは,寒原Pm.I:0.70-0.65 Ma,寒原Pm.II:0.67-0.65 Ma,白布沢Pm.:0.61-0.58 Maである.