著者
宇宿 行久 細谷 昌之 Yukihisa USUKU Masayuki HOSOYA
雑誌
南極資料 (ISSN:00857289)
巻号頁・発行日
vol.24, pp.1897-1909, 1965-03

本南極観測用雪上車は,南極内陸調査旅行に使用する目的で設計されたものであり,短期間に試作を完了する必要があるため,現在陸上自衛隊に装備されている61式大型雪上車を母体とし,これに必要な改修を加えたものである.全備重量約8.5t,接地圧0.20kg/cm^2,乗員数3名,車体はキャブオーバー型で,車室内に暖房装置,換気装置,寝台,炊事用具等をそなえ,また,観測に必要な機器を塔載できるようになっている.エンジンは標準状態で140PSで,3台のそり約8tをけん引する場合の常用速度は約5km/hである.設計にあたって最も配慮したものは,-60℃に及ぶ低温下,低地から4,000mに至る高地で使用可能なこと,走行距離約6,000km,旅行期間5ヵ月の連続使用に耐えうること等の苛酷な条件についての対策である.このため,機関過給機,車両使用材料等の選定,カタピラおよび懸架バネ等の耐久性,車体等の保温,暖房その他については,事情の許すかぎり試験研究を行ない,これらの資料および前回の観測時の実績等を基礎として,基本設計を行なった.なお,本雪上車は1965年1月末試作を終え,北海道において試験を行なう予定である.
著者
村尾 麟一 竹内 貞男 稲葉 稔 細谷 昌之
出版者
国立極地研究所
雑誌
南極資料 (ISSN:00857289)
巻号頁・発行日
vol.38, no.1, pp.72-111, 1994-03

本報告では, 実験用南極ホーバークラフトの昭和基地における8年間の運用と経験が記述されている。南極における輸送・交通手段としてのホーバークラフトの有用性を調査し, 実用ホーバークラフト建造の技術データを得るために試作された2.8t実験用ホーバークラフトが1981年1月に昭和基地近くに揚陸され, 1990年2月まで性能, 操縦性, 環境適応性, 駐機・保管・整備に関する評価試験が行われた。その結果, 気象・地形に関する南極特有の環境下で運行・駐機・保管・整備上の艇の能力と限界が評価された。ホーバークラフト運用信頼性に影響する主要な気象環境因子はエンジンに対する雪の吸い込みであって, エアフィルター・ラジエータに付着し出力低下と温度上昇をもたらす。地形環境的には基地と海氷域の間に発生するタイドクラックの乗り越しに最も人手を要した。操縦試験の結果艇は摩擦の小さい氷上走行時に操舵応答に敏感で習熟に時間を要することが判明したので操縦特性の解明のためシミュレーションモデルを開発した。これらの経験に基づいて昭和基地付近の夏期の生物観測・氷状偵察・沿岸調査等観測支援活動に対する運用に適当なホーバークラフト機体・保管整備の仕様が提案されている。
著者
細谷 昌之 喜納 淳 ホソヤ マサユキ キノウ アツシ Masayuki HOSOYA Atsushi KINOU
雑誌
南極資料
巻号頁・発行日
vol.37, pp.65-75, 1970-03

From September 1968 to February 1969, the 9th JARE (Japanese Antarctic Research Expedition) traveled to the South Pole with the aid of snow vehicles and sledges. In order to ensure the mobility of the travel, the tractive effort of the snow vehicles on the crust surface of snow in Antarctica and the running resistance of the composed sledges were tested. The results of the tests revealed that the maximum tractive force of one vehicle on crusted surface in Antarctica is 15.4 tons, the static frictional resistance coefficient μ_s is 0.68, and the dynamic frictional resistance coefficient μ_d is 0.51 at 3 km/h vehicle speed. When the snow vehicle towed five composed sledges, or was loaded with 15.4 tons, behavior of the vehicle was considerably hampered, especially in the motions of turning or crossing a drift of snow. Therefore, 15.4 tons may be a critical value of load. Paying attention to this point, the movement of the traverse party became considerably easy.
著者
斉藤 満 関 剛 細谷 昌之
出版者
国立極地研究所
雑誌
南極資料 (ISSN:00857289)
巻号頁・発行日
vol.36, no.3, pp.410-440, 1992-11

この報告は, 南極氷床ドーム深層掘削計画に使用するため, 新たに開発した大型雪上車の基本性能及び総合性能の試験結果について述べたものである。試験した結果, この雪上車は, 設定した性能及びシステムデザインのねらいをおおむね満足しているが, 構造の一部に不具合部分があることも認められた。試験は, 再現性を有し類似車両と性能の比較ができるコンクリート舗装路及び南極の積雪の硬さを模擬して造った転圧雪路で行った。
著者
竹内 貞男 喜納 淳 細谷 昌之 吉田 治郎 石沢 賢二
出版者
国立極地研究所
雑誌
南極資料 (ISSN:00857289)
巻号頁・発行日
vol.36, no.3, pp.p363-375, 1992-11

日本南極地域観測隊は, これまで4種類の雪上車を使って調査活動を続けてきた。それらの雪上車は用途別に内陸氷床上用と沿岸・海氷上調査用の2つに分類できる。内陸用の雪上車はこれまでSM50S型中型雪上車を使用してきたが, 「南極氷床ドーム深層掘削計画」も提言されるなど, 調査区域が年々内陸奥地に広がり, より低温性能のよい大型雪上車の開発が要望されていた。そのため, 国立極地研究所設営専門委員会に雪上車設計作業委員会を設置して, 現有のSM50Sの技術的課題を分析し, この結果を基に新型雪上車の開発を実施した。この雪上車は国内での試験走行の後, 1991年に南極に搬入され, 1992年の冬期には南極氷床で走行し, ほぼ予想された性能を発揮した。
著者
喜納 淳 細谷 昌之 竹内 貞男 金内 賢
出版者
国立極地研究所
雑誌
南極資料 (ISSN:00857289)
巻号頁・発行日
vol.32, no.2, pp.218-237, 1988-07

昭和基地ならびに沿岸地域で使用する小型雪上車を国立極地研究所設営専門委員会小型雪上車設計作業委員会が開発した。この雪上車は, 主として氷上で行動することから, 軽量化を図ることを開発の条件の一つとした。このため, 動力伝達システムには全油圧駆動方式を採用した。この方式は, 日本の南極観測では始めてのことであるので, 低温下での始動試験, 始動に用いるバッテリーの持続試験を行った。全油圧駆動方式に伴う車両の操縦上の問題について試験を行い, 必要な改善策を講じた。また, 車両のピッチングを減少するために, 懸架装置についての試験も行い, 必要な改善を行った。完成した新小型雪上車は第28次観測隊により昭和基地に搬入され使用されている。