著者
村尾 麟一 竹内 貞男 稲葉 稔 細谷 昌之
出版者
国立極地研究所
雑誌
南極資料 (ISSN:00857289)
巻号頁・発行日
vol.38, no.1, pp.72-111, 1994-03

本報告では, 実験用南極ホーバークラフトの昭和基地における8年間の運用と経験が記述されている。南極における輸送・交通手段としてのホーバークラフトの有用性を調査し, 実用ホーバークラフト建造の技術データを得るために試作された2.8t実験用ホーバークラフトが1981年1月に昭和基地近くに揚陸され, 1990年2月まで性能, 操縦性, 環境適応性, 駐機・保管・整備に関する評価試験が行われた。その結果, 気象・地形に関する南極特有の環境下で運行・駐機・保管・整備上の艇の能力と限界が評価された。ホーバークラフト運用信頼性に影響する主要な気象環境因子はエンジンに対する雪の吸い込みであって, エアフィルター・ラジエータに付着し出力低下と温度上昇をもたらす。地形環境的には基地と海氷域の間に発生するタイドクラックの乗り越しに最も人手を要した。操縦試験の結果艇は摩擦の小さい氷上走行時に操舵応答に敏感で習熟に時間を要することが判明したので操縦特性の解明のためシミュレーションモデルを開発した。これらの経験に基づいて昭和基地付近の夏期の生物観測・氷状偵察・沿岸調査等観測支援活動に対する運用に適当なホーバークラフト機体・保管整備の仕様が提案されている。
著者
竹内 貞男
出版者
国立極地研究所
雑誌
南極資料 (ISSN:00857289)
巻号頁・発行日
vol.34, no.3, pp.430-444, 1990-11

第30次南極地域観測隊は, 隊長江尻全機以下54名で編成された。このうち昭和基地の越冬隊は江尻全機越冬隊長以下29名, あすか観測拠点の越冬隊は召田成美越冬副隊長以下8名である。夏隊は, 副隊長竹内貞男以下17名で編成され, 運輸省船舶技術研究所, 日本鋼管(株)からの2名および南極条約に基づく交換科学者として中国から2名, ノルウエーから1名が同行した。1988年11月14日東京港を出港した「しらせ」はオーストラリアのフリマントル港に寄港した後, 12月17日ブライド湾に到着した。あすか観測拠点での越冬用物資およびセールロンダーネ山地での地学, 生物, 雪氷調査用器材約120tを揚陸した後, 越冬隊員8名と夏期調査隊員(交換科学者1名を含め9名)を残し12月26日昭和基地へ向かった。昭和基地には12月29日に到着, 輸送(約820t), 建設作業, 野外調査等を1989年2月23日まで行った。これまでの間に多目的衛星データ受信システムの建設を行い, 2月1日には越冬交代を行った。「しらせ」は第29次観測隊のセールロンダーネ山地における事故の救援に向かい, 救援活動を終えた後, 第30次夏の調査隊員をブライド湾で収容して昭和基地へ戻った。3月4日第29次越冬隊員と第30次夏隊員, 交換科学者を収容した「しらせ」は昭和基地沖を離れ, 海洋観測を実施しながら東航を開始し, オーストラリアのシドニー港に3月21日入港した。観測隊員はここで下船し, 28日空路成田空港に帰着した。
著者
竹内 貞男 喜納 淳 細谷 昌之 吉田 治郎 石沢 賢二
出版者
国立極地研究所
雑誌
南極資料 (ISSN:00857289)
巻号頁・発行日
vol.36, no.3, pp.p363-375, 1992-11

日本南極地域観測隊は, これまで4種類の雪上車を使って調査活動を続けてきた。それらの雪上車は用途別に内陸氷床上用と沿岸・海氷上調査用の2つに分類できる。内陸用の雪上車はこれまでSM50S型中型雪上車を使用してきたが, 「南極氷床ドーム深層掘削計画」も提言されるなど, 調査区域が年々内陸奥地に広がり, より低温性能のよい大型雪上車の開発が要望されていた。そのため, 国立極地研究所設営専門委員会に雪上車設計作業委員会を設置して, 現有のSM50Sの技術的課題を分析し, この結果を基に新型雪上車の開発を実施した。この雪上車は国内での試験走行の後, 1991年に南極に搬入され, 1992年の冬期には南極氷床で走行し, ほぼ予想された性能を発揮した。
著者
喜納 淳 細谷 昌之 竹内 貞男 金内 賢
出版者
国立極地研究所
雑誌
南極資料 (ISSN:00857289)
巻号頁・発行日
vol.32, no.2, pp.218-237, 1988-07

昭和基地ならびに沿岸地域で使用する小型雪上車を国立極地研究所設営専門委員会小型雪上車設計作業委員会が開発した。この雪上車は, 主として氷上で行動することから, 軽量化を図ることを開発の条件の一つとした。このため, 動力伝達システムには全油圧駆動方式を採用した。この方式は, 日本の南極観測では始めてのことであるので, 低温下での始動試験, 始動に用いるバッテリーの持続試験を行った。全油圧駆動方式に伴う車両の操縦上の問題について試験を行い, 必要な改善策を講じた。また, 車両のピッチングを減少するために, 懸架装置についての試験も行い, 必要な改善を行った。完成した新小型雪上車は第28次観測隊により昭和基地に搬入され使用されている。